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大団円ルート 女神


『いいか剣の持ち方は―――』

『兄貴はいいなあ、ボクも早く剣を握りたいよ』

『お前も病を治せばすぐにできるようになるさ』

――――


『誰が悪いわけではないんだ……お前は気にするな』

『兄上、僕は平和な世界にしたいです』

――――


『女神の魂を継ぐ者が、目覚めました』

『はい』

『お前はその日まで彼女を守るのです』

――――――



『アンタ何者だよ、俺を弟子にしろ!』

『だが断る』

――――――


『喜べ、お前はサンプルの中でも選ばれた存在だ。検体No.Ⅲよ』

『……嬉しくねえよ』

――――――


『いいですか、公爵家を継ぐものとしてふさわしい振る舞いをするのですよ』

『はい、母様』

――――――――


「今日の授業は神話です」


教科書を開く。珍しくみんな真面目だ。


電子教科書には女神たちのまとめがあり適当に気になった女神の名前をみていく。


神話って色々あるけど特に興味がわかない。他の人より魔法を使わないからだ。


アからいく。アミテルナ……父神のカツラを隠し、怒らせ、人間界へ修行に出された。


その下、アミドラル。氷と陽の男神ミトアロギアの双子の妹。アクアルドの女神で、水と月を司る。


女神アルテアナ。知恵と剣の女神。あ、たぶん家にはこの女神の加護があったはずだ。

――――


昔、むかし、青の星には双子の神がおりました。

兄をミトアロギア、医学の神でありました。青の星の民が病に負けぬ肉体を持つのはこのためでした。


妹のアミドラルは水色の星や、銀の星を守護した狩の神です。普段はたおやかな気風でしたが、敵意を成すものには容赦をしない女神です。


あるとき赤の星からベウリースという軍を司る男神が、青の星を侵略せんとしました。


そのとき女神アミドラルはベウリースに弓で立ち向かいます。

しかし、剣に破れアミドラルは消滅しました。


ベウリースは彼女の死により青の星を攻めるのを止めます。


アミドラルの死を嘆き、ミトアロギアは女神アルテアナを降臨させます。

女神アルテアナは力と知、全てを持った完全な存在でした。


ですが好き嫌いがはっきりしており、彼女は目の前に現れたベウリースを嫌い、倒してしまいます。


これにより、青と赤の力関係は均等になりました。


あるときフィーニクスという紫の星の神は、アルテアナに一目で恋に落ちます。

しかしアルテアナは彼をはねのけました。あるときのこと、アルテアナは男神メッドクレサンと出会います。


アルテアナとメッドクレサンは親しくなりました。それをフィーニクスは良しとしません。


高い丘にアルテアナがたたずんでいると、フィーニクスが現れ、彼女に迫りました。

しかし彼女はフィーニクスを拒み、崖から身を投げて消滅するのでした。


メッドクレサンはそれを嘆き、彼女の魂を青き星の人として廻らせたのでした。


―――――


「はい、今日の授業はここまで」

授業が終わり、休み時間になった。


「コンファル君、ちょっと職員室に」

「はーい」


コンファルが先生に呼び出されたので、私は彼がどうしたのか気になった。


「あいつどうしたんだ」

「見に行くか」


ユベリスやミューティロギアンも気にしているようなのでついていく。

――


「ポイゼェン星から呼び出しがかかっていますよ」

「せうですか、じゃあそろそろ帰星すると伝えておいてください」

「わかりました」

―――



「コンファル、星に帰るって本当なの!?」

「え、聞いてたの?」


「ついさっき先生と話してたのを偶然聞いた」

「うん、まあ、任務も済んだし」

「任務?」


「――あ、どこまで話したっけ?実はオレはバタカンチンの十字軍所属で、君の命を狙うやつから守るために来た。とか言ったことある?」


「お前が十字軍とは初耳だぞ!」

「じゃあ実は二十歳過ぎってことは」

「聞いていない!!」


「ちょっとまって、私を狙う組織って!?」


「あー元は女悪党アレアレイの率いる小組織だったんだけど。しかしアレアレイが監獄<プリンズ>星でプラネターに捕まり側近が救出している最中に乗っ取っられたらしいんだ」


