ミューティロギアンend S
「開けます」
私は鍵を差し込み、回した。カチリという音がするが、なにもおきなかった。
「開いて中を読んでごらん。きっと君の望む者の名がうつっているはずだ」
私は彼に言われるまま本を開いて中をみる。
そこに会った名は、ミューティロギアンだ。
―――
あれからすぐに彼の屋敷を後にするこの本を私に寄越した理由は、わからなかった。
けれどすぐにその意味を知ることになる。
――――――
「あ、ミューティロギアン」
町中で偶然彼の後ろ姿を発見した。
「奇遇だな、買い物……は愚問だな」
「そういうミューティロギアンはなにをしいてるの?」
荷物は持っていないから、まだ来たばかりだろうか。
「クラスメイト達はこぞってカルアゲやカレェとやらを好むらしいんだ。だから味見がてらコンビーニを探している。まあ正直食べ物ならなんでもいいと思うんだが……」
「へー」
――
その日の晩、なんだか寝付けなくて、窓の外を見てみる。
辺りは当然、真っ暗で星が輝いていた。
ミューティロギアンはコンビーニを見つけられただろうか。
「わっ」
急に強い風が吹いて、閉じていた筈の本が開き、ページが窓の外へ一枚飛ぶ。
「やばっ!」
今すぐとりにいかないと、なくなってしまう。私は軽く着替えて本を持ち、靴をはくとホウキで窓から飛び降りた。
木にひっかかったそれをとろうとしてもとどかない。
このままではまた風でとんでしまう。
「うわ!」
私はホウキから落ちそうになる。すると――――
「危ない!」
「!」
ミューティロギアンが私を支えた。
「あ、ありがとう」
「いや、君が落ちなくてよかった」
なんていいあっていると、風がふいて紙がとばされた。
「あ、待って!!」
「ミス・アクアルナ!?」
―――
「あーよかった……」
それをひたすらおいかけて、ようやくつかんだはいいが、自分がどこにいるかわからなくなった。
「……うそ!?」
ポツポツと雨が降りだした。こんなにきれいな月が出ているのに――――
濡れたらいけない本がある。しかたなく近くの洞窟へ雨宿りすることにした。
きっとお天気雨みたいにすぐおさまるだろう。
抜けたページをどこに入れるか考えよう。
それにしても寒いな――――つい寝てしまいそうになる。
《キシャアアアア》
なにか凶暴そうなモンスターがきた!! どうしよう!
「デズニーオンザアイス!!」
どこからか魔法を唱える声がし、モンスターを凍結させた。
「ミューティロギアン!」
「……間に合ってよかった」
どうやら彼は私を探してくれていたみたいだ。
「助けてくれてありがとう。それと……ごめんね戦い嫌いなのに」
――彼は戦いが嫌いなんだった。
モンスターと戦うのきっと嫌だったよね。
「気遣いは感謝するが、それは特に気にしなくていい。
簡単に言えば人間同士の争いが重点的で、モンスターは必要であれば応戦することも構わないんだ」
「あ、そうなんだ」
「詳しくは言わないが、家族が人間同士のくだらない争いに巻き込まれてからどうにもな……」
「……そっか」
家族―――
そういえばミューティロギアンは次男だけど、ユベリスが彼を侯爵と呼んでいたのを思い出す。
普通は長男であるミューティロギアンの兄が継ぐものだし、もしかしてミューティロギアンが継げない兄の代わりに?
それにミューティロギアンは気楽な次男というよりすごく真面目なタイプだし―――
これはきっと簡単に踏み込んじゃいけない問題だよね。
「雨もあがったようだし、ここにいては風邪をひく。……あまり飛ぶのが得意でないようなら。僕の後ろに乗らないか?」
「うん!」
いつか彼から聞ける日がくるだろうか―――
【ミューティロギアン大団円end・・一歩進んだ】




