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エンペラー  作者:
15/32

14話 因襲~いんしゅう・昔から続いているしきたり~

 僕の思考は停止してしまった、ただただ静かに涙を流し続けた。

 目を閉じ頭の中を再起動した。


 この宋心一族は苦しみに塗りつぶされた人達のなれの果てが麗子さんだった。

 この山奥で神柱を奉る一族で、その神柱は氷で固められた代物。

 そのためにアイスの能力者だった宋心家が氏神となり守ってきたようだった。

 ただでさえアイスの能力者は少なく、能力者の確保をしていくことは難しくて保有者同士の結婚イコール近親者の婚姻をしていくしかなかった。

 お婆さん、宋心麗郷さんが小さい頃は遠縁者もまだ沢山いたためにたいした苦労もなくアイスの能力者が産まれていたようだったが遠縁者も少なくなると近親者しかいなくなり‥‥さらに一族の人数も減った。

 近親者の婚姻のために子供には恵まれず、産まれても障害者や極端に体が弱くなかなか育たなかった。

 そんな中でも麗郷さんは一族のために実の兄との間に2人の子供を産んだ。

 それが麗子さんの両親となる。

 瑛鉄さんと妹の瑛麗さんとの間に産まれた子供が麗子さんだ。

 もとから体が弱かった瑛麗さん、麗子さんを産んですぐに亡くなってしまう。

 残された男女は実の父と子‥‥僕は胸が張り裂けそうだった。

 そんな思いまでして産まれた子供がアイスではなくウォーターだった。

 次の子供を産むか、アイスの能力者をさがすか、すべては捨てて山を下りるか、悩み苦しみの中、麗子さんの産後が芳しくなく体調を崩していた。

 そんな時、麗郷さんがインターネットで僕の動画を見つけた。


 そこまで視てお婆さんから手を放した。

 涙を拭き、手袋をはめてから顔を上げると麗子さんを愛おしそうに見つめる谷口さんを見た。

 そうかぁ!

 この谷口さんは麗子さんのことを大切に思っている。

 そのとき僕はどうするのかを決めた。


「よくわかりました。エンペラーの能力を施行してもいいです。ですが条件とお願いがあります」


「条件とお願いですか?」


「そうです。条件とお願いです。

 まずはお願いです。一人の体に1つの能力しか保有できないと思います。玉瑛くんはウォーターの能力を保有しています。このウォーターを奪わなければなりません。ところが玉瑛くんは近親者との間の子供です。健康面に疑問があります。

 能力を奪うときに奪った相手の心臓が止まり、心臓マッサージやAEDをすれば問題なく息を吹き返しますが、今の玉瑛くんにそれだけの体力があるとは思えません。ですからどうでしょう。玉瑛くんが成長するまで待ちませんか?僕なら連絡さえくれればすぐに伺います」


「わかりました。それもそうですね。性急すぎました。

 その通りにいたします。では残るは条件ですね。条件とは?」


「はい、条件ですが‥‥近親者との婚姻を止めていただきたい。あまりにも馬鹿げています!

 すいません口が過ぎました。アイスの能力が必要な事はよくわかります。ですが、アイスの能力を獲るために近親者との婚姻など、意味をなしません。確かに0%ではありませんが確率はあまりにも低い方法です。麗郷さん!あなただってそう思ってきたはずです。

 僕は能力の分布についても調べています。アイスの事も調べますし僕がエンペラーの能力を施行もします。ですからどうでしょう?近親者との婚姻を止めて下さい。お願いします」


 僕はそう言って立ち上がり頭を下げた。

 一時して僕は頭を上げると、ここにいる全員が涙を流していた。

 もちろん僕もね。


「嶋村さん‥‥本当に私の過去を視たのですね」


「はい‥‥視ました。とても悲しい因襲に苦しみ続けた麗郷さんの85年を視ました。そしてあの奥にある神柱も視ました。氏神である宋心一族しか見る事の出来ない神を間接的にでも見ることが出来て、僕は幸せ者ですね。とてもラッキーです」


