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第20話

アーロンは、非常に焦っていた。早く、ライナードの部屋につきたいと思っていた。


アーロンは、もちろんあの魔法使いに早く会いたいと思っていたわけではない。だが、今のこの状況を早く打破したかったのだ。




(どうして、手を繋ごうなんて・・言ったかな、俺。)




ちらりとフローラの顔を覗うとそう不機嫌な顔はしてはいないので、ほっとした。繋いだ手から己の心臓の早鐘の鼓動を聞かれるような気がして、アーロンは気が気ではなかった。




(男の友達と手を繋いで心臓が早鐘って・・・あかんよなぁ。でも、フローラって・・・なんか、やっぱ女なんだよなぁ。手が柔らかいし、白いし。女として意識してしまうよな。これって、正常だよな・・いやぁ、正常かな・・俺??)




「・・ロン」


「ん?」




「アーロン!!」


「は、はい!!」




意識を飛ばしていたアーロンにフローラが不審げな顔で見上げてくる。




「ライナードの部屋についたけど?」


「あ、ほんとだ!!」




アーロンは動揺を隠しつつライナードの部屋をノックしようとしてその事に気が付いた。いまだに、フローラの手を握っていたことに。アーロンは慌てて彼女の手を放す。




「おう、ごめん。」


「ん、何で・・謝んのよ。」


「う、いや。」




フローラが、妙にしおらしく頬まで淡いピンクに染めているのに気が付いたアーロンは動揺して顔を半ばひきつらせたまま魔法使いの部屋の扉をノックしようとした。




しかし、ノックをする前に扉は開かれ、ぼさぼさ頭に丸眼鏡をかけた男がひょこっと顔を覗かせた。相変わらず、前髪が長くてその表情を覗うことはできない。口元だけ満面の笑みだが、相手の性格の歪みを考えると油断できないなと、訪問者たちは同時に同じことを考えていた。




「やぁ、フローラ君に、アーロン君もよく来たね。フローラ、昨夜は失礼した。魔法の説明をするつもりが不測の事態であわただしく帰ってしまって、二度手間を取らせてしまった。」




「それはかまわないんですけれど・・・お兄様、魔法の暴発で壁が吹き飛んだと聞きましたが、どこにも穴は開いていませんね?」




ライナード王子に部屋の中に迎えられたが、フローラの言う通り部屋の壁に穴は開いていなかった。かなり巨大な穴が開いたと噂に聞いていただけに、少しがっかりしたフローラの声色にアーロンは思わず笑いそうになった。




「いやぁ、壁の修復くらいは魔法でパパッとね。それよりも、フローラ。」


「え?」


「その薬指の指輪・・・もしかして、母上の形見の品では?」




ライナードに指摘されて、フローラはふわりと笑って指輪をかざしてみせた。




「そうなの、カラン王子から母の形見だと頂いたの。母の遺言で、フローラがお嫁に行くときに手渡すように言われていたそうよ、カランお兄様は。」




「ああそうだったね。そうか・・・やはり、その指輪は兄さんが管理していたのか。あれほど探しても見つからなかったのに、いったいどこに隠していたのかねぇ。それにしても・・フローラ。」


「ん?」




「その指輪は古代魔法王国が最高の技術で作り上げた傑作なんだよね。それって、君が持つよりも私が持つ方がより有意義だと思わないかい?」




表情は覗えないが、ライナードはにこやかにほほ笑んでいた。だから、フローラもにこやかにほほ笑んで返事した。




「そうかもしれない。でも、私にはフローラ姫の母親の記憶はないけど・・・この指輪は母がフローラに託したものだから大切にしたいの。それに、これは王家に連なる女にしか扱えない指輪だと聞いているけど。」




不意に、ライナードがフローラたちに背中を向けて部屋の奥になる棚に向かった。そして、無言のまま棚の中をあさり始める。




「ライナード兄様?」




兄の不審な行動を怪訝に思いながらも、フローラはライナードの背後まで近づき声を掛けた。


それは突然だった。




魔法使いは振り返ると無表情のまま、ナタを妹に振り下ろしていた。

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