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冷血女王様は踏まれたい  作者: りりぃこ
第五章 繁忙期編
55/77

53 感染



 ※※※※



 次の日、ツアーに向かうバスの中で、私は赤坂さんから衝撃的な事を聞かされた。



「えっ!?雪名さんインフルエンザ?」


「そう、昨日白井さんに会って聞いたのよ。まあ、公表はしてないから秘密よ」


「好葉もインフルエンザだったし、今流行ってるんだね」


 爽香がのんびりと言った。


 一方で私は動揺が激しかった。


 どう考えても私のが感染ったんじゃないか。やっぱ完全防ウイルス対策に見えたけど、即席のやつじゃ不十分だったんだ。



 私は慌てて雪名さんに電話をかける。しかし電源が入っていないようで通じない。なので私は白井さんに電話をかける。


 白井さんはすぐに出てくれた。



「ああ、インフルエンザ?心配すること無いよ」


 白井さんはあっさりと言った。


「全然熱とかもそこまで高くないしね。元気なものよ」


「で、でも、雪名さんお忙しいのに……。あの、雪名さん私がインフルエンザの時に看病しに来てくれて。その時に感染しちゃったんだと思うんです」


「え?そうなの?雪名、牧村ちゃんの看病してたんだ。でも違う違う」


 白井さんは笑ってみせた。


「共演者でずっと近くにいた俳優が、インフルエンザなのに現場に来てたのが発覚してね。雪名もちょっと喉が怪しくなってきたから念の為検査したらインフルエンザだった、って顛末。発覚した時の雪名、鬼のようだったわ。『風邪ひいたらおとなしくしてなさいよ。無理して仕事来るとか、この時代にまだ昭和脳なの?』ってね」


 白井さんが肩をすくめるのが目に見えるようだ。


「タイミング被っちゃったんだね。でも、雪名のことだから、牧村ちゃん看病する時はちゃんと対策してたでしょ?『この私が対策をしくじると思うの?』って声が聞こえてこない?」


 確かにそうだけど。


「まあどちらにせよ雪名はスマホの電源切ってるはずよ。心配メッセージとかいう、邪魔なだけで薬にもならないものを受け取るのが面倒とか言ってね」


 なんとも雪名さんらしい。


 しかし、自分の時は看病してもらったのに、今の私は何もできない。今日なんか県外に行くためのバスの中だ。


「『人の事心配する余裕あるの?自分の仕事に集中しなさいよ』」


「え?」


「って、私の中に住む雪名が言ってるわ」


 白井さんが意地悪そうに笑う。


「まあ本当に気にしないで。今大事なときでしょ」


「まあ」


 心を読まれたようでバツが悪い。


「それじゃあ、雪名にはちゃんと伝えておくから、牧村ちゃん心配してたよー、治ったら踏んであげたいって言ってたよーって」


「嘘は伝えないで下さい」


 私は白井さんに苦笑いして電話を切った。



 まさか雪名さんが。風邪菌なんかも跪かせそうな雪名さんが。


 私が雪名さんが電源を入れた時用のお見舞いメッセージを入れようと文面を考えていると「好葉ー、前の席きてー」と呼ばれた。


「ファンクラブ用の動画とSNSあげる為の写真撮るから。はい、奈美穂の隣に座ってー。おやつ食べながらインタビュー答えてもらいまーす」


 突然バスの中で撮影会が始まり、私はスマホを置いてインタビューに答え始めるのだった。









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