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エンペラー  作者:
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21話 雷神~らいじん・雷を起こすと信じられている神様~

 重森さやかさんの話を聞いて色々と分からないことが出てきた。

 まずはさやかさんの真の目的とは何なのか?

 もちろん翔に関係した事だとは思うのだけれど‥‥何だろうね。


「‥‥それからは慎吾と2人で調べたの。

 写真があったので調べやすかったけれど‥‥結局、会ったのは1回だけだったわね。

 今年に入るまではたいした成果もないままに過ぎていったのよ。

 そしてアノ国会議事堂での事件ね。

 その事件であなたの名前がわかったのよ。

 こんな感じでいいかしら?

 これから先はわかるわよね?」


「はい‥‥わかります。僕がナポレオンに会う2年前に会っていたのですね」


「会うって言っても一方的だけどね。でもファイアボールで穴を開け、フライで飛んで逃げたときは驚いたわ」


「それはそうと、さやかさんはなぜ皇帝を知っていたのですか?」


「あぁ~それはね‥‥わかるかしら?

 約100年前にあった“革命”って‥‥わかる?」


「はい!わかります。皇帝の能力を駆使し、能力者の地位と権利を得た革命とは名ばかりの内紛です‥‥よね?」


「なかなか厳しい事を言うわね。まぁ~その通りなんだけれど。

 私の祖父が革命軍の生き残りで日記にその時の状況を書いていたのよ。祖父は頑固で偏屈な人でね。でも私には優しい祖父だったわ。95才で亡くなったの。形見分けに日記をもらってね。その日記に書いてあったのよ。

 初めは何だかわからなかったのだけれど慎吾の話を聞いて思い出したの!記憶力には自信があるの!」


 と可愛くウィンクをしてくれた。

 ちょうどその時、玄関先で大きな声が響いてきた。


「すまない!砂竹だけれど、ここに重森さやかが来ていない?」


「え?重森さんなら来ていますよ。応接室で勇気と話しをしています‥‥ちょっと!慎吾さん!」


「さやか!何でまた先走った!俺があれほど‥‥」


「も~慎吾さん!先に行かないでください!」


 応接室の扉を勢いよく開けながら慎吾さんが入ってきた。

 その後を追いかけて杏も入ってきた。


「慎吾さん?」


「も~慎吾さん!」


「あら!慎吾じゃないの。どうしたの?」


 と3人がバラバラに慎吾さんと対話してしまった。

 本人はたじろぎながらも受け流していただいた。

 流石、出来る男ですね。

 でもさやかさんにだけは厳しいような気がするが気のせい?

 本人はケロッとしたものだけれどね。

 慎吾さんも大変だ。


「どうしたの?じゃ~ない!

 あれほど言っておいただろうが、ちゃんと段取りと裏付けを取ってから会わせるつもりだったのに!お前は!」


「で‥‥裏付けはとれたの?」


「無理だ。起こるかどうかもわからないことに警察は動けない。

 気をつけろとは言ったが‥‥どこまで信じてくれたのやら?」


「慎吾さん、どうぞ座って下さい。杏、慎吾さんにお茶をだして」


「そうね!すぐ持ってくるから‥‥話すのは待っていて!私も聞きたい!」


「杏‥‥」


 実は杏もなぜ重森さやかさんが僕を訪ねてきたのかを知りたかったようだ。

 そそくさと冷たいお茶とお菓子を持参して現れた。


「ごめん‥‥勇気。とっても気になっていたの。私もここにいていい?」


「僕はかまわないけど‥‥」


 と言いながらさやかさんと慎吾さんを見た。


「俺はかまわないけど、さやかは?」


「私?そうねぇ~、基本的かまわないけど‥‥あなたは誰?」


「私は‥‥」


 さやかさんの言い方にトゲがあった。

 明らかに杏のことを警戒している口調だったけれど、どこか変だ。

 さやかさんの性格なら刺々しい言葉より攻撃するよりも、観察して見極めて判断する人のはずなのに。


 急いでる?


 何に対して急いでいるのだろうか?

