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竜の薬師  作者: もんた
第1章 始まり
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第1節『はじまり』

こんばんは。もんたです。

お待たせしました。本章が始まります。

主人公登場です!


あ、ブックマークがついておりました。

ありがとうございます。ありがとうございます。

今後も読んでいただけるように頑張っていきます。


それでは、どうぞ。





 それから数年の月日が流れ―――


 【竜の尾根】を覆いつくす【トバ大森林】―――【竜の尾根】全体に広がるこの大森林は生きとし生けるものに大いなる恵みを与えると同時に、多種多様な魔物が生息する危険区域でもある。

 隣接する国や組織に派遣される冒険者や騎士たちによって森の入り口付近は整備されているものの、未だ踏破されていないエリアが存在している。

 サドニア王国南西部に位置する大森林にひっそりとたたずむ山小屋。

 本章の舞台である…







*******************

***************

***********

********









 木々の葉を撫でる爽やかな風が吹いている。

 木々は揺れ、小鳥たちは思い思いに歌声を響かせていた。


 そんな穏やかな森の中、どこからか何かの擦れ合う音が聞こえてくる。

 音のする方へ目を向けると、枝々の間を縫うように飛び移る子どもがいる。

 太陽の光を受けて幻想的に輝く銀色の髪。

 茶色の毛皮で出来た上着とモスグリーンのズボンは彼をうまく森の中へと溶かしていく。

 藁で編まれた背負子の中には数種類の草花が詰められているようだ。

 彼の視線の先から凛とした声が聞こえてくる。







 「マルク!マルク!!もう!どこにいったのかしら…」

 「上だよ、母さん!」






 僕は木の上から母さんに声をかけ、飛び降りた。






 「よいしょっと!へへ、すごいで、あだっ!?」





 華麗な着地を自慢しようとしたところに母さんのチョップがクリーンヒット。

 頭をなでながら目を上げれば、眉を寄せた母さんの顔があった。




 「いっつ~…なにすんのさ!」


 「もう!危ないことはしないように、と何度も言っているでしょう!それから、薬草採取にはアドラーを連れて行きないとも言っているはずですが?」

 「うっ…で、でもほら!ちゃんと薬草は採って来たんだよ。ククリ草にマハラ草、他にもいくつか薬草は摘めたし、珍しいケコの実とかも採れたんだ。あ、晩御飯用の鳥も仕留めてきてるよ。」





 背負子の中に入れていた薬草を取り出しながら見せていく。

 それぞれの薬草は種類がごっちゃにならないように採取した時に麻縄でまとめてある。

 こうしておかないと似た薬草が混じっちゃって調合する時に大変。

 中にはほとんど見た目が変わらないくせに、方や薬草、方や猛毒なんてこともあるから、と母さんに習った。

 仕留めた鳥はこれまた母さんに習ったやり方で血抜きはばっちり。

 今日の戦果を広げながら誇らしげに母さんの顔をみるんだけど…。


 これ、呆れられてない?





 「はぁ…一体どうしてこんな風に育ってしまったのでしょう。もう少し厳しく教育すべきでしたかね。」


 「…さて、マルク。わたしの言うことを聞かなかった罰です。今日は裏の川へ行って水を汲んできてください。甕は台所裏に二つ置いていますから、どちらも水汲みを。それが終わったら、摘んできた薬草を仕分けして下処理をしてくださいね。下処理が終わったらお風呂を沸かしておいてください。」



 「えぇ!?そんな!!こんなに頑張ったのに…僕も10歳だよ?アドラーいなくったって大丈夫だってば。こうやって薬草も採れて、狩りだって出来てるんだしさ。」

 「…何かいいましたか?あぁ、晩御飯がいらないといったのですね。」

 「ちがっ、ちょっ、いきます!水汲み行きますので晩御飯抜きは勘弁してください!!」

 「わかっているのなら素直にそう言えばよいのです。アドラー、マルクと一緒に水汲みに行ってちょうだい。」





 その声を聞いて、屋根から赤いぷよぷよしたものが飛び下りてくる。

 ころころ転がり、僕の胸に飛び込んできた()をキャッチ。


 そう、アドラーはスライム。

 母さんの従魔で、種族の名前はハーバルスライムっていうちょっと特殊な種類らしい。

 この種族は薬草や毒草を主食にしていて、食べた草を体内で調合、薬にしてくれるという超お役立ちスライム。

 もちろん、作ってほしい薬に必要な薬草を食べさせないといけないし、ストックが出来るわけではない。

 それになんでも調合できるというわけではないので、なんでも頼れるというわけでもない。


 僕はアドラーを頭の上にのせ、背負子を玄関口に降ろした後、水がめをもって川へ向かった。

 川までは大体10分くらい。

 川までは魔物もめったに出ないし出たってゴブリンとかスライムとかの弱い魔物だけ。

 アドラーは一応僕の護衛役ってことになってるんだけど、いるかな、これ?

