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竜の薬師  作者: もんた
第1章 始まり
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第5節『夕焼け』

どうも、もんたです。

今回少々短いです…

話の切れ目的な部分でどうしてもこうなりました。



それでは、どうぞ

 


 「よく見ておきなさい。…いきます。《精製》」




 呪文を唱えると同時に、甕にかざした母さんの手が淡く光り始める。

 その光に呼応するように甕の中も光だし、ゆっくりと中央に渦を巻き始めた。

 渦が速度を変えながら回り続けると、徐々に色が変わっていく。

 はじめは薬品の混じっただけの緑色の濁った色だったものが、綺麗な青色へ。


 母さんの手の光がより一層強くなる。

 すると水の色が青色から黄色へと変わり始めた。

 光の弱まりとともに水が徐々に透き通っていく。

 「抽出」の工程に入って、薬効成分がどんどん沈殿していっているからだろう。


 母さんはかざしていた手を下ろすと、額の汗を拭きながら僕たちを呼び寄せた。





 「…ふうっ。これで抽出までが完了です。あとは「最適化」を行うことで滋養剤の完成となります。マルク、そちらの工程はお願い出来ますね?冷やす時はいつものように魔法で構いませんから。わたしはその間にシャンドラ様と支払いを済ませておきますので。それではシャンドラ様方、こちらにどうぞ。」

 「あ、あぁ。それではマルク君、またあとで。」





 そういって母さんは見学した感想を言い合ってるシャンバラさんたちを引き連れて部屋へ戻っていった。



 さて…「最適化」の作業に入るとしますか。

 まずは甕に残ってる上澄み液を捨てる必要がある。

 天井から甕を固定している鎖を緩め、沈殿物が浮かび上がってこないようにゆっくりと甕を傾ける。

 この上澄みは甕の下でお行儀よく待っているアドラーにいつもあげている。

 ほんの少しではあるけれど、薬の成分が残っているのでちょうどいい飲み水代わりになるし、アドラーの体内で濃縮して量が多ければさらに薬が作れるのでちょうどいい。


 甕の中に引いてある線まで上澄み液を減らして、残った上澄み液と沈殿物を混ぜ合わせる。

 上澄みが多いと薬の成分が薄まってしまうけど、逆に全くないと今度は薬が強すぎて、中毒になってしまう。

 新しい水を用意して薄めても良いけど、せっかくなら薬効成分の含んでいる上澄み液を使った方が効率がいい。


 ただ、例外もあって回復薬や一部の薬は敢えて上澄みを全部捨てることで効果を高めたりもするんだけど、これは特殊な用法になるのでめったにしない。

 甕に残った薬をいくつかの大きなボウルにうつし、固定薬と呼ばれる薬を投入する。

 名前の通り、薬液を錠剤にするときに使うもの。混ぜ終えたものを錠剤用の型に()が入らないようにゆっくり流し込む。

 全部に流し終えたら都度、不純物が入らないよう蓋をする。

 これを何度か繰り返してすべてを型に注いだら…


 魔法発動!