 そんな事が分からない杏はカチンときたようだ。

 僕は慌てて杏の紹介を手短に分かりやすくした。


「彼女は知花杏と言って、僕にとって杏は‥‥さやかさんにとっての慎吾さんのような存在の人です」


「あ!なるぼど!」


 さやかさんは納得してニッコリ笑って杏を見た。

 その顔は敵対している顔ではなく友に向ける優しい顔だった。


「改めまして私、重森さやか。杏ちゃんね。よろしく!」


 困惑したのは杏の方だ。

 それでも僕が信用した人なら大丈夫と判断したのだろうと思う。

 差し出された右手を杏は取った。

 それでも杏と慎吾さんはキョトンとした顔だったけれどもさやかさんの笑顔に負けて杏は握手をしたようだ。

 笑顔に負けたんだね。

 やはり笑顔は最強だ。


 僕たちはやっと本題にはいれた。

 単刀直入に聞く方が早そうだ。


「さやかさん!僕にあなたの過去を視せるために来られたのではないのでしょう?

 僕に何の用があったのですか?」


「そうねぇ~本題に入りましょうかぁ。ここに丸山雷影と言う人がいるかしら?」


「はい‥‥いますけどそれが何か?」


「その人は丸山電工のご子息かしら?」


 僕は詳しくは知らなかったので杏を見た。

 杏は僕に“私にまかして”と言わんばかりの顔をして僕にうなずき話しをしてくれた。


「はい、その通りです。今は双子のお兄さんが家を継いでいるそうです」


「そうなの‥‥ねぇ!その彼に会えないかしら?」


「何故ですか?」


 そこまで言うとさやかさんは慎吾さんを見て、お互いうなずき話し始めた。


「今から話すことに確証はないの。でも私と慎吾は十中八九、間違いはないと思っているのね。

 勇気は慎吾の資料を見たから知っていると思うけど。

 能力がファイアー劫火、室井恵太の事故死とウォーター豪雨、花田晴彦の病死とアースマグニチュード9、大空葉月の病死のことは知っているわよね?」


「はい知っています。杏、ナポレオンが関わったと思われる事件だよ。詳しくは後からはなすよ。

 でそれが何か?」


「実はね‥‥これらの事故と病死が起こる1週間ほど前に市役所が窃盗の被害にあっていたのよ。でも盗まれた物も無くて派手に荒らしてあっただけなので警察に届けなかったようなの。

 ただ戸籍と住民票を見た形跡があったのね。今は個人情報で職員しか見られないようになっているのに‥‥そこを見た形跡があったのよ。

 で!本題はここから。

 つい3日まえ、品川区の市役所に泥棒が入ったの。これまでと同様に荒らされた形跡は無かったんだけど戸籍を調べた形跡があったの。で私ピントきたの!次に勝又翔コードネームはナポレオンだっけ?

 兎に角、狙われるのは丸山電工だろうと思ったの!」


「ちょっと待って下さい。何故?丸山電工に行き着くのですか?」


「はぁ~勇気‥‥赤子でも知っていることよ。

 品川には丸山電工の本社と豪邸があるのよ。それにファイアー・ウォーター・アース・スカイときて残るサンダーだけ‥‥ここまで言えば解るわよね!

