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ユベリス ルート

マージルクス出身・ユベリス。

学年一位で貴族家、金もある彼は間違いなく優良物件だ。


この機会を使いって、彼にアプローチをかけることにしよう。

そんなことを考えていると―――――――――


「おい」

ユベリスが後ろにいて、話しかけてきた。


「ユベリス! どうしてここに?」

なんだかわからないけどラッキー、これは神様がくれたチャンスに違いない。


「これから肝だめしをやりに、ミュータントギアやコンベアと洞窟に行くんだが」

「私もいく!」


数合わせってことか。私、めげないわ!!

――

「あーあ……」

臨海学校で特に距離を縮めることはできなかった。


「なにをしている」

私が悲観にくれながら登校していると、ユベリスが金色の雲に乗って飛んできた。


「なにそれすごーい」

―――なんでそのチョイス。ホウキかせめてスケボーでよくね、奇をてらいすぎだろ。と言いたいが、レディらしく口を慎む。


「本当は絨毯に乗りたかったが、派閥が違うからと周りに止められてな。しかたなく初めて見たこれにした。親戚にこれを乗り回す奴がうじゃうじゃいるから見よう見まねでやったらできてしまった」


自慢でもなく悪気無しに素で言っているのだろう。それがわかるから逆に鼻につく。


「へー、さっすが天才。出来ないことなんてないんだね!」


「まあこの俺に出来ないことは芸術家のように何かを作ることだな。」


「へーユベリスにもできないことなんてあったんだ」

「俺は生まれた環境こそあれ、昔から生成や構築より、破壊や消滅のほうが好きだ」


ああ、マージルクスは戦闘部族や軍が主体だからしかたないか。


「!」

―――フェアリーベルが鳴った。


「はやくいかないと!」


――――



「おや、二人とも、一緒に登校なんて珍しいですね」

ルネークスがニヤニヤと笑っている。


「先生、授業を始めてください」

クラスメイトBが冷ややかな目で言った。


「……はあ、どこか遠くの星に行きたい」

先生はいじけながら魔本を開く。



「今日は合同で授業をやります」

「え?」


合同授業ってこの前やったばかりじゃ――――――


「はーいチーム戦を開始します」

――――


チーム戦も終わってお昼。


1コエマドゲルポも無いので昼は水のみ。


公爵にあわよくば恵んでもらおうかと思ったらみあたらない。


ユベリスにお弁当恵んでなんて、そんなこと恥ずかしくていえない。


「ユベリス~お弁当恵んで(いっしょにお弁当たべよう)」


あれ、本音のほうを言っちゃった。


「飯は水か、さすがにかわいそうだが断る」


「ユベリスって貴族の坊っちゃんなのになんでそんな倹約家<ケッチ>なの?」


「マージルクス星は王族から平民まで家庭で歩合制だからな。

王族は民から金をもらわないし、支給もしない」

「へー」


「自分の食いぶちは自分で戦って稼げと教えられた」


それ国家いらなくない?

――――


なんやかんや王子に求婚された私は、色々大変な目にあったけどなんとか逃げた。


だけど、チンピラに銃を向けられピンチ。



「貴様のような悪党には、オレが引導を渡してやる」


―――ピストルが弾き飛ばされる。


「ユベリス!」


私は敵からはなれ、ユベリスの元へかけ寄る。


「間に合ってよかった……」


ミューティロギアンやコンファルが反対方向からやってきた。


「みんな、たすけに来てくれたの!?」

「ああ、ユベリスがどうしても行くと聞かなくて」

ミューティロギアンがやれやれ、眉を下げて言う。

「おい……」

「まあまあ、そういうことにしといてやりなよ」

ユベリスは反論しようとするがコンファルに制される。


私は彼等と無事に帰れた。


―――昨日からユベリスの顔を見ただけで、ドキドキするようになっている。


―――これって恋だよね。よし、決めた。

私ユベリスにアタックする!