 「《フリーズ》」




 一気に固めてしまうとひびが入ったりするので、徐々に冷えるように魔力を調整する。

 はじめの頃は魔力を込めすぎて氷の塊にしたり、弱いままで永遠と固まらないなんてことをやったりしたけど、もう慣れた。

 魔力の調節をしながら、アドラーに指示して四体に分裂してもらう。

 半分は甕の掃除、もう半分は調合に使った道具の掃除。

 掃除をきっちりしておかないと、前に使った薬の成分が混じってしまうので要注意。

 特に洗いにくい薬研やろうと(・・・)のような複雑な形のものは分裂体が体内に取り込んでもらって掃除するのがいつものやり方。



 アドラーの片付けに気を取られてしまったせいか、若干冷やしすぎたみたい。

 いつもより蓋が固くて開けにくい。

 狩り用のナイフを使ってなんとか開けると中には真っ白な錠剤がずらっと出来上がっている。

 一つの型で20錠。

 それが10個あるので200錠か。


 ・・・よし、問題なし。

 手袋を嵌めて型から割れないように慎重に取り出し、10錠ずつ小分けにして袋に詰めて完成。

 部屋を見渡し、掃除漏れがないことを確認した僕はアドラーを頭にのせて部屋へ向かった。





 「母さん、できたよ。一応10錠ずつ包んでるけど。」

 「ありがとう、マルク。…うん、いい仕上がりね、問題ないわ。どうぞ、シャンドラ様。」

 「確かに。とりあえず10袋貰いますね。残りは保管しておいていただけますか。いやぁ、薬も安く譲ってもらえたし調合の様子も見学させてもらえたしで、今日は本当に運が良かった。オルガさん、マルク君、ありがとう。」

 「とんでもありません。また機会があったらお越しください。何もない山小屋で恐縮ですが。」

 「そんなことないよ、オルガさん。ここは静かで心安らぐ場所だし、何より腕のいい薬師が二人もいるのだから。為政者としてはこれほど心強いものはない。さて…そろそろお暇するとしようか。マット、ダリア、準備をよろしく頼む。」

 「はっ。マルク君、今回は時間がなかったが、次会ったときはぜひとも一試合頼むぞ!」

 「また言ってるにゃ~。マルク君、気にしたらダメにゃ。そうだ!トーカの街に来たら、わたしたちのパーティーが拠点にしてる【鹿の角笛】って宿に来ると良いにゃ。街を案内してあげるにゃ!」

 「あはは…」




 2人はそういうと僕の返事も聞かずにあっという間に外へ出ていった。二

 人が出ていくのを確認したシャンドラ様はまたこちらを向いて、少し真面目な表情で僕を見つめた。





 「マルク君、さっきの話、覚えているかな?」

 「さっきの…?将来の話のことですか?」

 「そう。学校の件も含むんだけどね、くどいようだがぜひとも前向きに検討してほしい。学業は勿論、他にもいろんなことを学べるはずだ。きっとマルク君の役に立つよ。」

 「はい…でも、お金が…」


 「あぁ、言ってなかったね。学園には奨学金という制度があって卒業後に費用を分割で返済できるようになってるんだよ。だから入学のタイミングでお金がなくても大丈夫。空いた時間にお金も稼げるしね。学園に入学すれば街に住むことになるけど、学生向けの寮にすれば格安だしね。というか、僕が勧めているんだしお金の心配はしなくてもいいんだけど?」

 「シャンドラ様、お言葉は非常にありがたいですが、そこまで甘えるわけにはいきません。良くして頂き過ぎて、マルクが調子に乗らないとも限りませんから。」

 「ちょ、母さん!そんなことないって!」

 「あなたのことは信頼しているけど、あなたの言葉は時々信用ならないのよね。」


 「うっ…」

 「ほんとに仲がいいね、2人は。まぁ、ドラコニア様の判断もあるだろうから、返事は手紙ででも教えてもらえると助かるよ。もし入学するのを決めたら早めに教えてくれると嬉しい。入学の半月ほど前に迎えに来るよ。色々準備も必要だから。それじゃあオルガさん、マルク君、また会う日を楽しみにしているよ!」

 「ありがとうございます。シャンドラ様、お気をつけて。」





 準備万端で待っていたマットさんとダリアさんと合流したシャンドラ様は軽くこちらに手を振ると、ゆっくりと森を下っていった。

 マットさんは薬の詰まった箱を抱きかかえているので、護衛はダリアさんのみってことなんだろう。





 「さぁ、マルク。食事の支度をしましょう。アドラーも手伝ってね。」




 そういってアドラーを抱きかかえた母さんは台所へ行ってしまった。

 僕は窓から3人の後姿をぼーっと眺めていた。



 ふと空を見上げれば、空はすっかり夕暮れ。赤く、赤く染まっていた―――






お読みいただきありがとうございました。


のんびりとブックマークの数が増えてきて、

やる気に繋がっております。

書き溜めの分もそれなりになってきたので、うまくいけばまた平日どこかで更新できるかなと。



今後も、よろしくお願いいたします。

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