「オホホホ!幸せ者ですか‥‥ありがとうございます。嶋村さんに神のご加護がありますように」


 そう言って立ち上がり手を合わせて祈ってくれた。

 僕も手を合わせ、目を閉じ、みんなが幸せでありますようにと祈った。

 目を開けて顔を上げると優しく微笑むお婆さんの顔があった。


「嶋村さん、約束していただけますか?今日、知ったことは家族でさえ秘密にしてほしい事と、皇帝の能力を施行していただける事を約束しもらえますか?」


「お約束します!」


「ありがとうございます‥‥うっ」


 ガタン


 力が抜けたお婆さんがベンチに座り込んだ。


「母さん!大丈夫ですか?」


「お婆様!」


「大丈夫です、少し力が抜けただけです。‥‥麗子、自由に生きなさい。呪われた因襲に囚われる必要はありません。谷口」


「はい」


「麗子の事を頼みましたよ」


 谷口はお婆さんから呼ばれ足元にかしずいた。

 頭を下げたままなんと答えていいものかを悩んでいたようだがはいと答えた。

 お婆さんはちゃんと見抜いていた。

 2人の想いに。

 僕はホッとした。

 過去の中でお婆さん自身も悩み苦しんでいた。

 誰が好き好んで実の兄との子供を授からなければならないのか。

 神を祀るため、アイスの子を産むため、家のため‥‥自分の人生を犠牲にして成し遂げなければならないことなの?

 可愛い孫に自分と同じ苦しみを味わってほしくない、誰しもが思う感情だと視ただけの僕でさえそう思った。

 このやりとりを聞いていた麗子さんはとても愛らしく頬を染めていた。


「では嶋村さん。私の氷塊を奪って下さい」


「へぇ?アイスを奪うのは玉瑛くんが大きくなってから‥‥では?」


「嶋村さん。私は85才ですよ。玉瑛の成長なんて待っていられません。あなたなら大丈夫でしょう。嶋村さんに一旦預けます。

 玉瑛が成長し宋心家を継ぐのなら私の氷塊を与えて下さい。それまでは嶋村さんがお使いになられても結構ですよ。それと氷塊の能力者を探して下さい。そもそも初めから間違っていたのですわ!

 我ら宋心一族だけが氷塊の能力者だけではないのですし、神柱を守って行くなら一族の者でなくても、神の信義を守ってくれる方なら誰でもいいです!

 そうですね‥‥麗子、まずはあなたが神職の勉強をして資格をとりなさい。谷口、あなたもです。麗子を1人で行かせるわけにはいきませんから2人で神職の資格を取ってきなさい。それまでは瑛鉄と私でここを守ります。氷塊のことは嶋村さんにお任せしますね。私達は大切な事を忘れていましたわ。これからは内に籠もっていては駄目です。山奥とはいえここも開かれた場所にするのです!そうしなければ忘れ去られてしまいますわ。さぁ!これからが忙しいですわよ!」


 そう言って立ち上がり手を叩いた。


 パンパン!


「さぁ! 嶋村さん!今の私には氷塊の能力は必要ありません。私の過去を視た、あなたなら私がどれだけ氷塊の能力を嫌っていたかを知っているはずです。私から能力を奪って下さい。‥‥出来ることなら私の生きているうちに玉瑛が立派に成長し氷塊を与える所を見てみたいものです」


「お婆様!何を弱気な事を言っているのですか。私達の中で一番お元気ではないですか!曾孫まで見られますよ」


「僕もそう思います」


「まぁ、人をお化けみたいに言わないでいただきたいです。それはそうと嶋村さん、先ほど名前で呼んでいただいて若返ったような気がしましたわ。今度から名前で呼んで下さいね」


「まぁ!お婆様ったら!ごめんなさい。嶋村さん、お婆様はこんな事を言う人ではないのですが‥‥?」


「ふっふっふ‥‥そうですか。では僕の事も名前で呼んで下さい。麗郷さん」


「ふっふっふ‥‥勇気さん」


 他の人はポカンと口を開けて見ていた。

 僕と麗郷さんはニコニコと笑いあった。

 でもお互い涙目なのは許してほしかった。


「でも麗郷さん、本当によろしいのですか?麗郷さんのアイスはとても珍しい能力です。今、改めて見て見ると麗郷さんのアイスは淡い藤色をしています。確かに麗子さんも淡い藤色ですが、麗郷さんの方が少しだけ濃い藤色をしています。麗郷さん‥‥」