「ユベリス~どこに行くの?」

休日に学園を出る彼を追いかけた。


「マージルクスに行って、仕事をするだけだ」

「仕事?」アクアルナは首をかしげる。


「狩りだ」とユベリスは言って先に進む。

「待って!私もユベリスの仕事みたい!」

アクアルナは小走りし、なんとかユベリスの隣へ追い付いた。


「なんでこんな隣歩いてるんだ?」

「後ろに立つなって前に言ってたでしょ?」


ユベリスはアクアルド星の洞窟での記憶を思い起こす。


「よくそんなことを覚えてたな」

「たまたまだよ」


「お前みたいなスイーツプリンが狩りなんて観てもつまらないだろ」

「うん。でも行きたい」


「変な奴だな」


パパッとマージルクス星に着く。転送装置は便利だなあ。


「あ、私シャウロンポウって食べたことないんだよね」しかしコエマドゲルポがなかったので諦める。


「金が無いならギルゥドから仕事でももらえ」

「私マージルクス星人じゃないけど、いいの?」


というか私はマージルクス星人から憎まれるマキュス星人なんだけど。


この世界は伝説によるとかつて五つの宇宙がひとつになった。

その中でも右宇宙<ライト>神と左宇宙<レフト>神は

いがみあっていた。

なんとなくいまのマージルクスとマキュスのような話なのだ。


基本的に両利きの多いこの世界だが、伝説の名残かマキュス星人は右利きよりが多く、マージルクス星人は左利きよりが多いという。


それはマージルクス人の心臓が右にあるからみたい。最近の教科書にのっていた。


「問題ないだろう。外部からの傭兵だってあるからな」

「そうなんだ。でも今回はユベリスの戦いを観ることにする」


「着いたぞ」

――――酒場。なんかのゲェムで見たことある感がする。


「ドラク「言いたいことはわかるが言うなよ」


酒場もといギルゥドに入る。


「仕事を」


ユベリスがもらった仕事は土龍<アーシェドラゴン>退治のようだ。

ちなみに土龍とは土竜<モグーラ>が巨大化したものである。


移動先は広い大地。沢山暴れている。

私は遠くからユベリスを観察しようとしていたが、うかうかしていたら土龍にやられる。


一応は身を守るために、剣を持ってきていた。

二年前お祖父様が亡くなった後、渡されたもの。


ただ、これは抜こうとしても強い魔法がかけられていて抜けない。


魔法はかけたものが死ねば消えるものだが、消えていない。

さすがは最高位魔法使いであるサンドルマ。


―――父アルドナンドいわく、必要なときに鞘が外れるようにしてあるらしい。

でもそれ、抜けないほうが安全じゃない。


ユベリスは私が考えている間、3匹は駆ったようだ。

――すごいなあ。こんどは見逃さないようにしよう。


あ、ユベリスの後や前から迫っている。


だけど仕事の邪魔だって言われそうだし。男子ってこういうの怒るから余計な手は出さないでおく。


ユベリスは回避して、火炎魔法からの水魔法の同時発動でスチームをおこす。


ユベリスはノルマを終えたが、汗一つかいていない。


「おつかれ様ーすごかったよ!

とくに後ろに迫られていて、それでも回避してて」


「……ちゃんと見ていたのか。てっきりぼーっと砂でも食おうとしていたのかと」


ギルゥドで報酬をもらい、それからユベリスは風呂に入ると言って私と自家の屋敷に来た。


なんか周りからざわざわされたけど、マキュスだからかな。


「あ、あの……」

「お話させていただいてもよろしいでしょうか?」

――若い女中が二人私に声をかけてきた。


「もちろん」

「もしや貴女はユベリス様の恋人なんでしょうか!?」


――興味津々すぎ。


「まさか……私はともかくユベリスは友達とすら思っていないんじゃないかな」

「そんなことないと思います。ユベリスぼっちゃんはまずお屋敷に女性を招かれるなんてされません」


たしかにユベリスが女の子どころか男友達であっても連れてくるのは想像できない。


―――なんだかちょっと優越感。



ガチャリ。ノックも無しに入る――ユベリスかな?


きらびやかなドレス、さらりとしてまっすぐ長い赤髪の女の子。


「ユベリスの愛人ですって?」

「あ……」


女中たちはサーッと退室した。


「貴女は……」


「ユベリスの許嫁、マージルクス星・第6王女フィルよ」


許嫁、王女――――?



