表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/1530

1/28


 お昼前。

 今日はメンクリの日。


 最近ハイボールに慣れ過ぎたせいか、飲む量が増えている。

 妻に「焼酎のように飲みだした」と言われた。

 たぶん、6杯以上は飲んでいる。

 二日酔いもあまりない。

 耐性がついちゃったのかも?


 昨日書いた作業所の思い出だが、流れでいい事があった。


 それはヤマジュンの本を僕が作業所に持ってきたことで、ある利用者と仲良くなったことだ。

 イケボで通っている子なので、ボーくんという名前にしよう。


 開所したばかりということもあって、当時仕事がなにもなく、みんなボーッとしていた。

 というか、精神疾患を抱えている人は経験があるかもしれないが、みんな精神科の薬を飲んでいるから作業所に来ても、

 副作用で寝ちゃう。

 これは飲んだことないと、ちょっとわからないと思う。

 僕も未だに二度寝しないと、しっかり一日活動を取れない。

 正直、無理していたと思う。

 

 んで、開所してしばらくちゃんと毎日来れるメンバーは限られてくる。

 みんな遠いところから来たり、疲れたり、単にキツいのだと思う。


 そんな中、僕とボーくんはほぼ毎日来ていた。

 最初は互いをさんづけして、年が20ぐらい違うので、敬語で話し合っていた。

 だが、親交を深めるために、僕は「タメ口にしない?」と提案し、彼もそれをのんでくれた。


 しかし、僕が中年なので、どうしても距離感が生まれる。

 その間をブチ破ったのが、僕が持ってきたヤマジュンだった。

 作業所でなにもやることがないので、彼は僕の持ってきたヤマジュンを何回も何回も読みふける。

 フーさん以上に。

 穴が開くくらい。

 たぶん、毎日4時間ぐらい読んでいたと思う。


 僕が隣りに座ると、彼がイケボで言う。

「ウホッ、いい男!」

 それも大きな声で、堂々と。

 僕はそれを聞いてゲラゲラ笑う。

 すると彼も調子に乗って

「いいのか? 俺はノンケまで食っちまう男だぜ?」

 と叫ぶ。


 笑っているのは僕と彼だけで、他の利用者さんたちは静まり返る。


 悪ノリが始まって、僕も乗っかる。

「やらないか?」と言うが、彼が否定する。

「違うよ。もっと腹から声を出して……やらないか!?」(イケボ)

「こう? やらないか?」

「いや、もっとだよ。やらないか!?」

 それをかれこれ20分以上二人で繰り返していた。


 フーさんは近くで他の利用者さんを指導していたが、気になるようで、僕たちのやり取りをチラ見していた。


 もっと悪ノリが過ぎて、僕とボーくんの二人は、作業所の目立つところにヤマジュンを置こうと言いだした。

 んで、運営の幹部に見せつけてやろうと。


 だが、ある朝、作業所に来たら閉まってあった。

 それを見て、僕が言う。

「あ、なんで閉まってんだよ! ボー!」

 すると彼が答えた。

「俺じゃないよ」


 フーさんが申し訳なさそうに言った。

「味噌村さん、ごめんなさい。お客様が来るから目立たないようにしました……」

「あぁ……そうでしたか」

 そして、また僕とボーくんは入口付近で、音読したり叫んで遊ぶ。


 だが、作業所には未成年の方も見学に来ることがあるので。

 愛読していたボーくんも、その時だけは、本をバタンと閉めていた。

 所長が苦笑していた。

 

 今はどうかわかりませんが、当時はそんな作業所でした。


 ではまた!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