「その首謀者は誰なんだ?」

「その乗っ取った奴なのか?」

「そうだよ。邪神信仰団アズローの幹部、名を邪神サクサージェ」


「アズロー?」

「アズローというのは大邪神クルトゥフから生まれた邪神アズローを筆頭に、裏で暗躍する邪神のみが所属する組織だよ」


「でもなんで邪神が私のことを狙うの!?」

「それは……君が女神アミドラルの魂を継ぐものだから」


「は?」

「なんだと!?」


私が女神の生まれ変わり!?

――――――


以前アクヤーク星にいた組織の奴は、私の命を狙おうとした。

それはアズローの幹部サクサージェが別の組織のメンバーに指示したことみたいだ。


コンファルはバタカンチンの教皇庁<きょうこうちょう>から来た。


彼いわく私は水月<すいげつ>の女神アミドラルの生まれ変わりである力知<りち>の女神アルアテナの魂を持っている。

復活の儀式には私の命が必要なのだと。


しかし邪神サクサージェは女神に復活されると都合が悪いらしく、私を消そうとしていたそうだ。


それってどっちにしろ私の命は危ぶまれているよね。


まあ、すぐにどうこう敵が攻めてくるわけじゃないだろうけど――――――


◆遊び


「アクアルナ」

「フェルシ先生!?」


教室の外で彼とばったり会った。なんてラッキーなのだろう。


(なにか話すこと……そうだ!セレブ妻プランのためにはこれを聞いておかないと)


「フェルシ先生は奥方様はいらっしゃるんですか?」

「……いないが、どうしてそんな質問を?」


(やばい)


どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。


「変なこと聞いてごめんなさい!」


立ち去ろうとすると、フェルシ先生に壁に追いやられてしまった。


(あれ私まさか、憧れのセレブ様に抱き締められているみたい!?)


「アクアルナ」


フェルシに名を呼ばれ、慌てふためくアクアルナ。

そこへ生徒達がやってくる声がする。


フェルシは壁から放れると、振り返ることなく去った。

力の抜けたアクアルナはしばらくその場に座りこんだ。


どうしようフェルシ様にカベドンされちゃった。彼は間違いなく私をもてあそぼうとしている。

頭冷やして冷静にならないと!


