表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/7

6、賽銭を投げなかったからって……

 週末、フータとデートに行った。

 私は自転車を持ってないから、パパのを借りて、フータと2つ隣の駅まで頑張って漕いだ。


「こんな、とぉーいの?足パンパンなんですけど」


 早速、弱音を吐く私。


「もうですか?僕はまだ行けますけど」

「おかしいな、フータ足遅いのに……」

「なんか言いましたか?」

「言ってない」


 よく、正月のテレビでやってる大きな寺だか、神社だかに来た。


「手、合わせようよ」

「お賽銭は投げるんですか?」

「私の笑顔で支払う。5円分の価値はあるはず」

「泣いた顔は20円分の価値がありました」

「4倍に跳ね上がるの?そっちの方が得じゃない?」

「「あははは」」


 フータと話すの楽しい。

 フータと居ると幸せ。

 フータのこと好き。


「ここ、涼しくていいね」


 水筒飲んじゃったから、手洗うところの水飲んだ。


「おにぎり食べましょう」

「玉子焼きも作ってくれたんでしょ?」

「はい。他におかず無いですけど、玉子焼きは甘いのとしょっぱいの、2種類あります」

「マジでー!サイコー!」


 もう、私たちは一緒に住んでる、同棲だね。

 エッチなことはしてないけど、フータはまだ高2だしね。

 私も見た目はモテそうだけど、性格こんなだし、男性経験とか皆無だよね。


「帰り、自転車漕げます?」

「漕ぐしかない……」

「ダイエットと思って、頑張りましょう」

「私はダイエットなんて必要ないの」

「おっしゃる通りです」

「「あはははは」」


 帰りは行きよりも車の量が多かった。


 パパパパパ~!


 大きなクラクションを鳴らされた。


 あっ、ペロリンだっけ?ピロリンだっけ?

 あの日、ほんの少しだけ会った顔、今、思い出した……


「え?」


 なんで、こっちに突っ込んでくんの?


 痛いじゃん!


 フータ!


 声が出ない。


「正子さん!」


 フータ、危ないから。


 こっち来なくていいよ。


 賽銭ケチった罰かな……


 ばち……あたったのかな……



 ●●●




「そんなこんなで、私は地獄に落ちたって分けですか?」

「お前、閻魔大王様にそんな口を聞いては……」

「だから!お前って言わないで!正子なの!」

「正子」

「何?」

「ここがどこだか分かっているのか?」

「地獄の入り口じゃない?」

「その通りだ。私は地獄の番人、閻魔だ」


 そんなの秒で分かるし。

 どこからどう見ても閻魔だし。


「で?」

「嘘をついている者の舌を抜く」

「いーじゃん!話、早いじゃん!」


 嘘なんてついてないから、さっさと無実、証明して見せるし!

 私は閻魔の近くまで走って行って、舌を「べぇ~」と出した。


「何をしてるんだ?」

「抜いてごらんよ!私、嘘ついてない!犯罪してない!」


 それにしても閻魔ってデッカイ。

 足の親指だけで、私の背と同じくらいあるんじゃない?

 フータに教えてあげたいな。


「後悔するなよ」

「おっけ」


 閻魔が爪の先で私のベロを引っ張ってる。

 痛くも痒くもないって言いたいところだけど、若干、くすぐったい。

 ウケる。フータに話したい。


「こ、れ、は……」

「ね?分かったでしょ?抜けないでしょ?」


 小さな鬼が閻魔の近くでひそひそと話している。


「早く元に戻してよ」

「ちょっと待て」


 どんだけ待たされるのかな。

 閻魔も聴取の記録残したりするのかな。

 パソコン入力な下手な警察官を思い出して、ちょっと笑った。


「お前は……正子は、ここに手違いがあって来たようだ」


 小鬼の書類を見た閻魔が、怖い顔でこっちを見た。


「でしょ?謝らなくてもいいよ。閻魔が悪いんじゃないもんね。フータのところに戻してくれれば、それでいいから」


 フータってば驚くだろうな。

 私が地獄の入り口で閻魔に会ったって言ったら、なんて言うんだろ。


「正子は既に死んでいる」

「え?」

「だから、行き先は天国か地獄しかない。生き返ることはない」













 やば













 しろ





 頭、真っ白。

 いけな。なんにも考えられなかった。


 でも、そーだよね。

 ペロリンだかピロリンだかの車に引かれちゃったもんね。


「そっか、死んでるのか……なら……」

「なら?」

「もう、どっちでもいいよ」

「天国でも地獄でもいいと言うのか?」

「うん。どっちでもいいよ」

「なぜだ、正子」

「もうフータに会えないなら、そんなの関係ないし」


 閻魔は大きな溜め息をついた。

 溜め息をつきたいのは、こっちの方なんですけど。


「正子よ、投げやりな態度は後悔を招くぞ」

「私は投げやりなんかじゃないよ」

「どっちでもいいはずがないだろ?」

「ホントに、どっちでもいい。閻魔の都合のいい方で構わないよ」


 閻魔はゴホンと大きな咳を一つした。


「一つ例外がある、がの……聞くか?」

「閻魔大王様!それは!!」

「黙れっ!わしの権限じゃ!」


 閻魔の話を遮ろうとした小鬼が怒られた。


「それ、聞かせてよ」

「わしが冤罪を犯せば話は別だ」

「冤罪」

「そうだ、罪なき人を罪あり人として裁くことが唯一にして最大の罪となる」

「私のことを地獄に送ると言うと、閻魔が罪に問われるの?」

「ああ」

「で、私はどうなるの?」

「冤罪の罪をくらった者は少なくとも天国には行ける」

「少なくとも?」

「幸運の持ち主は生き返ることがあると聞いたことがある」






短いお話でしたが、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます!

明日で最終話となります。


是非、ブクマと【☆☆☆☆☆】にポチっとなをお願いいたします!


よろしくお願いします。

あおあん

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