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冷血女王様は踏まれたい  作者: りりぃこ
第二章 映画編
20/77

20 写真


「今日美味しかったです。御馳走様でした」


 タクシーに乗りながら、私は雪名さんにお礼を述べた。


 結局食事代は雪名さんが全て払ってくれたのだ。


「靴を作ってくれただけでも感謝なのに、ワンピース用意してくれてたり、オシャレレストラン御馳走してもらったり……何かお返しできるならしたいのですが。出来たら踏む以外で」


 私の言葉に、雪名さんはいつもの不細工な笑みを浮かべた。


「いいのよ。ところで好葉、明日は早いの?」


「早くはないですが、一応午前中からレッスンがあります」


「ふうん」


 雪名さんは少し考え込んだ。


「ちょっとホテルで飲み直さない?」


「飲みなおし、ですか」


 私はちょっと警戒する。そんな私を見て、雪名さんは苦笑いをした。


「今日のところは踏んでなんて言わないわよ。別にストレス溜まってないし。まあ踏みたいなら……」


「踏みたくは無いです。でも、雪名さんが誘ってくれるなら喜んでお付き合いします」


 私の言葉に、雪名さんは不細工に微笑んだ。



 ホテルに着くと、すぐに雪名さんはシャワーを浴びる。


 その間に私は元のジーパンとTシャツに着替えようとワンピースを脱いだ。烏の行水であっと言う間にシャワーを終わらせた雪名さんは、そんな私の半裸状態を見て首を傾げた。


「あら、着替える前に好葉も浴びたら?」


「あ、いえ大丈夫です」


「いいから。どうせだし。自分の家に帰ってからシャワー浴びるの面倒でしょ?」


「まあ」


 雪名さんがそう言ってくるので、私はとりあえずシャワーを浴びて手早く洗う。あまり長い時間浴びてお待たせするわけにもいかない。


 私がシャワー室から出ると、雪名さんはバスローブ姿でテーブルにワインを並べ、そしていそいそとアロマオイルを準備していた。


「あら、早いじゃない」


 雪名さんはそう言うと、私に椅子に座るように促した。


 そして、何やら高級そうな瓶を取り出して、中身を手に取る。


「さて、ほら足を出しなさい。マッサージするわよ」


「えっ」


 私は思わず声を上げた。


「だって今日は全然踏んでないのに、それどころか色々してもらったのに。雪名さんにそんな事させるわけには」


「はあ?今日は慣れない靴履いたから疲れたはずよ。ちゃんとケアしないと」


「それはありがたいのですが申し訳なくて。あの、じゃあ私自分でやります」


「勘違いしないで」


 雪名さんはきっぱりと言った。


「好葉、この私がどうしてここまでしてると思っているの?この足は誰のもの?ほら、言ってごらん」


 誰のものって、私の足は私のものですけど……。でも今日色んな事をしてもらったのに、自分の足だと突っぱねる事は、私にはできない。ああ、これがもしかして必要経費……?


