コンファル ルート
ジュプス出身のコンファル。貴族ではないが、金はあるようなので、私は彼を狙うことにした。
臨海学校の間に距離を縮めて裕福な暮らしをする。
「アクアルナ」
背後から声をかけられた。
「コンファル」
一体どうしたんだろう。
「これからミュートロギアンやユベリスと肝だめしをすることになったんだけど」
「へー」
三人で肝だめしか……。
「二人一組でいくから人数足りなくて、よかったら君も参加してもらえないかな?」
「あうん、いいよ!」
まさか向こうから誘われるなんて、私ついてる!
――臨海学校も昨日で終わり。アクアルド星からドゥーブルフロマージェ星に帰って、今日は普通に登校する。
「おはよう、アクアルナ」
「あ、コンファル。おはよう」
コンファルってお金持ってるけど、得体がしれないから苦手かもしれない。
雰囲気は優しそうなんだけど、チーム戦でのユベリスに対する煽りとか。ところどころ垣間見えるんだよなあ。
「ふー今日はなんだか暑いね。少し歩いただけで汗をかいたよ」
コンファルはコエマドゲルポ紙幣で額をふいて、それをポイ捨てした。
「もう! ポイ捨ては禁止だよ~!」
私はゴミを拾うかのように、それに手を伸ばす。
「まったく……だれだこんなところにゴミを捨てて……」
現れた清掃係=生徒会が私より先にそれを拾うと、懐に入れた。
「そ…ん…な……」
フェアリーベルが鳴る。
「遅刻するよ?」
----
「おはようコンファル~」
クラスメイトIが朝っぱらから変なポーズで現れた。
「ああ、おはようイオクルシス」
それをスルーした。一瞬なにかを彼に手渡したような気がするがまあいいや。
―――もしかしてコエマドゲルポ紙幣かな?
「はーい皆さんおはようございます」
ルネークス先生が来た。
「今日はクラス合同でチーム戦です」
――――え、チーム戦って前にやった筈だよね?
―――
チーム戦も終わりお昼になる。
公爵に恵んでもらおうかと思ったら、いつの間にか姿を消していたので、コンファルのところへいくことにした。
――コンファルとお弁当を食べよう。
「一緒にお弁当たべない?」
コンビーニに売っている【俺の旨そうな弁当】を食べようとしている彼をガン見しながら水をがぶ飲みする。
「その水美味しい?」
学園の噴水で汲んだ水、なんか変な臭いするけど味はまあまあだ。
コンファルは涼しい顔で、少しもわけてくれない感じで弁当を食べている。
コンビニ弁当を食べ終えた彼はにっこりと笑う。
「しかたないな、10円ガムは買ってあげるよ」
「ありがとう!!ありがとう!!」
私たちは教室からでた。
「なーきいたかー」
「ああ、噴水の水になんかヤバイ毒素混入で食中毒者続出、ついさっきあの学年4位(実質5位)のニルスもチイユ星に搬送されたらしいなー」
「おかしいな、俺アクアルナが噴水の水汲んでるとこ見たし、さっきそれ飲んでたぜ?」
――――
王子に求婚された私は、色々大変な目にあったけどなんとか逃げた。
だけど、チンピラに銃を向けられピンチ。
―――――パァン!!
