プロローグ-1
皆様、初めまして。
もんた、と申します。
本サイト初投稿となります。
実は処女作ではありませんが、、、いえ、期待値0からオネガイシマス。
読みにくい部分や誤字脱字等、気を付けているつもりではありますが、何かあれば遠慮なくお知らせいただければと思います。
まったり更新してまいります。ひとまず週一ででも更新できれば…と考えておりますが、リアルと相談します。
それでは、どうぞ。
プロローグ
ザアアアァァァァァ―――――
大粒の雨が降りしきる大地――――ここはサドニア王国。
【竜の尾根】と呼ばれる山脈に北部と西部を囲まれ、東部一帯は気候の温暖な平原と森林地帯が広がり、南部には波の穏やかな内海が広がっている。
山と海、そして肥沃な平原という極めて自然環境に恵まれた土地に根差した大国であり、周辺諸国の中では最も大きくそして歴史の古い国の一つ。
この物語は、そんな国に生まれた一人の少年の人生を紡ぐ物語―――――
*******************
***************
***********
********
ザアアアァァァァァ―――――
ガガッ…ガッガガッ…
大粒の雨が大地をたたきつける。
視界もはっきりとおぼつかないような薄暗い中、車輪と蹄の音が響いていた。
二頭立ての馬車には控えめな装飾が施されており、見るものが見れば貴族に近しいものが乗っているのだろうと推測できるような代物である。
ほの暗い景色に溶け込むようにグレーのコートを羽織り、フードを目深にかぶった御者は鬼気迫る表情で鞭打ち、馬を急がせている。
しかし、長雨の影響でろくに舗装もされていないぬかるんだ地面は蹄や車輪をからめとり、思うようにスピードを出させない。
そんな馬車にしびれを切らしたのだろうか。
御者席の後方に取り付けられた小窓から険しい顔つきの男性が顔を出し、御者に向かって声を張り上げる。
「セルジオ!!いそげ!もっとスピードを出すんだ!!」
「ダメです!リオニル様!車輪が泥にとられてこれが精いっぱいにございます!」
セルジオと呼ばれた中肉中背の御者は40歳ほどだろうか。
黒髪にうっすらと混じる白髪が彼のこれまでの人生の苦労を垣間見せているようだ。
一方、小窓から顔を出した彼の名は、オットマー・リオニル。
元冒険者として功績をかさね、一貴族にまで成り上がった所謂「成功者」である。
最後に受託したクエストで負った怪我の影響で、若くして引退したが、現役時代に磨いた技と経験は健在。
彼は鋭い目つきで馬車の行く先を見据えながら、苦々しい表情で吐き捨てるように呟いた。
「くっ、、、だから中途半端な護衛はいらないといったんだ。ギルドの老害どもが…無駄に狩りをしたおかげで余計な魔物まで刺激しやがった!何が『何が出てきても大丈夫、全部狩ってやりますよ!』だ!!」
グルオオオオォォォォ!!!!!!!
