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冷血女王様は踏まれたい  作者: りりぃこ
第六章 モデル編
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57 白井さんの策略


 ※※※※


 ツアーの地方公演がある程度終わり、少し繁忙期が落ち着いてきた。



 私はその日、用があって事務所に来ていた。



 事務所の休憩室の所に白井さんがいるのを見つけたので、私は駆け寄った。


「おはようございます。お疲れです」


「あー、牧村ちゃん、おはようございます。何か久しぶりって感じだね。忙しいみたいで何より」


「いえ、おかげさまで。雪名さんも今忙しいみたいですね」


「そうだね。映画公開で、雪名の大嫌いな宣伝の為のバラエティ出演、いっぱい入れちゃったから毎日凄くご機嫌斜めだよ」



 雪名さんの主演する「スターライトブーケ」が今月には公開される。


 それで雪名さんには嫌いな仕事で多忙な日々がやってきたらしい。



「私達がライブシーンでチラッと出ることも公表されて、もうファンからおめでとうメッセージが凄いんですよ。ちょっとしか出てないのに申し訳なくて」


「でもいいシーンになってたよね」


 白井さんが言ってくれる。



「そういえば、最近雪名、牧村ちゃんを呼び出さないでしょ?」


「そうなんですよ。いつもならそろそろ呼び出されてもおかしく無いのに。逆に少し心配で」


 私は頷く。いくら忙しいからといっても、雪名さんは定期的に私に声をかける。それが最近お声すらからかからなくなってしまった。もしかして、何度か仕事を理由に断ったからお怒りなのだろうか。

 私が不安そうに首を傾げていると、白井さんは悪戯っ子のような顔でこっそりと耳打ちしてきた。


「実はね……。雪名、牧村ちゃんに焦らしプレイしてるの」


「焦らしプレイ……?」


 私はオウム返しをする。


「牧村ちゃんツアー中、雪名に『最近会えなくて、体中をめちゃくちゃに、もう嫌って言われても止まらないくらいに踏みたい衝動に駆られてきた』って言ったんだってね」


 そんな風には言ってない。完全に尾ヒレ背ヒレがついている。


 それに……


「あれは冗談で……」


「私は雪名に、それは牧村ちゃんのリップサービスでしょ、って言ったんだけどさ。雪名は『好葉がこの私に冗談でそんな事言うと思うの?』って答えるのよ」


「うっ……」


 冗談でした……。


「会えないと牧村ちゃんが踏みたい衝動にかられる→もっと会わなかったらもっと踏みたい衝動が出てくる→もう少し焦らしたら、顔を踏んでくれるに違いない!って思ったらしくて。だから雪名、牧村ちゃんに焦らしプレイをすることにしたみたい」


「そんなっ」


 大変だ。雪名さんが、一切私にダメージの無い焦らしプレイを始めてしまっている。


 そんな事をしたら、一番溜るのは雪名さんの方だ。そしてそんなに溜められて、久々に会った時に高度なプレイを求められては困る。


「駄目です、無理はしないで。雪名さん今日お仕事何時に終わりますか?私踏みに伺います!」


「あ、そう?じゃあ終わる頃牧村ちゃん迎えに行くよ」


「お願いします!」


「助かるー。雪名そろそろ限界だったんだよねー。じゃあ、後でねー」


 そう言って、白井さんは休憩室から出て行った。



 少し時間が経ってから、何となく察した。


 あ、白井さんの策略にハマった気がする。


 ま、いっか。



 ちょっと一人で休憩室でボーッとしていると、私を探しに来たらしい赤坂さんが入ってきた。


「あ、好葉、こんな所にいたの?始めるよ、ベイビーベイビーに届ける写真の撮影と面談対策」


「あ、はいっ、ごめんなさい」


 私は慌てて休憩室をでて事務所併設の写真スタジオへ走っていった。



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