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冷血女王様は踏まれたい  作者: りりぃこ
第四章 好きな人編
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46  逢引みたいな写真



 次の日、私は雪名さんのマンションから直接仕事に向かい、収録とツアーの打ち合わせを終えると、結構疲れがどっと出てしまった。


 これは甘いものでも食べるしか無い、とお気に入りの和菓子屋へ向かう。



 雪名さんとの初デートの場所。ゆっくりとコーヒーを飲みながらお饅頭を接種する。ついでに可愛い角砂糖をSNSに上げる。



 甘いものを充電して元気が出てきたので、ちょっと買い物でも行こうかと駅に向かおうとした。


 ちょうどその時、スマホにメッセージが入ってきた。雪名さんだ。


『なんか、ブサイクな絵のハンカチとシュシュ忘れていってるけど』


「あ、マイカちゃんの」


 そういえば、雪名さんのマンションで顔を洗わせて貰った時に、使ったんだった。そして忘れてきてしまったらしい。


 マイカちゃんにも、後でSNSに上げてね、と言われていたのを思い出した。


『後で取りに行きます』


 そうメッセージをいれると、すぐに雪名さんから返信が来た。


『私今から仕事に出るから、〇〇スタジオ。来るならそっちに来なさい。持って行くから』


 ここはちょうどスタジオの近くだ、と思い、私は承諾のメッセージを送る。



 雪名さんが来る間、ちょっと暇を潰そうとその辺の本屋に入った時だった。


「牧村好葉ちゃん、ですよね」


 後ろからそっと声を小さく声をかけられた。


 振り向くと、背の高い男性が立っていた。


「えっと……」


「あ、すみません。急に声をかけたりして。俺、LIP−ステップのファンで」


「あ、ああ、そう言えば握手会で見たことあるかも」


 背が高くて、ちょっとモゾモゾ喋るタイプの人だ。この人も、トモさんほどではないがよくライブにも来てくれているので、思い出せばすぐにわかる。


「シュウヘイさん、でしたよね?」


「そうです!覚えててもらえて嬉しいなぁ」


 シュウヘイさんはニッコリと笑った。


「あ、すみませんプライベートに声をかけて」


「ああ、いえ」


 私は営業スマイルを浮かべてみせた。


「応援ありがとうございます」


 すると、シュウヘイさんはおもむろにスマホを取りだした。あれ、もしかして写真希望かな、ここお店の中だから迷惑かけたらだめだから外に行ったほういいかな、なんて呑気に考えていた時だった。



「これ、見ていただけますか?」


 そう言って、シュウヘイさんは私にスマホを渡してきた。そこには一枚の写真があった。


「え?」


 私は一瞬ポカンとしたが、すぐに写真の意味がわかって青くなった。



 そこにあったのは、昨日の飲み会での写真だ。トイレの近くで今川龍生と話をしていた時の写真。そしてこの角度はまるで。


「昨日、逢引きみたいな写真が撮れてしまって」


 シュウヘイさんは悲しそうな顔で言った。


「俺、あの居酒屋でバイトしてて。昨日は芸能人いっぱいの席があるっては聞いてて。まさかそこに好葉ちゃんがいたなんて思わなくて。俺、ずっとファンだったからこっそりスマホ持ち込んであわよくば写真取れたらなあって思ってたら、まさか好葉ちゃんから話しかけてくれるとは思わなくて」


「話しかけ?」


 私は必死に昨日の記憶を蘇らせる。そう言えば、トイレの場所を聞いた男性の店員さん、結構背が高かった気がする。もしかしてあの人がシュウヘイさんだった?


「好葉ちゃんがトイレから出てくるのずっと待ってたんだ。そしたら、まさかあのプレイボーイの今川龍生と仲良くしてたなんて」


「ち、違」


 ただ、本当にただチラッと話をしただけ。確かにあの人ちょっと距離感近かったけど。


「何も無い。仲良くとか無い」


「本当??本当かどうかよく聞かせて?近くで個室居酒屋あるんだけど、そこで一緒にお話させてよ」


「いや、そのこれから用事が」


「俺、ここで断られたら、ショックで間違えてこの写真ネットにアップしちゃうかもしれない……」


 シュウヘイさんは悲しそうに、そして厭らしい顔で言った。


「ねえ、いいでしょ?」







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