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冷血女王様は踏まれたい  作者: りりぃこ
第四章 好きな人編
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49 カムフラージュ



 その日、私は雪名さんに呼ばれてドラマの現場にお邪魔していた。


 ドラマの現場は初めてだった。


 映画にお邪魔した時も思ったけど、人がいっぱいいて、緊張する。


「あれ、花実さんの後輩ちゃんじゃない?何?見学?」


 前の飲み会の時に一緒だった人が数人いて、声をかけてくれた。


 ところで雪名さんは、どこなんだろう。呼び出しておいて全然見当たらない。


「花実さんなら楽屋にいるよ。今川さんと一緒に」


 親切なスタッフが教えてくれた。


 私に文句を言っておいて、男性と二人で楽屋にいるのは良くないと思います。私は急いで雪名さんの楽屋へ向かう。



「来たわね」


 相変わらず偉そうに、雪名さんはパイプ椅子に座っている。


 そして、今川龍生もいる。


「あ、おはようございます」


 私は慌てて挨拶すると、今川龍生は軽く手を上げた。


「ああ、好葉ちゃん、おはよう、今日は……」


「おはよう『ございます』、ですよね?今川さん?」


 雪名さんが高圧的に言う。


「あ、あはは、そうだね。おはようございます、好葉ちゃん」


 今川龍生は言い直した。


「雪名ちゃんから聞いたんだけど、ゴメンね、なんか俺のせいで誤解があってファンに脅されたみたいで。いやぁ、まさかそんな風になるとは……」


「今川さん?」


 雪名さんがまた高圧的に声をかける。


「それが謝る態度なんですか?」


「謝る?そ、そんな謝らなくても」


 私は慌てて言った。別に今川龍生は悪くはない。


「好葉は黙ってなさい」


 雪名さんに言われて、私はすぐに黙り込んだ。



「今川さん?私は機会を与えて差し上げてるんですよ?今川さんが好葉に謝りたいと言うから、この私が場所を提供して、好葉を呼び出して差し上げたんですよ?」


「は、花実さん、今日キャラ違うくない?」


「話をそらさないでいただけます?」


 雪名さんの圧力に、今川さんはタジタジになっている。



 雪名さんって、今川さんの後輩では?芸能界って上下関係厳しいはずでは?



 私が混乱していると、今川龍生が、真面目な顔で私の前に立って頭を下げた。


「でも、本当に悪かった。俺のせいで迷惑かけた」


「い、いえ、本当に全然今川さんは悪くないです」


 私は勢いよく首をふる。


「いや、これは俺が気をつけるべきだったよ。いつもなら、売名目的で近づいてきた子は上げ膳据え膳で手を出しちゃうけど、そうでない子にはちゃんと距離を取ってたんだ。だけどあの日はちょっと間違えた。自覚はある」


「今川さん……」


 途中なんか最低っぽい事を言ってた気がするけど。


「あの、私も今後気をつけますので、もう大丈夫です」


 私は必死になって今川龍生に顔をあげさせ、そして雪名さんにも、「もう大丈夫なので」と訴えた。


 雪名さんは、今川龍生に近寄ると、ニッコリと微笑んだ。


「よかったですねえ、許してもらえて」


「ねえ、花実さん、今何かの役に入ってる?高圧的なお嬢様とか」


 今川龍生が困惑したようにたずねると、雪名さんはほんわかとした優しい顔になって、


「あはは。そうかもしれません。ゴメンナサイ」


 と、一切悪びれもない口調で言った。



「それにしても、留美さんに怒られないんですか?」


 雪名さんは楽屋の椅子をかたづけながらたずねた。


 今の話で何で留美さんが出てくるんだろうか。


 今川龍生は照れくさそうに答えた。


「まあ、これで留美との事をカムフラージュしてるとこもあるからな」


 え?カムフラージュ?わたしは理由がわからずキョロキョロした。


「今川さんと留美さんが長いこと付き合っているのは、俳優仲間の間では有名な話よ。公然の秘密ね。それなのに売名目的で近づくクソ女が多いけどね。まあそれに手を出しちゃうクソ男がいるのがだめなんでしょうけど……」


「ねえ花実さん、今度は毒舌キャラの役作りしてる?」


 今川龍生はまた困惑しながら言った。


 雪名さんは「そうですよ」とまた悪びれもなく笑った。



 何だ、そうなのか。


「雪名さん、何ではじめに言ってくれなかったんですか?」


「秘密だもの」


「公然の、でしょう」


 私は不貞腐れる。知っていれば余計な勘繰りなんかしなかったのに。


 しかし、雪名さんは理由がわからない、とでも言うように首を傾げた。


「今川さんが留美さんと付き合っているのと、私が今川さんを尊敬しているのは関係ないでしょう?」


「え、今度はツンデレ?」


 今川さんは更に困惑している。


 雪名さんは今川さんを無視して続ける。


「そもそもはじめから言ってたでしょ。私は尊敬してるだけだって。この私が恋愛すると思うの?」


「……まあそうですけど」


 私は頷く。



 私は雪名さんには、雪名さんにぴったりな素敵な男性と恋愛してもらいたかっただけなんだけど。


 別に恋愛してほしくないわけじゃない。


 ……そして、何となくこの思想が、シュウヘイさんに近くて、あんまり良くないのも薄々わかっている。



「別に、恋愛なんかしなくても、恋人に求めることは全部好葉で賄えてるしね」


 え?雪名さん恋人に踏まれたいんだろうか。


「言っておくけど、違うわよ」


 表情から思考を読まれたらしい。


 だとしたら、私の何が賄えているんだろうか。



「ねえ、俺今、何見せられてる?」


 更に更に困惑する今川さんに、雪名さんは微笑んで、「すみません、いっぱい役作りしちゃって」とまた悪びれもなく答えた。




第四章 好きな人 完


第五章へ続く……









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― 新着の感想 ―
[良い点] 実質的に好葉ちゃんは雪名さんの恋人要員だった!? 好葉ちゃんの雪名さんに対しての想いもだんだんと形が見えて来てる予感!! 2人の今後の関係はどうなるのかますます気になります!!
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