転校→新転地前
「…。」
「あれ、もしかして人違いだったりします?」
いや人違いではないのだが、なんでこの子は俺の名を知っているんだ?てか第一この子誰!?ていうか、かなり泣きそうになってるし!
知奈と名乗った女の子は涙目になりながら「ふぇ、どどどどうしよう。違う人に声かけちゃったよぉ」と今にも泣きそうである。
「ああ、いや、大丈夫だよ。俺は三原優一、よろしく」
取り敢えず泣かれると困るので落ち着いてもらおう。
「な、なぁんだ、早く言ってくださいよ。人違いでどうしようかと思ったんですよ」
いや聞こえてたよ、めっちゃ焦って「どどどどうしよう」とか言ってんの。
と思ったが流石に言うほど馬鹿ではない。
「ではでは、改めて。」
こほんと咳払いをして改めて彼女は自己紹介をした。
「白彩学院2年の高瀬知奈です。これからパートナーとして一緒に頑張っていきましょう。よろしくおにぇが…よろしゅ…」
なるほど、どうやらかなり天然らしい。というかドジなのか?
「うん、まぁよろしく(^_^;)」
因みに彼女は若干泣き顔
「あ、はい。まずここから青葉町行きの電車に乗ります。」
「え、青葉町?」
「はい」
青葉町とは俺が住んでいる上野原から電車で約1時間離れた市である。過去に空港ができるとかで鉄道会社はいち早く地下ホームにしたが、結局地元住民の反対が強く建設は見送りになり今ではただの小さな市だ。
「そんなとこに学校なんてあったかな?」
「それはついてからのお楽しみです」
そう言うと彼女、もとい高瀬さんは俺の手を引き駅の方へと歩きはじめた。
改札を通り、電車に乗り込んだ俺たちは平日の昼間であり唯でさえ人が乗らないのに加えて人口の少ない市に行くので、更にガラガラで殆ど空いる席に座った。
初夏の前辺りであるこの季節は気温もちょうどよく、陽の光も心地良いので居眠りするにはちょうどいいと考え始めた頃には高瀬さんはくぅくぅと寝息を立てていた。
終着駅に近づくと車内アナウンスが入った
『まもなく、青葉町ー青葉町ーお出口は右側です。この電車は回送列車となります。車庫に戻りますので、ご乗車できません』
車内アナウンスが終わった後も高瀬さんは眠りながら「見える!私にも敵が見えるぞ」とか「ソ○モンよ私は帰ってきたー!」とか「俺達がガ○ダムだ!」など寝言を言っていたのは公然の秘密である。て言うかなんで全部ガ○ダムネタなの!?
もうすぐで終点につくのに寝ているとは流石だが俺はそろそろ起こすことにした。
「高瀬さん、高瀬さん。もうすぐ付きますよ」
「ふぇ?もう着きましたか?」
「ええ、もうすぐ青葉町ですよ」
我ながらどっちが案内役なのか分かんなくなるな
「あ、なーんだ。まだじゃないいですか。もうびっくりさせないで下さいよー」
「いや、もうちょっとでしゅうて…」
「あー、そこで降りないので安心してください」
「………はい?」
「あと、これ車掌さんに見せて来てください」
彼女から渡されたのは1枚のカードのようなものだった。自動車免許みたいなものだが、明らかに違うのは上に赤い帯に白文字で『特別外出許可証』と書いていることだった。
「あの、これって」
訳が分からないので聴き直そうとしたら、高瀬さんは早くもくぅくぅと寝息をたて夢の世界に行ってしまわれていた。
「はぁ」
取り敢えず車掌に見せに行くか。
暫くして電車は定刻通り駅に着いた。
俺は駅に着いたと同時に車掌に話しかけ、高瀬さんから借りたカードを見せた。すると車掌は「あー、はいよ」というと無線でどこかと通信を始めたかと思うとすぐに戻ってきて「すぐ出発するからちょっと待ってな」と言った。
訳が分からないまま座席に戻ると、高瀬さんは夢の世界から無事生還していた。
「あ、おかえりなさい」
満面の笑みで迎えてくれた。うむ、悪くない。ではなく
「そろそろ、行き先を教えてくれないか?」
さすがに行き先も分からないままでいるのはあまりいい心地がしない
「いいですよ。私たちが行くのはこの先の澄乃橋市です」
あっさり答えやがった!今までモヤモヤしていた自分がバカみたいじゃん!
「って澄乃橋?そんな所あったっけ?」
「はい、通称『学園都市』なんて呼ばれてるんですよ」
『学園都市』
なんだかすごい所に向かってんだなぁと、俺は気が遠くなりそうだった。
誤字脱字があるかもしれませんがご了承ください。