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わんみにっつ

作者: 沙紀

短編です。書きたいこと書いただけなのでいろいろぐちゃっとしてると思います。

人生最大の勝負に、負けてしまった。

最善を尽くして戦ったというのに。運も実力のうちとはこのことか。

ここで負けたことで、俺は一生敗北の嘲笑を背負って生きていくことになるだろう。


 + + + + +


人生最大の勝負に、勝ってしまった。

頑張ったというわけではないのに。運も実力のうちとはこのことか。

ここで勝ったことで、僕は一生勝利の期待を背負って生きていくことになるだろう。


 + + + + +


人生最大の勝負とやらを、私は見ていた。

特に何も感じなかった。特に何も思わなかった。だって私には何も与えられてないから。どうせ始まって1分で終わる世界に、何を生み出せるわけでもない。

"始まる前"だったら、何かを生み出せたのかも知れないが。


なぜ人生最大の勝負なのか、60回見たときになんとなくわかった。

彼らにとって、生きるか死ぬかの勝負だからだ。どうせ1分で終わってしまうのに生きるか死ぬかを決めているなんて馬鹿馬鹿しい。しかも実際に命を懸けるのではなく、これからの人生においての自分の在り方を決めるものなのである。実に腹立たしい話だ。ん、待てよ。なぜ私は今、腹立たしいと思ったのだ?なぜ私に感情が生まれている?怖い。怖い。知らないことが、怖い。知ってしまうことが、物凄く怖い。なぜ、怖いんだ。なぜ。なぜ。なぜ-?


それらの問いは、何回見ても答えが出てこなかった。単純明快でなかったのか、それとも答えがなかったのか。どちらかはわからない。だって私には何も与えられてないから。勝手にどこからか湧いた感情というものが蠢いていただけだとしても、なんだとしても私にはわからなかった。では、最近覚えた解決法で現状打破をしてみよう。

私は、諦めた。


 + + + + +


これも失敗作か。いつになったら全てを生み出す完璧なモノが作れるんだ。私が完璧でなくては無理なことなのか。否、自分で成長していかなければ全てを生み出すとは言えない。だから私からは何も与えない。だから私が完璧かどうかはどうでもいいはずだ。


600回目となる次も失敗作だった。


次も、その次も。またその次も。6000回を超えても、一向に完璧なモノが作り出される気配がない。


始まって1分で終わる世界、という環境で実験をしていたことには意味がある。もうじきこの世界が朽ち果てるからだ。まあ仕方のないことである。この世界は完璧でなければとても弱く脆い。それを人間がさらに破壊していったらこうなる。

ただ、これだけ多く実験を重ねていると、まだ世界が終わらないのかと不思議に思う。


60000回目の実験が終わったところで、私は長く忘れていたことを思い出した。実験台にする全てのモノが、「始まって1分で終わる世界」という実験項目に気づいてしまうのだ。どうしてそれを忘れていたかはわからない。ついにボケたか。

あともう一つ、どうして私がこの実験を行っているのかである。まあ簡単なものだ。私は愛する人ともう一度、ある花を見に行きたい。それだけである。

この世界では、もう花を見ることはできない。自然はない。人間が作った木を模した物が生えているたけだ。


 + + + + +


私の愛する人は、ある実験をしていました。なんでも自立した完璧超人というものを作るそうです。もう一度、私とある花を見るために。

電車で1時間ほど行ったところに、その花の花畑があります。私たちは、それを一度しか見れませんでした。原因は、彼の持病による絶対安静。検査によると、余命2ヶ月だそうです。その余命宣告を受けてから、彼は狂ったように実験を始めました。私は無理をしないでゆっくり休んでいてほしいのに。休んでいれば、体調がいい日にあの花を見に行けたかもしれないのに。私と花を見るためにやっていることが、私を悲しませているという事実に彼が気づくことはないでしょう。

しかし、彼の一生懸命な姿を見ると、止められないのです。


彼がつけていた日記が出てきました。『もうじき世界が朽ち果てる』と。もちろんそんなことはありません。自然だってありますし。まあ、人間が破壊しているというのはわかりますが。

彼の世界が終焉を迎えることを、彼は世界の終わりと例えたのでしょう。自然がないといったのは、見ることができなくなってしまったからでしょう。

そもそも彼が実験を行っていた理由は、彼が健康な体になるためです。そうすれば私とあの花が見られると。健康な体を、私を支えられる体を作り上げて、記憶だけを移動させるつもりだったと。彼は天才科学者です。それを行うための準備は出来ているはずでした。実験失敗だと繰り返す彼の目の前には、傑作が出来上がっていました。私は完璧でなくていいと、あなたとあの花を見ることができるのならいいと、そう言っても彼は聞きませんでした。どうしてそう、頑固なのでしょう。


 + + + + +


人生最大の勝負とやらを、私は見ていた。

悲しいものだと感じた。助けてみたいと思った。だって私は全てを生み出すモノだから。始まって1分で終わる世界を、何回も繰り返して生み出したそれは。"始まる前"を超えることを、とうとう出来ないと判断した。


 + + + + +


「全てを生み出すモノは『出来ないと判断する』ということを生み出し、終えてしまった。」これが最後の実験の結果でした。600回目の実験の時点で、『諦める』ことを覚えてしまったから、そこからは時間の問題だったのでしょう。最後の実験であり、彼にとって最期となったモノが生み出したモノ。それを今ここに書きましょう。


それは-。


 + + + + +


それは『愛』である。無理矢理『愛』を生み出したが、それは私たちの『愛』を超えることが出来ないと判断した。それが出来ただけでも上出来だろう。嗚呼、結局見れなかったじゃないか。今までやってきたことはなんだったんだ。全部、無駄じゃないか。


あと一度だけでいいから、見たかったよ。

"沈丁花の花畑"を。


 + + + + +


沈丁花の花言葉をご存知ですか?辞書で引くなり本で調べるなりしてみてください。彼はそれを誓いたかったのかと思います。私はそんなものいりません。あなたと一緒にいられた時間が、何よりも大切だから。


 + + + + +


やっと読み終わった。こんな話、現実にあるとは思えない。

ん、なんだ。画面に何か映っている。じゃんけんか。そんなものを見せてなんだというのだ。


 + + + + +


また映った。じゃんけんの映像。これで、60回目だ。

ありがとうございました。

ここに書くべきか迷ったのですが、書いておきますね。

沈丁花の花言葉は【永遠】です。


皆さんは、これを見て何を思いましたか?

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