男の右手が撃たれ、ピストルが真下へ落下した。
それをアクアルナが蹴って男から離れる。
「いったい誰が?」
「無事だったか」「ミス・アクアルナ!」
―――ユベリスとミューティロギアンがやってくる。
「うん!」
「おーい!」
コンファルが反対側から遅れてやってきた。
「敵はもう片付いているようだが、アクアルナ、お前がやったのか?」
ユベリスが尋ねるが、アクアルナは首をふって否定する。
「まあとにかく、この男を拘束してプリンズ星のお巡り<マッポォ>につきだそうか」
――あのとき私を助けたのは、誰だったのだろう。
これは私の感だけど、ピストルを使ったのはコンファルなのではないかと思う。なんだか合流のとき、わざとらしかったし。
考えすぎかもしれないが、剣術のときに彼は“ピストル”がいいと呟いていた。
―――だから、可能性はなきにしもあらず。
――――
コンファルが一人で歩いている。
なにしているんだろうと木の影に隠れて見ていると――――
イオクルシスが手をヒラヒラとさせ、コンファルを待っていた。
「ヤツが失敗したようだ。既に始末はついたが」とコンファルが物騒な話をしている。
「そうか……まあしかたがない」
――イオクルシスが黒い笑みを浮かべた。これ以上は聞いちゃいけない気がする。
「どうするんだ」
「targetの始末はお前がやれ。それがボスの伝言だ」
イオクルシスが答えると、コンファルはやれやれと両手をあげた。
私は気がつかれないように息を潜めて二人が去るのを待った。
やがてイオクルシスが去ると――――
「そろそろ出てきなよアクアルナ」
私はコンファルに、ピストゥルを向けられながらついていく。
暗い通路で手を繋がれているのに全然ロマンチックじゃない。
どこへ連れていかれるのか。
きっとマフィーアのいるところだろうと思いきや、なんだか見覚えのある町並み。
人っ子一人おらず殺風景なところ。
「ここって!」
―――ルネークス先生を起こらせた日、クラスの皆と飛ばされた場所だ。
「思い出した?」
「そんな最近のこと忘れないもん」
なんでこの場所をコンファルが知っているんだろう。
「この場所なら絶対他の人間は入ってこられない。気がつかれたから君には話しておくよ」
「……?」
てっきり口封じに始末されるかと思った。
「オレはある事情で、マフィーアにスパイしているんだ」
「へえ……」
だからピストゥルとかいかにも怪しいことをやっていたんだ。
「で、さっきのイオクルシスは、正体を隠して通っているけど……組織の中でそこそこ上の、つまり幹部クラスでね」
「どええええ!」信じられない。
「最近マフィーアのボスに暗殺を命じられた。たまたま同じクラスだったから、噴水に毒入れたりしてイオクルシスの前では君を殺そうとしているテイをやらなきゃならなかったんだ」
「そうだったんだ」
今なんか聞き捨てならない話を聞いたようなきがするが、まあいいや。
「じゃあ帰ろうか。このことは他言無用で」
「あ、待ってよ。どうしてあのときルネークス先生はここに私達を?」
「ああ……実はあのとき先生が魔法を発動すると同時にオレも使ったんだよ。先生がどこにオレ達をやるか、さすがに予測できなかったから」
「そうなんだ……」
――コンファルはイオクルシスの目を欺くために殺そうとするフリはしばらくやるそうだ。
知らないままよりいいけれど、わかっていてやられるのもなんだかなあ。
――――というか、どうして私は命を狙われているんだろう。さっきたずねてみたけど、コンファルは新入りなので知らないらしい。
だけどイオクルシスはなぜ私を殺しにこないのだろう。
同じクラスなのだし、彼にも私を狙う機会はあった。
コンファルがいたからといっても、そんなに余裕があるということだろうか。
まあ悪い人が狙うのは私だけじゃないし、とにかく殺されないように逃げるしかないか。
◆
「コードネームIO」
「は、ここに」
「邪なる神の降臨は近い……監視を続けろ」
「承知」
「……」
◆
ああ、いい天気だなあ。早く授業終わらないかな。
だって次はお昼だし―――――
「アクアルナ」
イオクルシスが珍しく私に声をかけてきた。あれ、コンファルは?