急ぐ彼らを追い立てるようなうなり声。
先ほどよりも近くから聞こえるようだ。
灰色の巨体にところどころ入った黄色の縞模様。
魔物の名はジェノタイガー。
サイのような巨体をゆらす、危険度Aランク帯に属する獰猛な虎の魔物。
額には一本の太い角が生えており、優れた個体はこの角を媒体に魔法まで使うといわれている。
ジェノタイガーは身体のあちこちから血を流しながら、激しく血走った目で馬車を追ってきている。
額に生えた1メートルほどもある太い角にはところどころ罅が入り、先端は欠けているようだ。
おそらくリオニルの言う護衛がつけたのだろうが……
そもそも、護衛として付き従った冒険者たちがリオニルに腕前を見せると称して無駄に狩りを行ったことが原因。
冒険者の一人がジェノタイガーの子どもを襲ったのを親に見られ、反撃を受け冒険者たちは全滅。
ジェノタイガーはそのままリオニルたちをも標的と定め、縄張りを出た今も復讐の炎を燃やしている。
そうこうしている間にも徐々に馬車とジェノタイガーとの間は詰まってきている。
怒りのあまり無意識で《身体強化》の魔法を使っているなどということはリオニル達には知る由もないことである。
残された時間はそう多くはなかった。
近くの町まではどうやってもあと30分はかかる。それまでに追いつかれ、食い殺されるのがオチ。
例え先に街に着いたとしても、凶暴な魔物に追われている馬車をそのまま街に入れるような真似を兵士たちがするはずもなく。
方法は一つしかないように思われた。
リオニルは腰に差した冒険者時代からの愛用の剣に手をかけながら、セルジオに静かに語りかけた。
「……セルジオ、私が時間を稼ぐ。妻と子は…すまないが、君に任せることにしよう。君は信頼に足る男だ。このさき君が結婚するにせよ、しないにせよ、時折2人を気にかけてくれると助かる。」
「リオニル様…?何をおっしゃっているのです?馬鹿なことは言わないでください!既に縄張りである森からは十分離れております!!このまま走っていれば街に近づいて、そのうちやつも諦めて――」
「セルジオ!!……言いたいことはわかるが、…もう無理だろう。子どもを殺され自身も傷つけられた奴に諦める、なんて選択肢はないよ。やはりいつものパーティーが戻ってくるまで前の街で待っておくべきだったな。後悔先に立たずとはよく言ったものだ。私が出る。そのまま走れ。最初で最後の命令だ。」
「っ!!リオニル様…しかし…」
リオニルはそういうと、セルジオの返答を待たずに小窓を閉めた。
窓を閉め切って真っ暗なはずの馬車の中は予想に反して明るい。
【日輪のランプ】と呼ばれる魔道具によって馬車内は程よく照らされていた。
向かい合わせの席には冒険者時代の元パーティーメンバーであり、彼の妻であるオットマー・リリーが子どもを抱きかかえて座っている。
銀色の長い髪と黒いドレスの対比が美しい。
街中ですれ違えば10人中10人が振り返るような柔和な微笑みを湛える彼女の顔は、今不安を隠しきれないでいる。
その不安を押し殺すかのようにこどもをほんの少し強く抱きしめ、リリーはリオニルと向き合った。
久しく見なかった彼女の真剣な表情についリオニルは目をそらしてしまう。
「あなた、いかれるのですか。」
「あ~…流石に聞こえたよな、リリー。…いくよ。まぁ、相棒もいることだし、それなりにやれると思うんだよね。流石に、現役の頃のようにとはいかないけど時間くらいは稼げるし、うまくやれば倒すことだってできるさ。」
「…嘘をつくのね。」
「おいおい、人聞きの悪いな。ほんとのことさ。」
彼女の真剣な物言いに茶化すように肩を竦めながらリオニルは答える。
我慢しているのだろう。
リリーは目じりに涙を浮かべながらリオニルを見つめている。
彼は頬を掻きながら冗談交じりに答えた。
「…懐かしいな、リリーのその目。覚えてる?結婚してすぐに向かうことになった遠征のこと。遠征先から大けがして帰ってきた時と同じだよ。あの時は生涯で一番怖かった。」
「ふざけないで!!やっとよ?やっとこの子が生まれて、さぁこれからという時なのに…どうして……。
」
「リリー…」
耐え切れずついに泣き出してしまった彼女の背中に手を回し、彼女を抱き寄せる。
胸の中に感じる、愛する妻と子どもの温かさ。
リオニルは名残惜しさを感じながらも彼女を引き離す。
泣いて真っ赤に染まった瞳に浮かぶのは不安か覚悟か、それとも両方か。
彼女を落ち着かせようとリオニルは頬をなで、額にキスをした。
そろそろ出ようと扉に手をかけたその時、リリーが立ち上がりリオニルに覆いかぶさった。
「っ!!!ダメ!リオ!!」
ズドオオオォォォォォン!!!!
彼女が大声を出すのとほぼ同時。
耳をつんざくような轟音。
私たちを真っ白な世界が覆いつくした。
お読みいただきありがとうございます。
本編まであと数話かなと言ったところです。