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Blog.(無題)【20XX.03.24】 3

 暴れ出したそれを強く握りしめると、握った部分から黒い汁がしみだした。重油のような粘り気があり、刺激臭を放っている。びくんびくんと波打ちながら、亀裂から汁が溢れだしていく。1リットルほど絞り出すと、それは大人しくなった。


 辿り着いた場所は、鬱蒼と生い茂る森の奥。木々の密度に秘匿されたくぼ地は、ひどく空気が淀んでいる。ここで肉を捨て、土へ還ることは、咎められるようなことではない。


 この一帯にある樹木はすべて、ねじれている。空間的に、精神的に、ねじれている。ひしゃげた枝が周りの枝々と絡みあい、軋んだ音を立てていた。

その中のひとつ、老いて腐りかけた樹木のわきばらに、背負ってきたそれをずぶりと刺し入れる。根は狂おしく幹を掴み、すぐにそこに馴染んだ。


 生ぬるい呼吸をはじめたそれに、木々たちがざわめく。すると薄気味悪い地鳴りが響き、雨が降り出した。老木に根付いたそれは、すでに全体を飲み込みつつある。


 手早く、済ませなくては。


 私はそれの幹に腕を突っ込んだ。いびつな空洞が穿たれて、奥には赤い塊が見えた。


 丁寧な仕草で、塊を取り出す。ねちりと糸を引いていて、ねばりけと光沢のある、禍々しい赤。目ざめたばかりの種子は、どくんどくんと脈打っている。


 種子を取り出すと、それは反時計回りにからだをねじった。しばらく小刻みに震え、やがて動きが止まったとき、もはや周りの木々と区別がつかなくなっていた。


 連鎖する。私は観察する。私は釈迦となる。

 そして私もまた、観察されている。


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