てっきりコンファルが私に近づいてお弁当に毒をしこんで食べさせるフリをするのかと思っていたのに―――
「どうしたの。クラスメイトI」
「HAHAHA……君が日々、空腹にたえている姿をみかねてね。実家の田舎から届いた米なんだ」
―――イオクルシスがご飯をくれた。美味しそうだし背に腹は変えられない。ありがたくいただいておくことしよう。
「ヤバッおいしそー」
ご丁寧に塩までふられているじゃない。
ペロッこれは――――――
◆
「あーお米おいしかったよありがとうイオクルシス」
「……ん?(なぜあいつは生きているんだ!?)」
「あんなところに閉じ込めるなんて、ひどいじゃないですか……」
「……もうでてきたのか、地下牢の飯はどうだった。コンファル」
「いやだなぁ……オレが臭い飯なんて食うわけないでしょう」
「お前……ただの密偵のくせに、随分とあの娘に執心しているな」
「なんのことかな?」
「とぼけるな。さっき奴に握り飯をやった。凄惨<せいさん>カリを塩に見立ててな。
それがあいつには効いていない。どういう意味かわかるか?」
「は?」
「つまりはお前がすりかえたからだろう!」
「いやいや、オレついさっき出てきたばっかりなのに。
どうやって飯をすりかえられるんだよ?」
「……なら誰が!?」
「オレに聞かれてもね」
◆
「あ、コンファル!どこに行ってたの!?」
「地下に閉じ込められて、今出て来たばかりなんだ。
―――イオクルシスにスパイってことがバレてさ」
「……よく殺されなかったね。スパイ映画なら人質で交渉とか……大丈夫なの!?」
「聞く順番逆じゃない?」
◆
(おそらく米の糖分がカリの毒性を阻害した。であれば……)
「やあ、アクアルナ。今日も持ってきたよ。故郷の郷土料理、ホットイヌだ!」
「うわあ……おいしそう」
最近イオクルシスがご飯をくれる。私は食事に拘りがないのでなんでもいいが、こってるなあ。
「あいつまたやってるんだ……」
「あ、コンファル。なんか最近イオクルシスが施しをくれてね。田舎って暖かいんだね」
「知らないほうが幸せっていうし、黙っていれば君は昼ご飯が貰えてウィンウィンってやつだよね?」
◆
「そういえば、クラスメイトCのあれはなんだったの?」
「あれ?」
「溶けてたとか……」
「さあ? あのレプリカ星にそんな成分ないしなあ……」
―――なぜ、アニモニアがあったんだ?
「IOよ、計画はどうなっている?いつあの娘を連れてくるのだ?」
「は、必ずやボスの御前に――――」
「期待しておるぞ」
(……そろそろ本気を出さないとな――――)
◆
――――ハロゥィンが近いので、魔歌団が募集されていた。
「今年も出ようかな」
歌は得意なので、参加することにした。
「あ、コンファルも参加するの?」
「聖歌団やってたから」
――――コンファルってもしかしてポイゼェン星の教会に所属しているのかな。
ユベリスやミューティロギアンはイベントに備えてワッカの飾りつけをしている。私は花紙を作る作業をしていた。
「もう君にはたのまん!」
「……ああそうか勝手にしろ!」
なにやらまた言い争いを始めたようだ。
「はいはい喧嘩しないで、作業すすめなよ」
コンファルが二人の間にわって入る。この図ひさしぶりに見たなあ。
「なんで喧嘩してたの?」
私は理由をたずねてみる。以前は自分から声なんてかけなかったのに、自分でやってて不思議だ。
「ユベリスが輪の細さを均等にしないせいで、バランスが悪くなった」
ミューティロギアンが輪飾りを指をさす。たしかに太すぎ、細すぎのがチグハグになっていて不恰好。
「フン俺はこういう寛容な作業は得意じゃない」
―――へえ、ランク一位のユベリスにも不得手なことがあるんだなあ。
「……ならミューティロギアンが紙を切って、ユベリスが張ればいいんじゃない?」
コンファルが提案する。ためしに二人は作業を再開すると、案外うまくいった。
「コンファルって意外と面倒見がいいよね」
「まあ、軍のリーダーだったからね。チームとかをまとめるのは慣れてる」
「そうなんだ」
出オチの聖歌団は無事に歌を披露した。ハロウィンパーティーが始まる。
「アクアルナ。一緒にまわろうか、三百コエマドゲルポまでなら買ってあげるよ」
「マジで!?」
私達はカレェ屋に行く。
「スパイシェって感じだね」
「いらっしゃいませー鳥<チキィン>、豚<シュヴィアン=ポォク>、牛<ビィフ=カウ>にペガソス=ユニクゥン、羊<ラム=ジープ>もあるよ」
「何がなんでもビィフカレェ」
「じゃあ私はシュヴィアンで」
―――
後夜祭が始まるので、着替えにいくことにした。
「コンファルはなんの仮装するの?」
「着てからのお楽しみだよ」
◆
祭りも一通り終わり、後夜祭になった。待ち合わせしていた女神象の前で合流する。
私は妖精のテンカアヴェルの緑葉っぱコスだ。
「お待たせ」
「あ、コンファル」
彼はみんな知ってるペェタアパンのコスだ。ペアなんてすごい偶然、これって運命!?
「あ、コンファルくん」
「こっちむいてー!」
あれ、コンファルって意外と人気者なんだ。なんだか疎外感。