3 肖像画の間
「こんな所に隠し通路があったのか……」
呆れたように先祖達の肖像画を飾ってある部屋に入った兄のウィリアムの言葉にクレアが小さく首を振った。
「違うよ。……本の登場人物に命を与える、っていう異能を持つ子に会ってみたくて秘密裏に造ったの」
「何で?」
ウィリアムの疑問も最もだ。何せ今回の事件が無ければウィリアムはディオスの事を知らずに過ごしたし、何故、クレアがディオスに目をつけたのかも判らない。
「初代国王であり、初の異能者で、そして化け物として殺されたリアン様の異能は本の登場人物に命を与えるものだったから。……面白半分で顔を見てみたかったの。でも、会ったら、物凄く驚いた」
クスクスと笑みをこぼすクレアにウィリアムが軽く首を傾げる。
「何に?」
「これ、ソレーユの部屋に通じる入口を隠してあるんだけど、この絵がリアン様よ」
「え……?これ……」
唖然と驚いたように目を見張るウィリアムの態度が嬉しかったのか、クレアは楽しそうに笑みをこぼした。
「そ、そっくりでしょ、ソレーユに」
そう、そこに描かれていたリアンは、ディオスと瓜二つ。双子といっても通るくらいにそっくりだった。恐らくリアンとディオスが並んで立って区別のつく人間なんていないかもしれない。
クレアはそのリアンの肖像画に掌を当て、魔力を流し込む。強い魔力の奔流と共にその肖像画に道が開いたのが判った。それにウィリアムが目を見張る。けっして、その魔術に対してではない。これは初歩を応用すれば学院の生徒でも使える移動魔術だ。しかも一度道を作ってしまえばその後は大した苦労もなく多少でも魔力を持っていれば通る事が出来る。ウィリアムが驚いたのはそれを造った場所だ。まさか、先祖の肖像画が並ぶこの場所で……
「おい、ちょっと待て。リアンの事は隠された真実だろ?今は王である兄上ですら知らない。初代国王だって実際の二代目の名になっているのに……リアンの肖像画があるか!!」
怒鳴りつけるウィリアムにクレアが再び笑った。ここ数日、何故かクレアは異様なほどに楽しそうだ。
「や~~っと気づいたの?兄様、遅すぎ。これは、私が子供のころにここでこっそり遊んでいた時に偶然見つけたの。初代国王の肖像画の後ろに隠されていたの。それは私が作った複製。本物は通路にあるわ」
ニコリと笑い、絵の中に消えるクレアをウィリアムは慌てて追いかけた。
クレアがウィリアムを連れてやって来たのは、むき出しの土の壁が見える手作り感満載の通路だった。これを一体どれくらいかけて造ったのか、考えただけで感服する。
「これが、本物の肖像画」
クレアに見せられたものは、土の壁に掛かっていた。確かにとても綺麗で、さっきの複製とは区別がつかない。だが、どこと無く荘厳な思いすらもする。やはりアレはまがい物だったのだと実感できる何かがこの絵から感じられた。
「兄様、早く行こう」
その後その通路を使って部屋を訪れたウィリアムを驚いた目で唖然と見つめディオスの姿があった。