 戦闘力は曲がりなりにも魔物なだけあってそれなり。

 スライムという種族上、物理は全然効かないし、近づいた敵には口(いや、目も鼻もないから実際にはどこからかわかんないけど)から強酸液を吐いて相手を溶かしたり、毒液を吐いてじわじわと弱らせたりと案外えげつない戦い方をする。

 その代わり、魔法にはめっちゃ弱い。





 「っと、着いた着いた。アドラー、水汲むから降りて。監視よろしくね。」





 アドラーは了解!と言わんばかりに身体を震わせたあと、周囲の草むらへぴょんぴょん跳ねていった。

 そんな彼はほっといて、僕は水を汲まないとね。

 晩御飯食べられなくなっちゃうよ。

 この辺りの川はそんなに深くないから、甕いっぱいに水を汲むにはバケツみたいなもので何度も汲みいれないといけないんだけど、それはちょっと面倒。





 「よ~し。《アースホール》」




 両手を川に向けて魔力を集める。

 魔力の高まりに合わせて、川底がゆっくりと沈んでいく。

 ものの数秒で深さ1メートルほどの穴を作ることが出来た。

 そこに水がめを沈めれば、あっという間に水汲み完了!


 …おもっ。

 これはアドラーに持ってもらおう。

 すぐ隣で草を食べてたアドラーを呼び戻して、頭の上に水がめをのせてあげる。

 先に帰るように伝えた後、川底に空いた穴を防ぐためにもう一度魔法を唱えて、元通りにしておく。

 魔法は母さんやじいちゃんから色々習ったけれど、いくつかは自分で作り上げた。






『魔法とは想像力。はっきりと形を望めば、それにこたえてくれる。』






 っていうのがじいちゃんの口癖で、本人もいろんな魔法を自作していた。

 この《アースホール》の魔法は、狩り用の落とし穴を掘ろうとしたときに思いついた魔法。

 スコップは時間かかるし、土が邪魔だし、使い終わった後に埋めなおすのも面倒!とい思いから作り出したけど、母さんはため息ついてた。





 「う~ん。このまま帰ってもいいけど、あんまり早く帰って仕事増やされてもいやだしな…少し時間潰していくか。《精霊召喚、アプサス。》」





 右手の人差し指につけている指輪が青い光を放ち始め、呼応するように川の水がゆっくりとまきあがっていく。

 いつ見ても不思議だなぁ。

 立ち上った水はにゅるにゅるとうごいて、小さな妖精の形をとった。

 妖精はクスクスと小さな笑い声をあげながら楽しそうに水面を滑り始めた。


 彼は僕の遊び相手であるアプサス。

 水の下位精霊で話すことはできないけど、人の言葉を理解することはできるので母さん以外に話が出来る割と貴重な相手。

 森の中に住んでいるおかげで、ともだちといえるような相手はいないし…って、寂しいな。



 …オホン、気を取り直して。

 僕が付けているこの指輪は、【星映しの指輪】っていうとっても貴重な《魔道具》らしい。

 魔法が付与された特殊な武器や道具全般を《魔道具》と言って、火をつけたり水を出したりっていう生活に根差したものから、戦闘用のものまで幅広く存在している。

 この指輪は母さんから数年前に貰ったもので、なんでも僕の本当のお母さんが身に付けていたものらしい。


 あ、そうそう。俺とくらしている母さんは、実は本当のお母さんじゃない。

 母さんの名前はオルガ。

 人間じゃなくてエルフ。

 じいちゃんと出かけているときに僕の本当の親が魔物に襲われているのを助けたらしい。

 残念なことに両親はどちらも死んじゃったけど、僕は生きていたから母さんが引き取って育てることになったとか。

 本当の親って言われても、正直ピンとこない。

 うんと小さい時の話で顔はもちろん声すら思い出せないし、悲しいって気持ちもあんまり。

 ずっとオルガ母さんと一緒に暮らしているから、例え今、「私があなたの親よ!」って言って出てきたとしてもついていかないかな。






 「ん?わっぷ!?」




 ――クスクスクス―――






 ぼーっとしてるところでアプサスから水をかけられた。

 ちょっと真面目なことを考えていたのに。

 その後もアプサスに最近の出来事を話しかけて少しの間楽しい時間を過ごせた。

 その間に彼は川に何度か川に潜っては浮かんでを繰り返して、何匹か魚を捕まえてくれた。

 【星映しの指輪】の力を使えば、アプサス以外の精霊も呼び出すことはできるし、もっと魔力を注げば力の強い上位精霊も呼び出せるらしい。

 まぁ、上位精霊を呼び出さないといけないような事態に陥ったことはないし、一番気楽に呼び出せて、話し相手になってくれるのはアプサスくらいしかいないから他の精霊を呼ぶことはあんまりないけど。






 「ふふ、楽しかったよ、アプサス。魚もありがとう!またお話ししようね。《精霊帰還》」






 魔法を唱えると、アプサスの輪郭が少しずつくずれ、川の中へとぼやけていく。

 彼は、ばいばい、と手を振ってさっと川の中へ消えていった。

 さぁ、僕も帰るとしますか。




ここまでお読みいただいてありがとうございます。

序盤はどうしても説明が多くなり、物語の進みがまったりですが、しっかり前に進めていきたいと思います。

よろしくお願いします。

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