プロローグ
プロローグ
「まったく困ったものですね。超能力やら特殊能力やら。馬鹿げた話ですよ」
「ええ……まったく。超能力なんてものはあるわけがない。漫画やアニメの観すぎだな。最近の若者は成っておらんな。馬鹿馬鹿しい」
「ですが首相、そろそろ手を打たなければマスコミが五月蝿そうですか……」
「うむ……しかし……そんな紛い物に何をすればよいのやら?……犯罪者として捕らえ……いや殺して……」
「なんだ!どうした?何かあったのか?ここはお前たちが入っていい場所ではないぞ!」
突然、雪崩れ込んできた4人の警備員。
その一人が私の前に進み出てきた。
談話室で寛いでいた私の胸蔵を掴み立たせてから威圧的に叫んだ。
「首相……認めて頂きたい!
この国にどれだけの能力者がいるとお思いか!
迫害や幽閉されてきた者たちがどれだけいるとお思いか!
追い込まれることによる能力者の犯罪がどれだけあるかとお思いか!
首相よ!お前も能力者になってみるといい!……火を与える!」
なんだ!こいつは誰だ!
今なんと言った?私を抱き締めてなんと言った?……火……火を与える?……なんだ……火が!炎が!私を呑み込む!
「うぁああああ~」
「首相!」
「大丈夫です。突然の能力で混乱しているだけです。
眼を瞑り深呼吸をしてください。これが火の能力です。能力がどう言ったものか理解できたでしょう。首相に与えた能力は一番弱い火の能力です。私の能力、皇帝は奪い、与える能力です。
私は……私はこの能力で迫害を受けてきた能力者から能力を奪って来ましたが、それも限界です。それほどに能力者が増えたのです。もう……私の能力ではどうすることもできません。
どうか!どうか!お願いです!能力者を公表し、認めて下さい!能力者にも人権を!人としての生きる道を示して下さい!お願いします!」
時は流れ。
やっと解放される……。
私が私に戻れるのね……。
貴方には申し訳ないけれど、もう限界なの!
お婆様からは結婚しろ!子供を作れ!と煩いし。あの人は逃げてしまうし。
私だって自由になりたいの……私の……私の赤ちゃんが生きていればね……こんな事をしなくてもよかったのに……ごめんなさい。
どうか……どうか、私を許してね。
女はスカイの能力を持った赤子とファイアーの能力を持った赤子の間に立った。
左手をスカイの能力を持った赤子の額に置き一言。
「奪う」
赤子は息をしなくなった。
次にファイアーの能力を持った赤子を抱いた。
右手を赤子の背中に添わせ一言。
「エンペラーを与える! え!!嘘!!何で…………」
女は歓喜に満ちた声と落胆の声を叫んで生き絶えた。
女の腕からベッドに落ちた赤子。
「ちょつと!平田さん!平田さん?」
騒然となる新生児室で一斉に泣き出した赤ちゃん達、その中で泣かない赤ちゃんと床で死んでいる看護師。何が起こったのかは知るよしもなし。
同時刻、とある産婦人科では奇妙なやり取りがあった。
「先生……なんど検査をしても能力がわからない赤ちゃんがいるのですが」
「え!?そんなことあるわけないじゃない!もう一度検査をしなさい!」
「はい……でも……」