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エンペラー  作者:
19/32

18話 須要~しゅよう・なくてはならない事又はどうしても必要な事~

 とあるテレビ局内にある喫茶店での一コマ。


「『都市伝説の真実』ですか‥‥」


「そう!夏なら定番の怪奇モノ!なんだが‥‥重森ちゃんも知っている通り予算がね。怪奇モノや幽霊モノはクレームも多いから最近ではあまり作らなくなった。

 が!都市伝説ならクレームも少ないだろうし流行りだしね!そこで重森ちゃん!‥‥何かネタない?」


「有吉プロデューサー。ネタと言われても‥‥都市伝説‥‥都市伝説なら1つ面白いモノありますよ。でも今からでは遅くありません?」


「それは大丈夫!今年も猛暑で残暑でしょう。9月か10月まで引っ張れる!それに都市伝説なら本当か嘘かなんてどうでもいいからね。形さえ作れればOKよ!で何?ネタは?」


「そう言う事なら。1つあるわよ。『舞い降りた悪魔』という話なの。とある高校の教師が生徒の見送りに校門ところにいたらしいの、そこに黒い悪魔が舞い降りて能力と命を奪って天に帰って行った‥‥と言う話なの‥‥」


「‥‥あんまり怖くないなぁ~」


「そう言うと思った。でもね、この話にはまた別の話があって、そっちはバイクで走行中に黒い悪魔が舞い降りて能力と命を奪って飛んでいく‥‥と言うヤツなの。

 この話をベースに創作したらどう?広まったように演出すれば形にならない?」


「なるほど、使い古されたネタより信憑性には欠けるが新しいネタの方が食いつくわなぁ~‥‥いいね!