「勇気さん‥‥私はあなたのことを気に入りました。私の過去を視て泣いてくれたあなたなら私の氷塊を使い、玉瑛のよき兄として接してくれるでしょう。そして私の氷塊は正当な後継者に与えてくれると断言出来ます。今の私は能力のどうのこうのではなく、いかに神柱を守り、そして守り人を育てるか。これこそ私の最後の仕事です。

 勇気さんの事を知ったのは‥‥こんな山奥ですがインターネットぐらいありますわ。それによりあなたのことを知りましたの。勇気さんには私の氷塊がお役にたつでしょう。そのかわりと言っては何だけど、麗子と谷口の事をよろしく頼むわね」


「ネットですか‥‥。それはそうと、麗郷さん。相談なのですが‥‥麗子さんと谷口さんを研究所でアルバイトとして働きながら大学に通うと言うのはいかがですか?

 アルバイト程しかお給料は出ませんがないよりましです。少しですが足しにしてください。それに‥‥いくら婚約者だからと言ってもうら若い乙女が男性と同居はよくありません。所長に話をして寮に住むのが安心、安全です。麗子さんは美人ですからすぐに人気者になりますよ。玉瑛くんもかわいいですし、女性職員は大勢いますからかわいがられると思いますよ」


「嶋村さん!美人はやめてください。それに婚約やら同居やらなんですか!私達はそんな仲ではありません!お婆様、何か言ってください!」


「そうですよ。勇気さん。今時の若い子が同棲なんて普通でしょう。それに考え方が古いですわよ」


「そうかなぁ?僕はしたことがないらわ分からないですね」


「でも友達が出来るのならその方が良いかもしれませんね。麗子もそれでいいかしら?」


 この話を聞いていた男性2人は黙って佇んでいた。

 どうも女傑の意見は絶対のようだった。


「麗郷さん。僕は20年間、能力無しのレッテルを張って生きてきました。全ての人から人間扱いをされたことがありませんでした。そんな僕にさえ、友達になろうと手を差し伸べてくれた人がいます。こんな危険な能力に目覚めた今でも、友達でいてくれています。今度は僕が言える!」


 僕は右手を麗子さんの前に差し出した。


「麗子さん、僕達と仲間になりましょう!」


 麗子さんは僕の差し出した右手を見つめ涙を流しながら両手で僕の右手を握りしめた。

 そこには2年前の自分がいた。

 麗子さんは僕の手をパッと放し泣き崩れながら麗郷さんに縋りついた。


「お婆様!私‥‥私‥‥」


「麗子、行きなさい。私と瑛鉄はここであなた達が帰って来るのを待っています。玉瑛はあなたが育てなさい。きっと大丈夫です。麗子は独りではないようです。谷口、麗子と玉瑛の事を頼みましたよ」