「……私の足は……雪名さんのものです……」


「そうでしょう」


 雪名さんは満足そうに頷くと、再度オイルを手にとって、私の足をそっと撫で始めた。


「私の足を私が大事にしてあげるのは当たり前だから。ほら好葉はワインでも飲んでなさいよ」


 そんな優雅な真似は落ち着かないのだが、雪名さんが言うなら逆らえない。私は仕方なくワインをグラスに注いで口づけた。



 雪名さんはたまに、うふふふふ、と気持ち悪い声を出しながら私の足をマッサージしている。楽しそうで何よりだ。


「こうして足をマッサージしてもらいながら優雅にワインを飲んでいる好葉は、女王様みたいね」


 雪名さんの言葉に、私はげんなりとしながら答えた。


「そんな優雅な気持ちにはなれないですよ。あ、雪名さんも飲みましょうよ」


「手がヌルヌルだもの。好葉飲ませて」


 あ、と口を開く雪名さんだが、液体を口に入れるのは難しい。


 一瞬だけ、口移しで水飲ませるエロ漫画みたいなシーンを想像してしまい、私は慌てて首を振った。


「こぼしたら申し訳ないので。あ、ストロー使います?」


 変な想像をしてしまったことを誤魔化すように急いで言うと、雪名さんは「いらないわよ」と鼻で笑った。


 本当に口移ししようとしたら、雪名さんはどんな反応をしただろうが。まあ、十中八九「やめて汚い」とか言いそうだ。



 マッサージを終えた雪名さんは、手を洗うと、ようやくワインを手にして一口飲んだ。


 そしてすべすべになった足に靴下を履こうとする私を、「ストップ」と止めた。


「それじゃなくて、こっちを履きなさい」


 そう言って、雪名さんは、あの真紅のピンヒールパンプスを取出した。


「踏むんじゃないわ。履くだけでいいのよ」


「履くだけ、ですか」


 私はアルコールも結構入っているのもあって、反論するのも面倒になったので素直にパンプスに足を入れた。今は座っているので転ばない。


「ああ、やっぱり素敵。ゾクゾクする」


 雪名さんはそう興奮したように言うと、スマホを向けて写真を撮りだした。


「靴屋さんでも撮ってませんでした?」


「撮り足りないわ。ほら、ちょっと足を組んでみて。そう、いいじゃない」


 雪名さんは次々と指示を出しながら、写真を撮っていく。そして、たまにワインを口にする。


「雪名さん、もしかして靴をツマミに飲んでません?」


「は?」


 雪名さんが怪訝な顔をしたので、それ以上は何も言わないようにした。まあ別に写真を撮られるくらいどうってこと無い。


「ねえ好葉、ちょっとだけ」


 雪名さんは、私の座っている椅子の前に正座してきた。


「ちょ、今日は踏まないんじゃ」


「踏まないけど、ちょっとだけ、座ったままでいいから」


 そう言って雪名さんは私のパンプスを履いた靴を、自分の胸元に持ってきた。まるで私が、雪名さんの胸ぐらを蹴り上げているかのようなポーズだ。


「このままよ。写真を撮るだけだから」


 そうおねだりするように上目遣いで言ってくる。


「しゃ、写真を撮るだけですよ」


「ええ」


 雪名さんはニヤリと笑いながらその状態の写真を自撮りのように撮る。


「ああ……いいわ……。今度実際にやりましょうね」


「この靴でやったら胸に穴が空くと思います」


 一応私は抗議してみたが、雪名さんは聞こえていないようで、鼻歌を歌いながら撮った写真をスクロールしている。



 しばらくそんな謎の時間を過ごしたあと、ふと、雪名さんは「ゲ」と嫌そうな顔をした。


「どうしたんですか?」


「SNS、早川結音をフォローしていいね押しておいたから確認しておけって白井さんから。ああ面倒」


 雪名さんはスマホをベットに投げ捨てた。


「白井さんに完全委託かと思ってたら、一応ちゃんとチェックしてるんですね」


「普段はしないけど、今回は共演者だから」


 雪名さんは面倒そうに投げたスマホをベットから拾うと、仕方無しにチェックしだした。


「ふうん、彼女もこまめにアップして偉い事。もう白井さんこんなにいいねしなくていいのに……」


 ブツブツ言いながらもスクロールしていく雪名さんを横目に、私も早川結音の事をネットで調べ始めた。雪名さんの共演する映画の事がネットニュースでいくつか見つかった。それにしてもそのコメントが……。


「随分と不穏なものが多いなぁ」



 雪名さんの機嫌が悪くなりつつあるので、やっぱり踏んでほしいと言われる前に、私はそそくさと帰らせてもらった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ホテルでお互いにシャワーを!?そんなことされたら鼻血が出そうな妄想をしてしまいます! それはさておき、口移しの想像しちゃうエッチな好葉ちゃん!可愛い! 上目遣いでちょっとだけってお願いす…
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