 でもどうするの?」


「そこで、能力開発研究所って知っている?」


「さぁ~聞いたことない‥‥けど」


「能力に関する開発と研究そして分布など、あらゆる能力について調べている所らしいの。

 そこに能力を見る能力、トレースを持った人がいるらしいの‥‥どうよ!胡散臭いでしょう!うふふ」


「うふふ‥‥確かに胡散臭くっていいね!この際、何でもいいから、番組さえ出来ればOKよ」


 と言う会話があったかどうかは謎だが、僕の前に一組の男女が座っていた。

 僕から左前に座っている男性。

 170cmぐらいの身長で細身のスラリとした出で立ちをしていた。

 杏曰わく。


「テレビドラマに出てくるプロデューサーで‥‥ほら!肩にシャツ?掛けている人。まんまやったね」


 後から話しをしていた。

 その人が有吉高志さんでFGTVのプロデューサーをしていた。

 その隣、僕から右前に座っている女性。

 有吉さんより低かったが女性の平均よりは高かった。

 ストレートな長い髪に狐顔のキリリとした眼差し、モデルのような体型をした大人の女性が重森さやかさんでフリージャーナリストをしていた。

 僕は重森さやかさんの前に座っている。


「で、どのようなご用件でしょうか?」


「都市伝説を題材にした番組制作をしょうと考えまして。

『舞い降りた悪魔』と言う都市伝説をご存知ですか?」


 僕と隣に座っていた杏はお互い見合わせ首を振った。


「すみません。存じ上げません。どんな話なのですか?」


 有吉さんが話そうとするのをさえぎり、重森さんが慌てて話し出した。


「たいした話ではないのですが。この話では能力が奪われるという話なので、能力が無くなる事は実際にあることなのですか?」


 僕は迷った。

 何をどこまで話そうかた悩んだがありていに話せばいいかぁ!と高をくくっていた。


「確か、大昔に能力を奪う能力があったと文献などでの記載があります。ですが今現在、能力のない人はいないと思いますよ」


「あの‥‥トレースを持っていらっしゃる方はおられると聞いてこちらに伺ったのですが?」


「はい、いますが‥‥それが何か?」


「今回の特集では能力が奪われる恐怖が番組のカギになります。ではどの様にして能力の有るなしを表現するかと悩んだ末トレースを思い出しまして。

 トレースは確か、見る能力だと伺っています。どんな風に見えるのかを知りたくて、こちらにお伺いしました。おられますよね‥‥」


 当たりを見回す重森さん。

 僕はトレースだけなら良いだろうと思ったし、嘘はついていないように思えた。

 でも何かしら裏があるような気もするが‥‥このままでは話が進みそうにないのでトレースなら問題ないだろうと思い話すことにした。


「はい、いますよ。目の前に」


「「え!」」


 有吉さんと重森さんが同時に答えた。

 さらに間抜け面も同じだった。

 ちょっと笑ったが真剣な面もちで僕は話を続けた。


「すいません。僕がトレースの能力を持っています。嶋村勇気です。

 黙っているつもりはなかったのですが、あまり公にしたくなかったので黙っていました。トレースという能力は目で見て、手で触れて過去を視る能力です。能力は個人情報にあたりますし、過去は本人にとっての宝物です。それをおいそれと覗き視るわけにはいきませんよね。ですから僕は能力を遮断する手袋と眼鏡をしています」


「宝物かぁ‥‥では私と有吉さんの能力は何だかわかりますか?」


 挑戦的な顔で重森さんが僕を見た。

 重森さんは悪戯を計画している子供のような顔をしていた。

 僕も挑戦されているのが心地いい感じがしたので、その気持ちのまま眼鏡を外しニヤリと笑って有吉高志さんと重森さやかさんを改めて見た。

 有吉高志さんはすぐに解った。

 スカイの飛行機だ。

 体を包んでいるオーラが青色をしていた。

 重森さやかさんは‥‥コレは難しいぞ?狐色?


「有吉高志さんはスカイの飛行機だと思われます。重森さやかさんは‥‥アース系なのは間違いないのですが‥‥何だろう?」


「勇気、携帯は?本、持ってこようかぁ?」


「杏‥‥大丈夫‥‥だと思う‥‥」


 僕は考え込んだ。

 正確には思い出そうと必死になった。

 翔がアースのマグニチュード9を保有していたのでアース系のレア能力を読んだばかりだから‥‥。


「あ!!思い出した!アース系ウェイトだ!狐色だったから動物の色が入っていて面白いと思ったんだ。

 確か‥‥自分の体重と触れた物の重さを変える事が出来る能力。アース系の中でもレア中のレア能力‥‥ですよね?」


「凄いわね。当たり。ただ正確には、手で触れて認識した物も重さを変える事が出来る能力なのよ。どんな風に見えているの?」


 僕は眼鏡をかけて、めったにないレアな能力者の話にメモを取りながら答えた。


「体の周りに、靄のようなに見えます。そうだなぁ~‥‥一時期流行ったオーラと言った方がいいかもしれませんね。で、そのオーラに能力別の色がついているので、その人の能力がわかります」


「ではいろんな色のオーラが見えているの?」


「はい、そうです。ただスカイとウォーターだけは色が青系で似ているので判断に悩みます。よく見てみるとウォーターのオーラは水だけに波打っているように見えます。そこで判断します」


「へぇ~そんな風に見えるのね。便利良さそう」


「そうですか?目がチカチカしますよ。眼鏡があるから普通に生活が出来ますが、今度は眼鏡に慣れていないので大変です。他に質問はありますか?」


「手で触れて過去を視ると言ったけれど‥‥本当なの?」


「本当ですが‥‥コレばかりはどんなに説明しても信じてもらえないと思いますよ。一番早いのは試して視ることだと思いますが‥‥有吉さんか重森さんか試してみますか?

 昨日1日だけではなく脳に記憶してある過去を全て視ます。ほんの一瞬で済みますが‥‥あまり気持ちのいいモノではありません。止めませか?それに番組制作に必要無いですよね」


「確かに必要ありませんが、勉強のために‥‥」


「重ちゃん、彼の言う通りだと思う。そこまでは必要ないよ。オーラで見せるのは絵的にいいよ!と言うわけで今日はありがとうございました。とても参考になりました。また何かありましたらよろしくお願いします」


「いいえ、たいしたおもてなしも、しませんで」


 と儀礼的な挨拶をして2人は帰っていった。


「ねぇ~勇気。あの2人は何だったの?」


「う~ん‥‥本当だよね?でも女性の方の重森さやかさんだっけ?彼女は別の目的があったように思うけど‥‥」


「う~ん‥‥そうかなぁ~?」


 この2人ではなく僕の読み通りウエイトの能力者、重森さやかさんが次の扉を開ける鍵となる人物だった。


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