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プロローグ
私は今、親友と最後の酒を飲み交わしている。
この親友は明日死ぬ。それは不可避だ。
故に私はこの国を勝利に導ける。
「酒がうまいな……」
「あぁ」
いざという時のために取っておいた秘蔵の酒。
彼が気前よく飲み干していく中
私は口に運ぶのをためらっていた。
友は涙を流すことも、
怒りをぶつけることも、
喜び叫ぶこともなかった。
ただ、心底愉しそうに酒を飲んでいた。
彼は私に気を使っている。
だから何も見せない。
平静を装っている。
そんな相手の心理ばかりが頭に入り込む。
無意識に相手を観察していた。
彼は誰よりも喜怒哀楽が豊かで、
それでいて戦場では常に冷静沈着。
戦えば傷一つ負わず、負けを知らない。
そして誰よりも人に好かれたこの男を、私は『殺す』のだ。
一方の私といえば。
気の利いた言葉の一言すらかけることができなかった。
戦場は盤上のコマのように操れる自分だが
友人1人を労う言葉の一つも思い浮かばないのが
私という人間の限界。
親友は最後に私の肩を軽く二度叩くと
「後のことは任せた」
そう言うと、友は去っていった。
私は今でもわからない。
選ぶことが正解なのか否か。




