表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツキノシンワ  作者: 沙槻*゜
第零章
1/2

都会から少し離れた閑静な住宅街より、さらに奥。

鬱蒼とした木々に囲まれた平屋の屋敷。

その瓦屋根に単調な音律を響かせながら降り続く雨。


時季は夏に差し掛かる頃。

久々に降る雨である。ここ数日、茹だるように上がっていた暑さを少しばかり和らげるかのよう。


しかし、そんな雨を忌々しげに見る人物がいた。


年の頃は二十代前半であろう女性。漆のように深い黒髪は腰に届かない程度まで長い。白い単衣に淡い青の羽織を肩に引っかけており、よく黒髪が映える。

外を忌々しげに見る瞳は深い蒼。首には桜の花弁ととんぼ玉があしらわれた首飾りがある。


彼女はこの屋敷の主である月夜。


「・・・最悪ね。今日は出かける用事があるのに」


女性にしては多少なりとも低い声音で紡がれた言葉。

今一度、雨が降り続く様子を一瞥し、深く息をついた。



あれから、どれ程の時が流れたのだろうか。

長い時が流れた分だけ、私は成長できたのだろうか。

偽善という名の刀を持ち、罪なき人々を罪とし、血にまみれた姿。

こんな姿でも、貴方は・・・ーーーーーー。


「・・・っ何をいまさらになって・・・」


まだこんな感情があるなんて・・・。


ふっ、と自らを嘲るように笑い、頭を振る月夜。

くるりと身を翻し、彼女は奥へ進む足を進めた。



雨が降るといつも思い出す。

貴方と出会い、別れた日を。


望まなければ失うこともなかった。

けれども。

求めずにはいられなかった。

全てが過ちとなってもかまなかった。


たとえ貴方が望んでいなくとも。

たとえ貴方が赦さないとしても。

それが報われない想いだとしても。



私は、貴方を・・・・・・ーーーーーーーーー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