「はい!」


「そして谷口、あなたも。これからは自分のしたいことをしなさい。でも、出来ることなら麗子と同じ神職の資格を取って宋心家に帰ってきてほしいです」


「はい。私は宋心家に仕える者です。ご主人様の仰せの通りに。神主の資格を取りお嬢様と戻ってまいります」


「はぁ~私、以上に頑固でわね」


 麗郷さんは笑っていた。

 よく見ると谷口さんも笑っていた。

 笑顔はどんな悲しみにも効く特効薬かもしれないと感じた。


 僕は谷口さんに能力を奪う段取りを話した。


「谷口さん、すいません。ここにAEDはありますか?能力を奪うときに必ず心臓が止まってしまうのでAEDがあると助かるのですが?」


「はい。あります。ここは高地ですので、私が講習を受けて来ました」


「それは助かります。ではAEDの用意をお願いします」


「はい、すぐいたします」


 そう言ってAEDの用意をしに席を外した。

 僕は麗郷さんに向き直って最後の確認をした。


「麗郷さん。ではもう一度だけ確認します。アイスを奪い、玉瑛くんが宋心家を継ぐさいに与える‥‥これで間違いありませんか?」


「はい、間違いありません。勇気さん、私の氷塊を使って下さいね。期限付きですがあなたの力にもなると思います」


「ありがとうございます。こんな心強い能力と麗子さんと谷口さんと言う力が手に入りここに来たかいがありました」


「まぁ~嶋村さん、来たのではなく連れてこられたのでは?」


「麗子さん、オブラートに包んだのに‥‥あ!谷口さん、用意が出来たようです」


 後ろの戸が開き中からマットとAEDを持って現れた。

 マット?