学園の周りを一周して、さっきのあれは忘れることにしよう。


あ、なんか視界にダンボールハウスと見覚えあるホームレシュがいる。

見ないフリしつつ校門に入る。

あれは以前窓ガラスにへばりついていた人だと思う。

まあそれはいいか―――


◆双子


「ミス・アクアルナ」

「あ、なに?」


ミューテァロギアンが私を呼ぶなんて珍しい。


「臨海学校の写真なんだが」

「え、どれどれ?」


いつのまに写真撮られてたんだろう。ミューティロギアンに近づく。


「なんかあの二人って……」


するとなにやら一部のクラスメイトが私たちを見て、ざわついている。


「なんだお前たち」


ユベリスがクラスメイトを訝しんで、理由を問う。


「いや、なんか二人ってキョーダイみたいに似てるなーって」

「同じマキュス星人だからな」


たしかに柔らかな癖のある水色の髪はマキュスの特徴だ。


「なるほど、成績はともかく同じ星生まれなら似てもしかたないよな」


――【赤と青の対立】


テレビでお菓子のCMをやっていた。


「二人は茸<キノエビアン>と竹ノ子<タケノコォ>、どっちが好き?」

「キノエビアンだ」

「タケノコォに決まっている」

「オレは間をとってスギノッコで」


「さすがは味オンチのマキュス星人だ。キノエビアンの良さがわからないか?」

「人気がある多数派<ボルシェピキ>はタケノコォだ。数値が出ている」

「数が多いからといって美味とは限らんだろ」

「争いはやめて!」


「お前はどっちなんだ!!」

「選べ!!」

「そっそんな……」

「まあまあ、落ち着いて、シチウライスの話しようよ」

―――――――


別の話題に切り替えたのでなんとかキノタケの論争はおさまった。

また争いが起きたのは言うまでもないが、私は食べられるならなんでもいい。


そこらを歩いていると、コンファルが学園の離れにある聖堂に入っていくのが見えた。

あとを追いかけてみよう。


―――【象の女神】


聖堂内は像が左右に14の女神と14の男神で別れていてアソジエとアソジオンの間にいるのが軽々しく名を口にしてはならない神様。


彼はなにやらお祈りをしている。まあバタカンチンの人だから神様に祈るのは普通か。


「入ったら?」


祈りをやめたコンファルに呼ばれた。


「え、うん」


私は女神像をちらちと見てみる。


「あれが女神アミドラル。その隣がアルテアナ」


コンファルが教えてくれた。弓を持つ女性、癖のあるアミドラルの髪はマキュスの女神らしい。

アルテアナはサラリとした髪で、剣をかかげている。


私が彼女達の生まれ変わりなんて、言われても信じられない。


―――【命の水】



昼休みも終わり、授業が始まった。


「今日は水魔史の勉強ですね」


水の星とされるアクアルドは水に沈む前は建物があり美しい国であった。


氷海<ひょうかい>の星ネプテュスはかつて海があり暴風によって凍結するまで、人魚が住まうアトランティーアがあった。


―――人魚はどうなったんだろう。


「――で噂ではネプテュスの海底には古代遺跡が沈んでいる。という話もあります」


財宝はないのだろうか?


「人魚って美人かな」


クラスの誰かが言う。


「いくら美人でもあの足じゃ陸地に上がれないだろうな」


人魚が海から出たら干物になっちゃうよね。オツマミのアジィの開きは美味しいんだろうなあ。

――――


「あ、ルネークス先生」


一リッターのボトルで水をガブ飲みしている。


「どうかしました?」

「水が好きなんですか?」

「ネプテュス星人の主食です」

「へぇー」


ネプテュス星人は水で生きてるんだなあ。


「ルネークス、来週の授業に使うζの資料を…」


ルネークス先生のうしろ側からやってきたのはフェルシ先生だった。


「どうぞ」


ルネークス先生がすっと資料を渡し、ペットボトルを縮小させゴミ箱へ投げる。

しかし、的を外すとひろって入れた。


「じゃあ私いきま……」

「アクアルナ、待つんだ」


逃げようとしたのに、フェルシ様に呼び止められてしまった。


「な、な……なんですか!?」

「明日の休み、私の屋敷においで」


距離が近くなり、耳元でそう言った。


「え?」

「良いことを、教えてあげよう」


フェルシ先生は私の手に古びた鍵を乗せ、つよく握らせた。


――【本と扉と鍵と】


翌日になり朝からバッチリおしゃれしてフェルシ先生の屋敷へ向かう最中、ユベリスと遭遇。


「お前がここにくるとはめずらしいな。それに」

「そうだね!でもなんでもないよ!」

―――――


着いて早速入り口の周りは白の格子状の柵、黒い植物の生えた広い庭が視点に入った。

屋敷というよりは別邸のようだが、烏のように黒い壁で出来ている。


柵と邸宅の木製のドアがひとりでに開く。暗闇から現れたフェルシはアクアルナを出迎える。


「よく来たね」


内部は赤い絨毯と甲冑、まるで古城のような作りであった。


「あの、フェルシ様……この鍵って」

「この本を開く鍵だよ」


フェルシは棚から徐に本を取り出すと、アクアルナに手渡す。


鍵穴のついたハードカバーのそれは、ずしりと重いなにかがある。

それは本の重さよりも、また別のなにかだった。


「その鍵で、本を開いてみせてくれないか」


なぜ鍵を持っていながら、フェルシが自身で開けないのかアクアルナは訝しむ。


(私はこの本を)



【開けられる】

【開けてはだめだ】

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