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エンペラー  作者:
21/32

20話 来歴~らいれき・物事のそれまで経てきた次第又は人物の経歴~

 2年前となると僕が研究所に入ったばかりのころの話になる。

 僕に関係ある事といえば翔しかいない。

 彼の過去に少しでも触れる事が出来る、そう思うとはやる気持ちを抑えきれなかった。



 さやかの過去は他愛ないじゃれ合いから始まった。


「ねぇ~慎吾~何か~面白いネタない!」


「バ~カ!そうそう面白いネタなんてある訳ないだろう‥‥いや‥‥面白いかどうかは解らんが川崎組を知っているか?」


「え!川崎組って‥‥東京近郊を根城にしている広域連合?いわゆる暴力団の?」


「そう!それ!その川崎組があやしい動きをしてんだよ?」


「あやしいって‥‥どんな風に?」


「まだ、はっきりしたことは分かってないが金を集めているようだ。

 そのせいで取り立てが厳しく署の方に駆け込んでくるしたっぱが結構いるんだ。確かにちょっと調べてみると金は事務所に集まっているようだが使われた形跡がない。

 ただなぁ~都内のマンションだったり使われていない倉庫なり、廃屋なりを買っていたりと不穏な動きが気になる。さやかはどう見る?」


「ゴクゴクプッハァ~確かに変ね。ちょっと調べてみょうかしら?」


「おい!俺の酒を飲むな!‥‥あまり無茶をするなよ‥‥何かあったら連絡しろ。情報は共有だからなぁ!先走るなよ!」


「わかっているわよ!慎吾だって、何かわかったら教えてよ!」


 不毛な言い合いをしてから、私、重森さやかは動いた。


 川崎組のナワバリにある構成員の溜まり場、キャバクラで働き出したの。


「今日からお世話になります。源氏名“聖子”です。全てが初めての経験ばかりで不慣れな事も多いと思いますがよろしくお願いします。一生懸命頑張ります!」


 おもいっきりぶりっこを装ったわ。

 だって、なにも知らないウブでバカな女を演じたほうが何かと都合が良いのよね。


「聖子ちゃん、初めてなの?」


「はい!ママ」


「だったら掃除からね。トイレからフロアーまで掃除をお願いね」


「は‥‥はい」


 広いわ!

 この広さを1人でやれってか!

 でも盗聴器は取り付けやすいわね。

 トイレからフロアーのテーブルにカウンターさらに控え室まで仕掛けたやったわ。

 私のピアスは映像も撮影可能な特注品。

 ここまでして何も出なかったら、慎吾に代金を払ってもらおうかしら?


 初めの半年間は何の収穫もなし。

 私が店に馴染んできた頃からいろいろわかりだしたの。

 金庫番をしているのは曽根崎で40代のヤクザと言うより金融ブローカーのような出で立ちでヤクザには見えない男。

 でも目元が鋭く威圧感があった。

 この男はダメだわ。

 女好きではあるけれど仕事のことは喋らない系のめんどくさい男だわ。

 それよりも曽根崎の腹心に小池と言う男がいるの。

 コイツなら口が軽いし頭も悪いから情報ゲット!

 出来るかしら‥‥と考えて仕掛けてみたのよね。


「ねぇ~池ちゃん。どうしたの?元気無いじゃないの?」


「あ?聖子かぁ。どうしもこうもないぜ~はぁ~疲れた」


「はい!水割り。少し多めに入れておいた。ママには内緒ね!」


「聖子!ありがてぇ!プ~ハァ~うま!もう一杯くれ!」


「いいけど‥‥あんまり飲みすぎないでねぇ♥はいどうぞ♥」


 おもいっきりブリッコでしなってみた。

 小池の鼻は伸びきっていたが明らかに疲れの色が見て取れたわ。

 チャンス到来!

 人は疲れれば疲れるほど本音の愚痴を溢すのよね。


「ねぇ‥‥大丈夫?イライラしているみたいだし話だけでも聞いてあげる♥

 どうせ私が聞いても何にもわかんないし、言えばスッキリするじゃない!もう一杯、今度は薄目で作ってくるから!待っていて!」


「聖子‥‥ありがとう!」


「はいどうぞ!今なら誰もいないし、私と2人きりだしOKよ!」


「ありがとう!はぁ~実話なぁ。聖子‥‥1ヶ月前ぐらいから曽根崎の兄貴から金を集めてこいて言われて‥‥正直しんどいわぁ~。たぶんあいつなんだよ!あのガキ!変なん能力を持ちやがって!

