序章 神器
分けていたシリーズを一つにしました★
内容は変わっていないので、緑の丘を既読の方は、読まなくても大丈夫です
地面一面に緑の草が咲き乱れる丘の隅に蔦が絡まる洞窟があった。人が足を踏み入れる事が殆どないからか、入口がどこにあるかさえ見えない。
「これが……神器……神の剣」
恍惚とした表情で呟いた男が剣に触れようと手を伸ばしたが、剣をつかむ事も無く薄い幕のようなものに弾かれた。パチン、という音に軽く舌打ちをする。
触れない可能性を考えてはいたが、もしかしたらという一縷の望みをかけてここに来た。最も今日は様子を見るだけのつもりだったから、大して問題は無いが。
グルリ、と洞窟の中を見回した男は、神器の後ろ側の岩肌に何か文様のようなモノが描かれているのを見つけた。この場所に何かが書かれているなんて知らなかった。恐らく誰も知らないのかもしれない。この場所に足を踏み入れる命知らずが彼以外にいるはずも無い。彼にしても、今、この状況でなければこんな所に来ようとさえ思わなかったはずだ。
岩肌に彫り付けられた文字は、長い年月を経ているように見えるのに、同時に新しいようにも見える。強い、強い魔法でコーティングされているのが今の彼にもわかった。魔法が使えない状況下であっても魔力が消えるわけでは無いから、感じ取る力くらいはある。
壁の文字に目を走らせた彼の目が大きく見開かれた。唖然と目を見張り、何度も何度も読み返す。
「双子なんて……いるはずが……」
ポツリと呟いた彼の脳裏に二人の少女の顔が浮かんだ。全く繋がりが無いように見える彼女達の顔の造作が良く似ている事を彼は知っていた。もし、あの二人が……。
「使えるかもしれない」
男の顔に満足そうな笑みが浮かんだ。これで、あいつ等にわからせてやる事が出来る。自分達が間違っていた事を知って、悔いればいい。……その時には既に全てを失っているだろうが。
男のクツクツとした笑い声がいつまでも洞窟の中に響きいていた。その楽しげな、どこか狂気を孕んだ声を聞いた者はいない。




