俺の根性が根性なんだよ
「気合い出さんかぁい!」
時代遅れな叱責が焼きグラウンド響き渡った。
「特にお前!齋藤!お前からは生気が感じられん!」
「すいません、これでも気を───」
「うるさい!口答えするな!
お前は今日のトレーニング2倍だからな!」
「はいっ!」
もう8月だと言うのに監督の声色は衰えない。
そもそも、惰性で続けてきた野球に熱意なんてものはないし、
高校時代もたまたまベスト8まで行っただけで、
大した選手ではなかったのだ。
気温も30度を超える中、俺たちは死に物狂いでトレーニングに励んだ。水も飲まずに3時間もだ。
当然それだけやって水も飲まなければ、
人間の身体は限界を迎える。それは俺も例外ではなかった。
(これまず───)
覚えているのはここまでだ。
気がつくと、俺は見覚えのない女性の前に座っていた。
「でしたら異世界転生コースということで手続きを済ませます
がよろしいでしょうか?」
「はい?」
突拍子もない話に俺は困惑を隠せない。
「手続き完了致しました。楽しい異世界ライフをお送り下さい」
俺に決定権はなかった。また意識が途切れる。
再び意識を取り戻すと、俺は壮大な野原の真ん中にいた。
どうやら俺の返事は肯定と取られてしまったらしい。
服まで全く見覚えがない。
唯一の所持品は、小さな紙切れだった。
「齋藤祐希さん!転生成功おめでとうございます!
あなたの異世界ライフを支えるスキルを付与しました!」
もう何が何だか分からない。
ただその紙には根性とだけ書かれていた。