「貴女、ユベリスのなに?」

品定めするような目。


まっすぐな赤い髪、王女にたいして癖のある水色の髪、貧しい下級貴族。


生まれた星も、私とはなにもかも反対。


ユベリスが遠すぎる。行こうとすれば互いの星には簡単に行けるのに。


――私は一人で学園に帰った。

恋人なんて舞い上がって馬鹿じゃん。




―――登校時間、ユベリスがいないか見計らいながら歩く。


ユベリスはいないようだ。なぜ昨日帰ったか、と聞かれたら気まずいし。


―――なんて、ユベリスには似合いの非の打ち所がない許嫁がいるんだから、そんなこと気にしてもしかたないか。


まだ少しだけ淡い気持ちが残っているのかな。


「アクアルナ」


―――背後からユベリスの声がする。けれど、振り向けない。


私はそのまま教室へ駆け込んだ。


しばらくしてユベリスが教室に入る。私に声をかけようとしたが、すぐに授業が始まった。


休み時間になると、私はユベリスを回避した。なんでこんなに追いかけてくるのだろう。


「なぜ避ける」

「そっそっちこそどうしたの?」


あくまで素知らぬ顔で、ユベリスに向き合うふりをする。


「お前は昨日、一人で帰っただろう。具合でも悪いのかと心配した」

「……大丈夫だけど、健康だけが取り柄みたいなものだし」


――心配してくれたんだ。それは嬉しいけど、もう。

―――ううん。最初から期待してもどうにもならない相手だったじゃない。


「ありがとう。言わないで帰ってごめんね」

「……やけに素直だな。なにか悪いものでも拾って食ったか?」


「やだな、拾い食いはいつものことだよ!」

「あ……おい」

―――――


次の日、ユベリスは道を歩いていない。教室へ入ると彼はいた。


彼はいつもと変わらないけど、なんだかまだ気まずい。

私どうしたんだろ。こんな頭使って悩んだりしたことないのに。



―――ドガアアアアアアアアア”


グラウンドでとても大規模な爆発音がした。



黒い煙がもくもくとあがっているのが窓から見える。

野次馬たちがグラウンドへいくと、パタリパタリと倒れていく。


煙が姿を消すことなく、霧となり、学園を覆い尽くした。


「いったいなにがおきてるんだ!?」

「どうしようチイユ星への番号は!!?」

ミューティロギアンやクラスメイトFが慌てている。


あいていた教室の扉から、黒い霧が入る。


「みんな!霧を吸うな!」


教室内はパニック状態。しかし、抵抗むなしく、教室内には黒い霧が充満した。


ユベリス、コンファル、クラスの皆が倒れていく。


「ユベリス!」

私は彼を抱き起こした。体が普通よりより暖かい。微熱のような症状がでているのだろう。


「ハチ.イ.チゼロ!もしもし!ケーサツですか!?」

ミューティロギアンはチイユ星へ連絡したのだろうか?

