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冷血女王様は踏まれたい  作者: りりぃこ
第四章 好きな人編
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41 どんな人が似合う



 あの後冷静になって考えてみたら、雪名さんを飲み会に行かせて交流させたい白井さんの思惑に嵌ったような気がしてきた。


 それに、やっぱり雪名さんだっていい大人だし、誰に憧れて誰を好こうと自由なんだから、私が出しゃばるのは迷惑かな。



 そう思っていたが、雪名さんが撮影に行っている間に、また週刊誌で今川龍生の熱愛報道が出た。今度のお相手はモデルさんだった。


『趣味の合う友達で、仲良くさせてもらってますよ。確かにマンションに二人きりで一緒にいましたけど、楽しくお話しただけですよ。やだなぁ、何を想像したんですかぁ?』


 飄々と答える様は完全に慣れていて、何だかムカついてきた。


「やっぱりダメ。雪名さんには相応しくない!」


 私は余計なお世話と知りつつも、鼻息荒く週刊誌を放り投げた。



「何何ー、珍しくご機嫌斜めじゃないー?」


 私が週刊誌を放り投げたのを見ていたらしい爽香が、ニヤニヤしながらやって来た。


 馴染の小さなライブハウスでのステージ。週刊誌も楽屋の備品な事を思い出して、私は慌てて拾ってホコリをはたいた。


「ちょっとプライベートな事で取り乱してた……。……破れてたりしたらちゃんと買い取るから見逃して下さい……」


「あーあ、可哀想な週刊誌ちゃん。八つ当たりされちゃってさ」


 爽香はイジワルそうに笑った。


「奈美穂は?」


「緊張でトイレに籠もってる」


「あれ。そんなに緊張することあったかな」


「元彼とか見に来てるんじゃない?」


 爽香は適当な事を言う。


「そんなことより好葉!赤坂さんから聞いたけど、来週花実さんとなんか飲み会行くってきいたんだけど!?」


「うん、そうだよ」


「いいなぁ〜ていうかいつの間にそんなに仲良くなってたのー。気づいたら二人共下の名前で呼び合ってたしさ。女優さんの飲み会にまで連れて行ってもらえるなんて……いいなぁ!!やっぱり酒の飲める年齢まで待つしか無いの!?」


 興奮状態になっている爽香を、私はドウドウと落ち着かせた。


「今度そういうのがあったら爽香も誘うから。今回はちょっと別件が……」


 モジョモジョと最後を濁らせた。ジトッとした目で見てくる爽香をどう誤魔化そうかと考えていた時、奈美穂が楽屋に戻ってきた。


「あ、奈美穂、緊張収まった?」


 話をそらすように私は奈美穂に声をかけると、奈美穂は疲れた顔をしてみせた。


「どうしたの?このライブハウスでそんなに緊張するの珍しくない?」


「元彼見に来てるんでしょ」


 爽香が茶化すように言うと、奈美穂はため息をついた。


「違いますよ。単にちょっと寝不足で胃腸の調子が悪いだけです」


「やめてよ、ちゃんと寝て。奈美穂の胃腸はみんなの胃腸だよ」


 私は奈美穂の背中をさする。奈美穂は軽く私に微笑むと、少し睨んで言った。


「そう言えば、赤坂さんから聞いたんですけど、花実さんと飲み会に参加するとか」


「な、奈美穂まで」


「調子に乗って、変な男に引っかからないように!」


「は、はいっ!」


「……との赤坂さんからの伝言です」


 そう奈美穂は言うと、ニッコリとまた笑ってくれたので私はホッとした。


「まあ、真面目な好葉がどうのこうのなるとは思えないですし。花実さんだっているんだから変な人が集まる飲み会じゃないと思ってるので私自身は心配してないです」


「好葉は、真面目な男の人が似合うよ。芸能人は似合わない」


 爽香が勝手なことを言うので、少し私は口を尖らせた。


「余計なお世話ですー」


「単なる私見ですー」


 爽香は軽く言い返す。ちょっと思うところがあって、私はふと聞いてみた。


「ねえ、雪名さんにはどんな男の人が似合うと思う?」


「えー、やっぱり氷の女王様だからねー。王子様みたいな人かな。優しくてカッコいい」


「でも、本当は明るくて優しい人だし、同じく明るくて友達多そうな人もいいかもですよ」


「あー、でもちょっと男の人と付き合うとか想像出来ないなぁ」


「そ、そうだよね!!」



 私は思わず深く頷いた。そう、雪名さんに似合う男の人、と考えても、雪名さんに釣り合う男なんて想像出来ないのだ。……私より足の小さい男が存在するなら少しは考えてあげてもいいけど。



「あー、でも、逆に男らしい人もよくない?ほら、ちょっと遊び人だけど、俳優の今川龍生とか……って好葉、何で怖い顔してんの」


 爽香に言われ、私は眉間にシワが寄っていることにハッと気づいて慌てて顔を戻す。



 やっぱり私は、今川龍生は気に入らないようだ。





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