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エンペラー  作者:
30/32

29話 秘策~ひさく・密かに練った策略~

 ファミーユからやってきたゲンさんこと高田弦八。


 すったもんだあり、丸さんと意気投合?したのかそうでないのか判断につきかねるが、おおむね仲は良好。

 2人で肩を組んで部屋を出て行ってしまった。

 僕はゲンさんの模型を改めて見ながら考え込しまう。

 だってゲンさんは人見知り?と言うか、話しづらい感じがする人なのでとても心配したのに……なぜ?と思ったからだ。


 翌日、静香さんにファミーユの事を報告しに行ったとき答えを教えてくれた。

 でも僕的にはますます分からなくなったけれどね。


「それは勇気がそこにいたからですよ。

 それにしても、丸山さんは良い事を言いましたね。ゲンさんも私も勇気に暖かい方へ連れてきていただきました。連れ出してくれた世界はとても暖かいですよ。

 こんな私にも生きても良いのだと言っていただきました。きっとマムもゲンさんも当麻も、同じ感情を持つと思いますよ」


「静香さん……そ、そう言えば当麻さんはどうされたのですか?」


「当麻ですか?彼は新人教育をしていますよ」


「新人……教育……ですか」


「確かファイアー焚き火とマグニチュード……5ですかね。教育的指導をしていますよ」


「教育的指導ですか。大丈夫なのてすか!能力もないのに!!」


「大丈夫でしょう。能力も低いですし、問題ないですよ。

 ただ……病院送りにはしないでいただきたい。わざわざ病院に職員を派遣しなければならなくなります。面倒ですね」


 当麻さんのことは心配しなくてもいいのかと思ったけれど、静香さんの表情から読み取ると……問題なさそう。

 それにしても、職員を派遣って静香さんはここで何をしているのやら?


 でも丸さんの『暖かい場所』には今だに釈然としない。

 僕はただ…寂しかっただけで、みんなが笑ってくれたら僕も笑う。みんなが泣いていたのなら僕も泣く。

 暗い部屋で泣いていた僕を引っ張り出してくれた人がいたから、今度は僕が引っ張り出す!そう想っての今の僕なのだけれど……。

 それが丸さんや静香さんが言う『暖かい場所に連れだしてくれた』になるのかと思うと、何だか恥ずかしくなった。

 人の褌で相撲をとってしまったような感じがする。


 そんなことを考えているとドアが大きな音と共に勢いよく開いた。


「杏が来てるんだって!」


「杏ではありませんよ。勇気だけです」


「なんだ!勇気だけかよ」


「すいません……」


「勇気、気にすることありませんよ。それより当麻!あなたがなぜ?火傷を?」


「だって!あいつら連みやがって!捕まった場所も経歴も違うくせに幼なじみでやんの!」


「だから……攻撃を受けてしまった……と」


「そう言うなよ!悪かったよ!ちょっと火傷したたけじゃんかよ~。

 はぁ~俺には厳しくねぇ?まぁ~そんな事より何かあったのかよ」


「はい実はですね。ですがその前にコレで冷やして下さい!後が残りますよ」


 そう言って僕は拳ほどの大きさの氷を出して当麻さんに手渡したが受け取ったのは静香さんだった。

 その氷を汗を拭くために持っていたタオルで包み当麻さんに渡した。


「ご自分で砕いて患部に当てて下さい。せっかく勇気が出していただいたので、しっかりと冷やして下さいよ。そんな事より杏がとても頑張ってくれたようですよ!」


「マジかよ!……で何したんだよ!勇気!教えろ!」


「は、はい!」


「そんなに急かさなくても私が教えますよ。杏がファミーユの為に頑張ってくれたようです」


「はい、杏と所長がファミーユを研究所の系列グループにして、国からの援助金を受け取れるようにしてくれたようです。僕は何もしていません。僕は………ナポレオンを捕らえる事しか頭になかったようです。すいません…」


「そんな事ありませんよ。杏には杏の、勇気には勇気の、やるべき事をしただけだと思います」


「そうだぜ!勇気!お前にしか出来ないことをやったぜ!あのマムを口説き落としたんだろう!すげぇよ!」


「……それも杏……です。

 僕はマムに何をどれだけ話して良いかわからず悩んでいると杏が突然、お礼を言い頭を下げました。彼女はただ純粋な想いで当麻さんと静香さんの助けてくれたお礼を言っただけだと思いますが、僕には“差別はダメよ!信じて!”と言われた気がして……僕はマムに全てを話しました。杏のおかげですね……すいません」


「杏はじゃじゃ馬ですね……ですが、とてもとても優しい子ですね」


「おう!でも昔は引っ込み思案で俺の影に隠れるような女の子だったんだぜ。まぁ~内弁慶で家の中ではじゃじゃ馬だったけどなぁ! ぎゃっはっは~」


 当麻さんは話をいったん切って静香さんと顔を見合わせニタニタと含み笑いをしたあと声を揃えて……。


「勇気も大変だなぁ!」

「勇気も大変ですね!」


 そう言ってまた2人はニタニタ顔を続け、僕は何の事がわからずに間抜け面をしていた。

 そんな僕の肩をポンポンと二回叩いて“頑張れよ!”と目で語られてしまったがそれでも僕はまだ分からずに間抜け面をしていと、ニタニタ顔を通り過ぎ大笑いをしていた当麻さん、後ろを向いて笑いを噛みしめていた静香さん、いまだに間抜け面の僕……はぁ~何をそんなに笑っているんだ?何を頑張るんだろう?と不思議な顔をしている僕に、やっと笑い終えた静香さんが思いもかけずに重要な事を話し出した。


「そう言えば勇気、少し考えたのですが……あくまでも私と当麻の案として聞いて下さい。

 当麻!いつまで笑っているのですか!」


「悪りぃ~」


「まったく!調子にのり過ぎですよ。

 それでですね。勇気……何事にも最悪の事態を考慮しないといけません。そこで一つの提案なのですが、ナポレオンに対峙するときは私と当麻と勇気の3人で当たりませんか?