というか私とミューティロギアンはなぜか霧の中でも平気。


「ここにもいたぞ!」

「あ、貴方たちは!?」



どうやらマキュス星人はウイルスや薬品にたいしての抵抗があるらしい。


チイユ星に私達意外は皆、搬送されてしまった。


「いったいなにが起きたのか、それを突き止め解決するのは我々しかいない」

マキュスの王子カーズがとりしきる。



―――ユベリスや皆を、はやく助けたい。


「アクアルナはネティシアとウイルスに対する薬を」


「はい」



「学園長を除いて彼等には揃って幻覚と微熱があるらしいわ」


「それならケッカーァクとパラノニアにたいして有効な物質を融合させれば……」

「そうね」


なんとか仮の薬はできたので、チイユ星へ持っていくことに。




「こちらでもその薬をつくってはみたが、効果がなかった」

「そうですか……」


まあ、当然だよね。渡された成分表の紙を受けとる。

ピリッとした痛み、指の先が切れた。


「あら、貴女マキュス人なのに濃いめの青血なのね」

看護婦<ナァス>が言う。ユベリスの、マージルクスの血は赤なのにますます違いを認識させられた。


はやく止血しないと、看護婦さんが手当てしてくれる。


「ちょっとこの血調べてみてもいいかしら?」

「え、いいですよ」


タダで健康診断とかむしろありがたい。



「この血……」

「ああ、医学界に伝わる……」

―――


「……」

眠る彼の顔を見ていると、看護婦さんは薬が出来たという。


それを投与すると、嘘のように回復し始めた。


「俺は……?」

「大丈夫なの?」

「ああ」

「よかった……」



嘘のように皆は元気をとりもどしたが、結局誰があのウイルスを学園にまいたのかはわからないままだった。


街には被害はまったくないのもひっかかるが、ただの学生の私達には関係ないし、関わるべきではないと教師も行っていた。


「ユベリスー!!」


赤い小惑星のごとく、めっちゃ高速でなにかがユベリスに突進していく。

それをさっと避けると、目を少し見開いた。


「……フィル王女殿下?」


きっとユベリスが病院送りになったと聞いて、心配で見に来たにちがいない。


「わたくしお前が倒れたと聞いて心配で来たのよ」

「……そうですか殿下。申し訳ありません」


口下手なユベリスが、頑張ってしゃべっている。


「……なにみているのよ」

「なっ……なんでもないです~」


「あなた……金銭目当てだと思って捨ておいたけれど――――

ユベリスに気があるのね!」


この前の品定めするように、見下した目とは違う。



「許さない!!」


――――フィルは即座に抜刀した。


「……!」


キィイン”それを青白<せいはく>の剣が受け止める。


「な……(私の剣を防いだ!?)」


アクアルナはフィルを睨む。相手が王女だろうと、もはや関係なかった。


「……」

ユベリスには、己の記憶にはない者の姿がうつった。


フィルは一瞬怯むが、眼力を強め、冷静になる。この場で戦うのはダメだと剣を下げた。

アクアルナも剣を鞘に納める。


「いずれ正式にあなたに決闘を申込みます」


そういって学園を去った。


あれからユベリスとは言葉を交わしにくくて、私は寮へ。


翌日の学園内のゴシップ新聞で私とフィル王女がユベリスを奪い合ったと大々的にとりあげられていた。


新聞部の部長で唯一の部員でカメラマンのラヴィーナである。彼女もマージルクス人らしい。こんな記事をかくなんて……


―――いっけなーい。さついさつい!

―――



「おい」

「うわユベリス」

「俺がはっきり説明しなかったばかりに、すまない」


――あのユベリスが私に謝ってる。私は気にしていないし、そんなことしなくていいのに。

だって貴方を好きだと思ったのは本当だから。


「ユベリス、私気にしてないよ。なんにせよ売られた喧嘩は買うだけ!」

「……」


――彼がフィルのことをどう思っているのかわからない。それに私はフィルと戦って勝てる自身がない。

だけど、戦いから逃げたくない。勝ってユベリスに想いを打ち明けよう。



――――決闘の当日、公平なジャッジのため、ジュプス星へいく。フィルがあとからやって来た。


「貴女は命をかけられるほどの想いが、ユベリスにたいしてあるかしら?」

「さあ?命をかけるかなんて、その時によるんじゃないかな。とにかく、私負けないから!」


階段を使ってリンクへ上がる。


「本当に戦う気なのね」


フィルはニヤリ、リンクに飛び上がる。一瞬軸足がブレたかと思ったが、すると勢いよく剣を抜き、ケースを投げ捨てた。


私も剣を抜いて、フィルのいるほうとは反対に周りながら、タイミングを図る。


怒りのこめられた剣。それを受け、力を入れて向こうへとばす。それでもフェルシ先生よりは弱い――――彼女は無駄な力をかけているため、じきに消耗するだろう。


だんだんフィルの動きが鈍ってきた。

足元がぐらついていた。どうやらあのときの着地で、右足に軽く怪我をしているようだけど――――


それを狙えば勝てるが、ズルはしたくない。


「貴女はなぜユベリスが好きなの?」


問われて一瞬ひるんでしまった為、不意をつかれた。


「くっ」


フィルの刃が迫りギリギリのところを剣で止める。危ないところだった。


―――からり、フィルの手から剣が落ちた。


「負けたわ……貴女の勝ちよ」


そう言って、リンクを降りていった。私はぽかり、としたまましばらくリンクに座っていた。

ユベリスに告白しようかと思ったけれど、いざとなったら気がひけた。

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