 私が知る限りで最強のサンダーは丸山雷。雷と書いてあずまと読む彼だけよ!生きる雷神と言われた人ね。間違いなく次のターゲットは丸山雷だと思うわ。

 で!その孫である丸山雷影に何とかアポイントが取れないか聞きに来たのだけど‥‥とりあえず合わせてくれるかしら?」


 さやかさんは僕に向かって言っていた。

 でも僕はどうしたらいいのか悩んでいたら杏がおもむろに立ち上がり話し出した。


「今、呼んできます。後、所長に連絡と副所長の同席をおねがいします。いいですか?」


「え!も、もちろんいいわよ」


 さやかさんは杏が突然、仕切り出したので驚いた様子だった。

 僕が杏に相談するより先に杏が所長と副所長と丸さんに会う段取りを整えてくれた。

 正直言って助かったと思ったのは内緒。

 僕はどうしていいかわからず、目が泳いでいたと思う。

 杏が居てくれて良かった。

 すぐさま、粗方の説明を受けた副所長と丸さんが入ってきた。


「丸さん、事情は先ほど説明した通りです。で‥‥丸山雷さんに会えますか?」


「‥‥‥‥じぃちゃんには会えるが中には‥‥入れない。

 俺は‥‥俺は‥‥サンダーの能力が弱かったばかりに家族に捨てられた。アハハハハ‥‥」


 とんでもない事を丸さんはサラリと言った。


 確かにこの研究所にいる人達は何かしらの悲しみを背負っている事が多い。

 でもそれをおいそれと聞くわけにはいかないよね。

 誰にだって言いたくないものは話したくない。

 だって聞いているこちらも痛いからね。

 だから僕は丸さんの過去の事を何も知らなかったんだ。

 僕がキョトン顔をしているのを見て丸さんが笑いながら話してくれた。

 目は笑っていなかったけれどね。


「そうかぁ!勇気には何も言うてぇなかったなぁ。

 俺は家族に捨てられてこの研究所に来た。高校を卒業してすぐだったから18才かぁ‥‥勇気がココに来たときと同じ年のときに来たのかぁ。でも家族との仲は天と地ほどの違いはあるけどなぁ」


「ちょっと待って欲しい!その話は俺とさやかも聞いていいのか?なんだったら席を外すが?」


「も!慎吾!何言っていんの!コレから面白くなるのに!話の腰を折るなんて!」


「さやか!あのなぁ!誰にでも話したくない話はあるだろう!それを暴き立てるからジャーナリストは嫌われるんだ!」


「何言っていんの!今そんな話をしていないでしょう!」


「俺は前から気に入らなかったんだ!

 人の秘密を暴き立てるような仕事をさやかにしてほしくない!

 とっとと辞めてしまえ!」


「はあ?馬鹿じゃないの!警察だって同じでしょう!」


「はぁ?警察官とジャーナリストを一緒にするなぁ!」


 突然、慎吾さんとさやかさんのケンカが始まった事に僕も副所長も杏も呆気にとられてた。

 でも丸さんだけは楽しそうに笑っていた。

 僕はため息を1つ着いて仲裁に入った。


「はぁ~も~2人ともケンカはやめてください。慎吾さんの仕事もさやかさんの仕事もとても大切で意味のある仕事だと思いますよ。

 ケンカをしている暇はないのではありませんか?早く丸山雷さんにお会いしたいのでは?

 丸さん、この2人は僕にとって大切な仲間です。慎吾さんとさやかさんのもたらしてくれる情報は心強い武器になります。出来れば2人の同席を許して欲しいのですが‥‥いいですか?」


「俺はかまへんよ。それにしてもお2人とも仲がいいですね。ケンカするほど仲がいいとはまさにこのことですなぁ~。

 お互いがちゃんと想い合っている‥‥俺の家族は家を守る為に壊れた家族‥‥俺の居場所なんて生まれた時から無かった。あったのは家を守る事と自分の私欲を満たす事。俺にとって家族はじいちゃんとこの研究所のみんな‥‥あ!1人だけいた!その人がまだいれば、じいちゃんに会えるかも?」


「え!本当ですか?」


「うん。たぶんまだいると思う。今から連絡をしてみるよ。

 勇気は行く人を話し合ってくれ。せいぜい行けても俺を含めて4人だなぁ」


「はい!では‥‥」


 丸さんは電話をかけに部屋を出て行った。

 丸山邸に行くメンバーは、僕と慎吾さんと何故か杏に決まったが。

 なぜか、杏と副所長とさやかさんの3人が目配せをして頷き杏に決まった‥‥女性の行動には謎が多い。


「はい!慎吾。隠しカメラと盗聴器!」


「さやか!」


「だってしょうがないじゃないの!私、行けないのよ!

 この間みたいにブレないでよ。画面酔いしちゃうから!」


「はぁ~わかったよ」


「さやかさん!私にも見せてね」


「もちろんよ。竹井さん。私もいろいろと知りたいことあるしこれからは持ちつ持たれつで。よろしくお願いしますね」


「ふふふ‥‥話のわかる人は好きよ。こちらこそよろしく」


 と何故か副所長とさやかさんが意気投合していた。

 なんだか悪代官と越後屋さんの会話を屋根裏で聞いている気分になった。

 女は怖い生き物なのかもしれない‥‥はぁ~。


 そんな話と準備をしているときに丸さんが帰ってきた。


「丸さん、どうでしたか?」


「おう!勇気。まだいた‥‥俺の事を育ててくれた人が!

 その人が言うには裏口を開けてくれるらしい。今から行こう」


 そうして僕と慎吾さんと杏と丸さんの4人で品川にある丸山邸へ急いだ。


 早くしなければ最強と謳われているサンダーの保有者、丸山雷さんが危ない!


 ‥‥‥‥‥‥と思う?

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