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第13話

「まあ、また千人の奴隷を連れてきて殺してゲートを開けば、すでに繋がりのできた異世界に今いる本物のアーロン君とユウキ君の魂を入れ替えることは可能だと思うよ。でも、フローラの中の君は元の世界には戻れないと思うよ。というか、戻っても入る体がなくて魂が異次元を彷徨うだけじゃないかな?」




つまり、私はこのまま異世界で生きていくしかないということだ。それでも、結城には元の世界に帰れる方法がある。たとえ、それが多くの犠牲を払う儀式だとしても帰る方法があるのだ。彼には。




「結城・・・あのさ。」


「いや、俺はアーロンだ。」


「え、何を?」




「俺は、アーロンとしてこの異世界で生きていく。だって、そうだろ?こんな面白そうな世界に来て中二病の俺が我慢できるかよ。しかも、俺ってかなり無双な騎士だしさあ。楽しそうじゃん。お前も、いるしさ。」




アーロンが楽しそうに笑う。そんなはずはないのに。元の世界に帰りたいはずなのに。帰れるのに。


私は、アーロンの肩に頭を押し付けながら呟いていた。




「じゃあ、私が・・・フローラが死んだら、その時には還りなよ。元の世界に。『反魂の術』だって偽ってでも、儀式をおこなって還ってよ・・・家族の元に。」


「・・・高橋。」




フローラは病弱だ。長く生きられるとは思えない。私が死んだあと、結城はひとりこの世界で生きていくのか?それはありえない。選択肢の一つとして元の世界に帰る道を用意しておくべきだ。




「約束して。」


「千人の人間の命を犠牲にして・・・元の世界に帰れって言うのか、お前は。」


「そうだよ。」


「残酷だな、お前は。」


「そうだよ、フローラは、残酷な人間なんだよ。だって・・・千人の人間の命と引き換えに蘇ったんだから。『反魂の術』でね。」


「おい。」


「『異世界転移』の古代魔法は二人だけの秘密。ううん、そうじゃない・・・三人だけの秘密。そうだよね、ライナード兄様。そして、兄様も約束して。私が死んだときには・・・アーロンの魂を元に戻すと。」




私はライナードを睨み付けていた。素顔を晒したライナードは興味深い生き物を見るように私を見つめていた。そして、にやりと笑う。




「千人の命の犠牲があると聞いても、まだ儀式をおこないたいと言うのか、フローラ。お前、普通の魂じゃないな。狂ってやがる。」


「あんたに言われたくないよ、ライナード兄様。」




「ははっ、そうだな。ああ、お前の願いは聞き入れてやるよ。魔術師は嘘をつかないから安心しな。」




ライナードは微笑みながらそう言ったが、私もまた意地の悪い笑みを浮かべて答えていた。




「向こうの世界では、魔術師マジシャンは嘘をついて夢を見させて人を騙すんですよ。」


「お兄ちゃんのいうことは、妹は素直に信じるものだよ、フローラ。」




私は、アーロンに抱き付くようにしながら立ち上がった。酷く体が消耗しているのを感じる。熱があるのかもしれない。弱い体。これからどうなっていくのだろう。




何も分からない。それでも、歩いていかなければ未来はやってこない。


私にも、結城にも。




「アーロン、もう行こう。」


「ああ、フローラ。」




アーロンが、ぎゅっとフローラの体を抱き寄せた。それだけで、歩くのが楽になる。兄の部屋を出ようとしてドアに向かったが、ふと思いなおして兄を振り返り声を掛けた。




「ああ、そうだ・・ライナード兄さん。」


「何だい。」


「『異世界転移』なんてすごい古代魔法が使えるのに、妹の病気を治す古代魔法は使えないの?」


「さあ、まあきっとそんな魔法もあるんだろうけれどもね・・・興味がない古代魔法は研究する気も起きなくてね。まあ、つまるところ・・使えないって事。使えない兄でごめんよ。」




「本当に・・・残念すぎるお兄さんだわ。稀代の魔術師ライナード。」




こうして、第三王子ライナードとの面会は終わった。

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