表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冷血女王様は踏まれたい  作者: りりぃこ
第六章 モデル編
60/77

58 上機嫌



「好葉から来たいなんて言うなんて、珍しいじゃないの。そんなに踏みたかったの?ふふ、我慢の出来ない子ね」


 その日の夜、仕事帰りの雪名さんのマンションへ行くと、雪名さんは見たことがないくらい上機嫌になった。


 こんなに上機嫌なのは、私が酔っ払って雪名さんの顔を踏みそうになった翌日のあの時以来だと思う。



 高そうな紅茶を入れてくれて、とってもフワフワのクッションに座らせてくれた。


「好葉、いい匂いがするわ。もうシャワーも浴びて来てるのね?すぐにでもしたいんでしょう?仕方ない子ね、本当はもっと焦らしたかったんだけど、好葉が待ちきれないんじゃ仕方ないわ。私も甘いわよねぇ」


 雪名さんは私の隣に座って、私の髪をなでながら耳元で囁いてくる。



 なんだか、雪名さんなりに必死で焦らしプレイをしていたのだと思ったら、不敬ながらもなんだか愛おしく感じてしまった。



「雪名さん、最近大変みたいですね」


「そうね、大変だわ。本当に、もうクソ(自主規制)ばっかりで……何で番宣なんてあるのかしら」


 雪名さんが酷い言葉を言った気がするけど、無意識に聞かないことにした。



「さて、好葉、すぐにでも踏む?それとも、ワインでも飲みながら女王様気分で踏みつける?」


 雪名さんがウキウキとワインを取り出してきたので、私は慌てて止めた。


「お酒はやめておきます。明日、午前にベイビーベイビーの撮影が入ってるので」


 その言葉に、雪名さんはピタリと止まった。


「撮影?」


「あの、テスト撮影ですけど。あと、社長さんと面接が」


「大事じゃないの」


 雪名さんはそう言うと、急いで洗面所の方へ向かい、オイルとパックを持ってきた。


「そんな、ここに来てる場合じゃないわ。ちゃんとシャワーあとにスペシャルケアした?」


「スペシャルケアってしたこと無いです」


「はぁ?魅せる仕事のくせに、ケアしないとかバカなの?」


 辛辣な雪名さんが登場した。


「いつも足に使ってるオイル。パッチテストは済んでるから全身に使いなさい。このパックも、好葉に一度使ったことがあるから寝る前に使いなさい。よかったら参考にカタログ何個か持っていきなさい。あと、早めに寝ること!クマなんて作ってベイビーベイビーの撮影なんてさせないわよ」


 雪名さんの勢いに呑まれそうになりながら、私は高そうなオイルとカタログを受け取った。


「で、でもこれ高級オイルじゃ」


「こういう時に使わなくていつ高級オイルを使うの?」


 結構通常時に足に塗られてましたが!?


「早く帰りなさい。そして早く寝なさい」


「なんか私が来た意味、全く無かったですね」


 私はすごすごとオイルとパックを有り難くカバンにしまいながら言った。


 雪名さんは、何かを悩んでいるかのようにちょっと怖い顔をして、そしてストンと偉そうにソファーに座った。


「タクシーが来るまでちょっと時間があるから、足くらいなら踏ませてあげるわ」


「え?」


「踏みたいんでしょ」


 雪名さんはそう言って、私にキレイな足を差し出した。


「ほら」


 別に踏みたくは無いんだけど。


 でも女王様が言うのなら逆らうわけにはいかない。


 私はそっと自分の足を雪名さんの足に乗せた。そしてグリグリと踏む。


 雪名さんのため息が聞こえる。



「来た意味がないわけ無いじゃない。好葉が私を求めて来たってことがたまらないわ」


 踏まれながら雪名さんが言う。


「前も言ったでしょ。好葉の足を体感したら、もう二度と他の人の踏みつけでは満足出来ないって。絶対に目移りすることは無いからって。だから、心配しないで仕事頑張りなさい」


 まるで私が雪名さんが目移りするのが心配してきてるかのように言ってくる。


 別にそれを心配して来たんじゃなくて、雪名さんのストレスが爆発するのが心配だったんだけど。



「わかりました。頑張ります」



 雪名さんが私の仕事を大切にしてくれているのはわかるので、私は大きく頷く。



……


 そして、私は無意識に雪名さんの言葉を根拠もなく信頼していた。



 もし、私より条件のいい人が現れたら、目移りすることだってあるのは仕方が無いことなのに。


 雪名さんはそんな事をしないと、私は完全に慢心していたのだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 焦らしてるつもりな雪名さんが可愛すぎるー!! それに好葉ちゃん一筋宣言がまた飛び出したり、雪名さん最高!! でも何だか波乱が起きそうな予感!一体なにが起きるのかドキドキします!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