 聖子‥‥驚くなよ‥‥18才のクソガキがスカイとファイアーを使いやがる!1人の人間が能力を2つ使いやがったんだ!

 そりゃぁ~驚くし怖ぇ~だろう!それで組長が腰を抜かしやがって、今じゃ言いなりだぜ。

 はぁ~うちの組も終わりかなぁ~。

 なぁ~聖子‥‥俺と一緒に逃げるかぁ?」


「もう!池ちゃん何言っていんの?そんなこと出来るわけないよ。そんなことしたら殺されちゃうよ。でも確かに怖~い!

 能力を2つ持っているなんて‥‥名前なんて言うの?見かけたらすぐ逃げなくちゃ!聖子!怖い~」


「‥‥まぁ~いいかぁ!聖子にもしもの事があったら嫌だし。‥‥聖子、内緒だせ!」


「うん!聖子、誰にも言わない!」


「こいつが勝又翔だ。勝ち負けの勝ちに又に翔の翔だ!」


「‥‥そ、そうなの‥‥きゃ!ごめんなさい!お酒こぼしちゃった!携帯電話が濡れちゃう!私、携帯を持っているから布巾、持ってきて!」


「おう!まかしとけ!」


 アホな男!

 ワザと酒をこぼしたことにも気づきもしない。

 私はバカな男を向こうに押しやってから携帯の画面に写し出された少年を、指輪に仕込んだカメラで撮ったわ。

 まだあどけなさが残る少年だったわね。

 でも目元の悲しみがとても印象に残ったのよ。


 そんなこんなでアホな男から有力情報をゲットできた。

 後はその勝又翔の居所だけ!

 何とかならないかと思っていたら、3日後、アホな男から同伴出勤のメールをもらったの。

 私はラッキー!と思ったんだけれど一抹の不安を感じて、すぐ慎吾にメールが出来るようにセットしてから待ち合わせ場所に向かったわ。

 その不安と言うのも何時もの待ち合わせ場所ではなかったからなの。

 誰だって怪しむでしょう!

 いつもなら行かないわ!

 でも‥‥どうしても勝又翔の情報が欲しかったの。


 そこは最近、川崎組が手に入れた廃墟ビルでこれから手入れをして売り飛ばす予定の物件だったの。

 行ってみると案の定、曽根崎を筆頭に川崎組の方々が私を囲ったわ。

 それでも私はバカな女のフリをしたの。


「あの‥‥小池さんはいますかぁ?私‥‥待ち合わせをしていて‥‥いないなら外で待っています~」


 と外に逃げようとドアに向かったら、鞄を取られもといた場所に突き飛ばされた。


「キャー!痛い!何するの!池ちゃんを呼んでください!」


「芝居はここまでにしょうやぁ~重森さやかさん。オイ!小池を連れてこい!」


「ヘイ!」


 そう言って連れてこられた小池は縛られてボコボコだったわ。

 アホだったけれど、愛嬌のある顔をしていたのに‥‥そんな顔は影も形もなかったわね。

 かろうじて息だけはしていたけれど、虫の息。

 そんな小池の姿を見た瞬間、慎吾にメールを送信したわ。

 私はスマートフォンとは別に折りたたみ式のガラケーも持っていたの。

 私の能力ウェイトは物の重力を変えることができる能力。

 触れておけば手元になくても物の重力を変えることも出来るのよ。

 そこで折りたたみ式ならボタンの重量を変えることにより押すことが出来るでしょう。

 しかもGPSで慎吾には私の居場所がわかるはずなの。

 私が小池の姿に絶句しているフリの隙に(本当は慎吾にメールを送信していたのだけれどね)いつの間にか持ち込まれていた椅子に縛られてしまったのよね。

 そして男たちは私の鞄をぶちまけ携帯電話を2台とも壊されてしまったわ。

 アレ新型のスマホだったのに!そんな怒りを抑えつつ、私はまだ演技を続けたわ。


「池ちゃん!私が何をしたの?助けて!」


「だまれ!ハイエナ!」


 バチン!