「谷口さん、マットは‥‥?」


「はい、AEDを使用するのならマットがある方がお怪我をしないかと思いまして‥‥よけいな事でしたか?」


「とんでもない!さすがです!谷口さんは冷静かつ適切に物事を判断なさっているのですね。凄いです僕も見習いたいです」


「あ、あ、ありがとうございます」


 僕が誉めると谷口さんは真っ赤な顔をしてうつむいてしまった。

 すると横から麗子さんが微笑みながら楽しそうに話し出した。


「嶋村さん。あんまり昇さんをいじめないでください」


「お嬢様!」


「も!お嬢様は止めてと言ったでしょう!」


「は、はい‥‥」


「アハハハ!谷口さんも麗子さんには形無しですね。そうそう、もう仲間ですから僕の事も嶋村さんは止めて下さいね。勇気と呼んで下さい。谷口さんも、ですよ」


「まぁ!私もいいのですの!仲間ですって!まぁ!まぁ!どうしましょう!」


「ふんぎゃ~ふんぎゃ~」


「これ!麗子!あなたがバタバタするから玉瑛が泣いてしまったではないですか!静かになさい!」


「はい‥‥すいません。あまり嬉しかったものですから。‥‥勇気さんもすいません」


「いえいえ、いいですよ。謝る必要はありませんから。僕も似たような喜び方をしましたよ」


 と僕は微笑んだ。

 麗子さんも玉瑛くんも麗郷さんもみんなに微笑んだ。


 それから僕が繋がれていた柱に行きマットを敷いて立ってもらった。

 麗郷さんは着物を脱いで襦袢姿になってもらった。

 ようは洋装で言うところの下着姿のこと。

 玉瑛くんはベビーベッドでスヤスヤと寝ていた。

 マットを囲むように左側に瑛鉄さんがいて、僕の正面に谷口さんがいて、右側に麗子さんかいた。

 谷口さんの後ろにAEDはスタンバイしてあった。

 麗郷さんと麗子さんが見つめ合い、お互いの手を握りしめ、頷き合った。


「では、勇気さん。やって下さい」


「はい!麗郷さん、あなたの命は僕が助けます!では、行きます!」


 そう自分に気合いを入れて手袋を外しポケットに入れた。

 そして麗郷さんの額に左手を当て、右手を首の後ろに当て、大声で叫んだ。


「奪う!」


 僕の言葉だけが谷間に響いた。

 麗郷さんは目を見開き、閉じたかと思うと膝から崩れ落ちた。

 僕は右手で頭を支えて左手で腰を取った。

 そのままマットに寝かせ馬乗りになり心臓マッサージを始めた。

 教わったように肩の力を抜きマッサージをした。


「谷口さん!AEDの用意を!」


「はい!」


 素早いAEDのおかげで麗郷さんはすぐに目を覚ました。

 谷口さんは消防署で資格を持っていて的確なアドバイスと判断力で何の問題もなく息を吹き返した。

 やはり取らなければならない資格だと思ったことは内緒だ。

 まぁ~事もなく終わって良かった。


 麗郷さんはまたビシッと着物を着て来た。


「勇気さん、私の氷塊はいかがですか?」


「はい、麗郷さん。ウォーターとは全く違いますね。やはりコレも訓練がいるようです。瑛鉄さんと麗子さん。少し教えてもらっていいですか?」


「もちろん!」


「あら?元々は私の氷塊だったはずですが?私には聞かないのですか?」


「す、す、すみません!麗郷さん!教えて下さい‥‥」


「アハハハ!」


 みんなで笑っていたときだった。

 音もなく正面の崖から現れた。


「談笑中、失礼しますよ。こちらにアイスの能力者がいますね。奪いに来ました。おや?何故あなたがここにいるのですか?勇気!」


「それはこちらの台詞です。あなたこそ何しに来たのですか?翔!」


「相変わらず疑問に疑問を重ねないでください!」


 語尾と同時に火の玉を僕らに飛ばした。

 僕はみんなの前に一歩出て次々と飛んでくる火の玉を水の鞭で消した。


「少しは仕えるようになったのですね!」


「お褒めに与り光栄です!」


 今度は僕がアイスの玉を飛んでいる翔に投げた。

 瞬間的に出してしまったのがこの氷の塊。

 出してしまったのものは仕方がなく投げてしまったのだが‥‥思いのほか投げやすく2個3個と出して投げてみた。

 そうしたら、下手な鉄砲精神で翔の足に当たりバランスを崩し落下した。

 しかし使い慣れない能力の代償として辺りはヒンヤリし出した。


「勇気さん!どなたですか?」


「谷口さん!詳しい説明は後からします。麗子さんと麗郷さんを守って下さい。あのぐらいの打撃では‥‥」


 と言い終わらないうちに崖の下から上がってきた。

 何の痛みも無いようだった。

 けれどこの場に僕がいて、僕がアイスを使ったということを瞬時に理解したようだった。


「ここには僕の用事はないよう‥‥だ!」


 下から上がって来るときから左手に仕込んであった大きな火の玉を僕達に向かって飛ばしてきた。

 麗郷さん達は左側に僕は右側によけた。

 でも翔の目的は僕達ではなく柱だった。


 バキッ‥‥バキバキボキッ!ボフゥ!


 大きな音をたてながら柱は折れた‥‥だけではなく燃え始めた。


「アハハハ!燃えるのが先かつぶれるのが先か、好きな方を選んで下さい。それでは勇気、また会いましょう!」


「翔!ま‥‥」


 炎に邪魔されて、翔はどこかに消えてしまった。

 僕は水で火を消そうかと思ったが、火を消せば天井が崩れ落ちそうだった。

 だったら!

 と瞬時に考えた。

 そして、ありったけの力を込めて燃え盛る柱を呑み込んで、床から天井にめり込ませるほどの大きい氷の塊を出した。

 その瞬間、僕は意識を失った。

 オーバーヒートを起こしてしまい倒れたようだ。


 目を覚ますと僕は布団の中にいた。


「勇気さん。目を覚ましましたか?‥‥怒りますよ。突然あれほどの能力を使えば昏倒します。どれだけ心配したかおわかりですか?」


 麗郷さんに怒られてしまった。

 激昂するわけでも怒鳴るわけでもなかったが、冷静さの中に憤怒の気持ちが強く伝わってきた。

 怒っていたのは麗郷さんだけではなく玉瑛くん以外の人がみんな僕に怒っていた。

 僕は起き上がり兎に角、謝った。


「すみません。まさか気を失うなんて想像していませんでした。でもこれで1つわかったことは、エンペラーの能力を使うと体力を激しく消耗するようです‥‥心配をかけてしまってすいません」


「‥‥大丈夫そうですね。ですがあまり無理はしないでくださいね」


「お婆様の言う通りです。無理しないでください。でも大丈夫そうなので安心しました。それにしても勇気さんは凄いですね。あれほどの氷柱を見たのは初めてです」


「麗郷さん、麗子さん‥‥すいません。確かに‥‥アレには僕もびっくりです」


 そのアレとは僕が気を失うほどの能力で出現させた氷柱。

 直径1メートルぐらいの円柱が床から天井を支えていた。

 さながら大樹が床から生え、石の葉を茂らせているかのように見えてしまう。

 それほど大きく威圧感を出していた。

 みんなで見上げ感心してしまった。


 僕の課題は増えたことは言わずもがな‥‥です。

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