 エンペラーの能力者である勇気は絶対に必要です。ですがそれ以外の能力者はナポレオンの餌食にされてしまう可能性があります。そこで能力が無い私と当麻なら勇気の邪魔にはなりません。

 なに、大丈夫ですよ。能力に頼りきっている人など、たとえナポレオンと言えども私と当麻の敵ではありません。

 それと……もし……勇気がナポレオンの餌食になった場合、私と当麻を含めて射殺して下さい。どうせ周りにSATが配置してあるのでしよう。ナポレオンを取り逃がすのは後々面倒です。最終手段として考えといて下さい。勇気は必ず私が守ります。必ずです。

 それではもう時間ですので今日はこの辺で。あまり遅くなると所長さんも心配なさるでしょうから。気を付けて帰ってくださいね。では当麻、行きますよ」


「おう!杏によろしくな!」


「は、はい……でも!!ちょっと待ってください!」


 と呼び止める僕を置き去りにして、当麻さんと静香さんは笑いながら僕に手を振り自室に帰って行ってしまった。

 その姿はいつもと何ら変わりのない様子だったのに最後の最後に爆弾を落とした。

 僕は突然の提案に理解が出来ずに混乱しながら静香さんからの話を持って研究所へ戻った。


 その夜、みんなが寝静まった頃まだ仕事をしていた所長に静香さんの提案を相談したが、僕自身の結論はまだ出ない。


「……所長、どうしたらいいのですか?

 さらに静香さんがー勇気にいただいた命です。勇気のために使わないでどうするのですか。そもそも死刑で終わる命だったのですから、勇気や杏のために私や当麻が死んでしまってもいいのですよーそのようにも言っていました。

 僕は……僕は……静香さんも当麻さんも大切な仲間です!死んでほしくはありません!僕だって死ぬつもりはありません!でも……静香さんの言っていることは正論です。

 僕、意外の人はナポレオンと対峙しない方がいいと思います。だからと言って能力を持たない静香さんと当麻さんと一緒に対峙するのは違うと思います!しかも僕がナポレオンの能力を奪いそこねてしまうと静香さん達も一緒に射殺するだなんて……」


 僕のワナワナと震え混乱してしまった。

 そんな震える手に所長の手が優しく包み込んだ。

 僕を椅子に座らせ、さらに声を落として諭すように話し出した。


「勇気……2人を信じよう。きっと勝算あっての発言だと思うよ。

 正直言って私にとっては、とてもありがたい提案だね。彼らのおかげで、被害が最小限で済むから。もちろん最悪の結果にならないように最善の策は講じるよ。勇気……彼らを信じよう」


「所長……」


 僕は悶々としながらも所長の“彼らを信じよう”の言葉に納得せざる終えなかった。

 そしてみんなの命を守る“最善の策”にとりかかった。


 まず最初に取り掛かることは、いかにナポレオンを逃がさないようにするか!

 だが……どうしても網、以外考えが及ばず電気が流れる特殊合金の網を作った。

 水にも火にも切れる事はなく燃える事もない、素晴らしい素材なのだが氷には弱く、凍ってしまとボロボロに崩れてしまう。

 でもアイスを持っているのは僕なので問題なしと判断された。

 ナポレオンが侵入して来たら国会議事堂全体にこの網がかかる。

 どうせ窓を壊し派手に登場するに決まっているので、建物の周りに足場を組んでいても気がつかないだろう、と言うことになった。


 次にマグニチュード対策についてだけれど……ゲンさんと竹井さんが喧々囂々しながら耐震対策をしていた。

 ここで面白かったのが、見事なまでの丸さん緩和剤効果。

 丸さんがゲンさんとみんなの緩和剤をしたり繋いだり連結したりと八面六臂の活躍だった。

 さらに丸さんとゲンさんの仲については……。

 まるで幼なじみのような仲に研究所のスタッフやファミーユのマムも驚いていた。

 僕の知らないところでちゃっかり証明するモノに名前を彫ってもらったらしいし、ファミーユの出入り自由券を獲得していたようなんだよね。

 丸さんの行動力は凄い!でも安心した。

 僕と杏だけが接点ではなく丸さんもファミーユとの繋がりを持ってくれたことは正直、嬉しかった。

 ファミーユにはもっともっと近くに来てほしいと思う。

 側に来て僕たちも一緒に守りたい。

 悲しみも苦しみも一人で抱え込むには重たすぎるよマム……僕たちも一緒に抱えるよ。

 僕はマムに少しでも寄り添えたのなら嬉しいよね。


 ちなみに丸さんの証明するものは……眼鏡。

 ゲンさん曰く。


「掘れるけど小さいわ!」


 左のテンプルの内側に掘ってもらったそうだけれど、とても細く大変だったらしい。

 でも……丸さんって視力はいいはず……まぁ!いいかぁ!


 僕たちの安全な秘策はナポレオンに通じるのか?

 そんなことはやってみなければ分からない。

 でもやらなければ終わらないし守れないよね。


 みんなで団結して対峙する時がすぐそこまで来ていた。

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