 グローブのような手で、私は左頬を叩かれた。

 でも合気道を習っていたので痛くもかゆくもなかったわ。

 首をひねって力を逃がしたので、見た目には派手に叩かれた姿に見えたのね。

 そこで私は唇を歯で噛んで血を流して好奇心だけで来た記者に演技を切り替えたわ。

 ここで私が警察と繋がりがあるジャーナリストとバレルのは後々めんどくさいから。

 ウフフ‥‥変わり身が早いのは能力ウェイトのせいかしらね。


「痛いわね!私はただ無理な取り立てをしているから気になっただけよ。

 それとも‥‥何かあるの?こんなビルまで買って。お金を貯めているの?使っているの?どうせ私はココから無事に出ることは出来ないのでしょう。だったら教えてよ。冥土のみやげってヤツ?」


「このアマふざけんなぁ!!」


 そう言ってまた左の頬を叩かれる寸前、男達の後ろからまだ少年の雰囲気を残している声が響いたわ。


「僕は暴力が嫌いです。まして女性に対して手荒なことはしないでください」


 そう言いながら前に出て来たのは、あの写真の少年だったわ。

 このとき私も黙っていればよかったのに、好奇心が勝ってしまったのよね。

 まだまだ青いわね‥‥私。


「血が出ていますよ。大丈夫ですか?」


「あなたが勝又翔‥‥さんかしら?」


 私の血を拭ってくれようとした手がピタリと止まって、私をマジマジと見たの。

 さらに私は続けたわ。


「ねぇ~本当に能力を2つ持っているの?」


 そう聞いたとたん彼の顔つきは険しく変わったわ。


「どこでそれを‥‥あの男ですか?あなたは信じているのですか?あんな男の戯言など?」


「信じるわけないじゃない。でもね‥‥読んだことあるのよ‥‥皇帝と言う能力ではないかしら?」


 私は上目遣いに見上げたの。

 すると彼は何だか嬉しそうな顔をしていたわ。

 そして、私の目の高さまで腰をかがめてから誰にも聞こえないように小声で話したわ。

 ちょっと魅力的だったわね。


「どこで読んだのですか?」


 彼の顔は笑っていても、目の奥に殺気を宿していたわ。

 私は“殺される!”と思った、さすがに死にたくないからね。

 だからチラッと窓を見たの。

 そうすると人って同じ方向を見るの。

 勝又翔だってまだまだ子供、例外はないわね。

 そこに黒い影がよぎった。

 もちろん慎吾率いる警察の方々。

 助かった訳だけれど、少しやりすぎたかしら?

 流石に怖かったわね。


「どうやって調べたのでしょうね」


 そこまで話すと背筋を伸ばし回れ右をしたの。


「あなた達、僕の事は喋らないで下さいね‥‥喋れば組織ごと潰しますよ。

 ではまたどこかで会いましょう」


 そう言うと右手を右斜め上にあげて火の玉を出したの。

 その玉は1階の天井と2階の窓下あたりを破壊して穴を開けたわ。

 みんなが惚けている内に飛んで逃げて行ってしまったのよ。

 砂埃で視界は悪かったし、あっという間の出来事だったからね。

 でも本当に2つの能力を使っていたわ!

 驚きを通り越してアホみたいに口を開けてしまったのよ。

 何物にも動じないこの私がね!


「ちょっと慎吾!遅いじゃないの!殺されかけたでしょう!」


「バカやろう!お前が先走るからだろうが!‥‥大丈夫かぁ?」


 そう言いながらも縛っていた縄をほどいてくれたわ。

 心配かけちゃったかしら?


 それからは慎吾と2人で調べたの。

 写真があったので調べやすかったけれど‥‥結局、会ったのは1回だけだったわね。

 今年に入るまではたいした成果もないままに過ぎていったのよ。

 そしてアノ国会議事堂での事件ね。

 その事件であなたの名前がわかったのよ。

 こんな感じでいいかしら?

 これから先はわかるわよね?



 と脳内動画で視た記憶と同じ内容を話してくれた。

 この時の翔はスカイとファイアーだけ。

 僕の脳みそはパンク寸前だ。

 一度、吐き出して整理しないと大切な情報を取りこぼしそうだ。


 それにさやかさんは何のためにここに現れたのだろう?

 慎吾さんも同じ調査をしているようだし彼女が研究所に来る必要は無いのではと感じた。

 では何のために‥‥慎吾さんを通さずに直接、僕を訪ねてきたのだろうか?


 彼女にはまだ何かある??




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