8話 決着 拳VSダーツ
この作品はフィクションであり実在する人物、団体は一切関係ございません。また当作品は作者の思想を表している訳でもございません。
皇国ウヨーと共和国パヨン、今や二極化してしまった両国がかつて一つの国だった頃から神話より国を守る女神として祀られたミネテナの声を聞き放龍、そしてエデアを心から信じることで治癒魔法を強くする事を悟ったクルオナにより放龍は復活。致命傷を負ったエデアも回復できた。
しかし目の前には凶悪策士と呼ばれるアガムートが立ちはだかる。アルミホイルを頭、腕、胸元に巻き姑息な魔術師のアガムート伍長と決着をつけるために今、放龍は立ち上がったのだ。
「エデア、私たちのためにここまで…どうして?」
我が身を盾にして放龍達から伍長の目をそらしたエデアに対しクルオナは涙ながら問いかけた。
息苦しそうにエデアは返答する。
「仲間がやられた事には思うことはある、だからって俺の本当の願いは二分されたこの国をもう一度一つにすること。皇国政府より放龍の兄貴の方がその願いを叶えてくれると、そう信じたからさ…。」
二人が見守る中、放龍はアガムートと睨み合ったいた。
先に仕掛けたのはアガムートの方であった。
「行くぞ、プレッシング•パジェロ。狙いは心臓だ!」
エデアを窮地に追いやった必殺技、プレッシング•パジェロが襲う。よりにもよって心臓である。当たってしまえば死ぬのは確定だ…。
しかし、放龍は全く動じはしない。アガムートの攻撃など通じなかった。
「何故だ、何故私の攻撃が通じん!?」
放龍は慌てふためくアガムートに向かって威風堂々とした態度で言い返す。
「どうやらお前の臓器への攻撃はすべて電磁波障害に過ぎなかったようだ。このアルミホイルは電磁波を完全遮断する優れ物。居場所だけ聞かされ、これがある事を知らされなかったのか?哀れな奴め。」
「くそぅ、ふざけるな小癪なやつめ…次は脳だ!」
切り替えて違う部位を攻撃するも、結果は同じ…。
「フン、無駄だ。アルミホイルに守られている俺には貴様の電磁波攻撃なんぞなんの意味もない。元々、脳を守るための防具だからな。」
ここまで攻撃が通じぬ伍長。しかし放龍を倒すまで退けない立場。
アガムートは次なる魔法を使うことにした。
「ウェーブポーカー、今からトランプをばら撒く。それを1分間で5枚集めろ。5枚に満たない場合はその場で落ちてるカードから足りない分を拾え、その際には選択権などない。その5枚でポーカーのルールを用いて勝敗を決める。負けた方は地獄行きだ!」
アガムートはトランプを放龍に表側を見せた後にばら撒いた。散りばめられたカードをお互い5枚拾い両者とも待機する。
果たしてこの勝負の行方はいかに…?
最初はアガムートから手札を見せる。結果は4のフォーカードだった。
「見たか?俺はフォーカードだ!多くの者はツーペアがいい方、頑張った所でワンペアだ。貴様に勝ち目などないな。ハッハハハハハハハハ!」
勝利を確信し高笑いするが、いつまでも放龍には何も起こらない事に気づく。
放龍はアガムートが違和感を抱いている様子を見て微笑した。
「どうなってやがる、何でお前は笑っていられるのだ?」
「気が付かないのか?まさかフォーカード如きで俺に勝ったつもりか?」
「どう言う事だ?手札を見せろ!」
放龍は手に持ったカードを見せつけた。
なんとそのリストはスペードの10、ジャック、クイーン、キング、エース…スペードのロイヤルストレートフラッシュだ。
「ロ、ロイヤルストレートフラッシュだと…!?馬鹿な、何故あの中でその手札が引けるというのだ?」
「教えてやろう、ボクサーは瞬時で相手の動きを読み行動する能力に長けている。日々その環境で死闘を繰り広げているからな。その動体視力でトランプの表を見せた時にカードの配置を覚えて散った時に5枚を目で追っただけだ。」
これが放龍の勝因だ。魔法遊びでのし上がった魔術師には到底読めもしない展開であった。プロボクサーを侮ると痛い目では済まないのだ!
「貴様が電磁波で狙ったカードを的確に当てられることも読めていた。だが範囲にも限度があり時間制限も自ら設けた。限られた中、確実に相手を仕留める山…それこそフォーカードだ。お前も言った通り一般人ならワンペアがしんどいだろう。奇跡が起きてスリーカードやツーペアが限界。それなら見る枚数も4枚で探す手間も1枚分少なくて済み勝てる手を選ぶが吉だ。わざわざロイヤルストレートフラッシュなど無理して狙う事はない。それも読み切った!」
「ううううううううううううっ!!!!!!」
アガムートは悔しくて地団駄を踏んだ。
彼は自ら仕掛けたデスマッチ魔法、ウェーブポーカーの敗者となった。敗者の元には大きな鎌を持った浮遊物がその鎌を振りかざし殺してしまう。
「うわあわあわあわぃぁぁぁぁぁぉぁ!!!!!」
カマが振り下ろされた時、たまたま近くに倒れていた部下を身代わりにして難を逃れた。当然ながら部下は悲鳴をあげる。
「ぴぎぃ!!」
自身の賭け全てに敗れてしまったアガムートはヤケクソになりプレッシング•パジェロを乱発、放龍には効かないのは言わずもがな。
それはおろか、エデアの攻撃で気を失っていたが意識を取り戻そうとした仲間である兵隊に当たる。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「おのんぁぁぁぁぁぁぁた!!!!!」
「おやめくださいごちょおおおおおおおお!!!!!!」
兵隊の悲鳴が飛び交う中放龍はアガムートの元へ突き進む。
「もはや敵味方の区別もつかない貴様など話にならん。一思いに葬ってやろう。」
放龍はアガムートの目の前まで近づきながら拳を強く握りしめた。そこからあの拳を打ち込みに行く。
「行くぞ、魔断拳!!」
魔断拳、そう放龍が数多もの魔術師を葬った最強の拳。その拳は魔法を弾き、その威力は防壁を砕く。この世界でも限られた者のみが放てる強力な技だ。
「んのぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁだぁ!!!!!!!」
強く握りしめられた拳がアガムートのみぞおちに深く入る。彼は口から大量に噴血して膝をついた。
その後、彼は断末魔を残し倒れ息を引き取った。
「魔断拳…まさか貴様…神話の拳士とでも言うのか…?この世が悪政で市民を支配した時…必ずや現れて市民を救うとされる伝説の拳豪なのか…?」
放龍は少しその事が気になった。
しかし、今は構っていられない。放龍の勝利を楽しみに待っていた二人の若者が駆け寄ってくる。また三人でこの世界に居座り人権侵害を働く魔術師共を蹴散らす旅に出る。真実は然るべき時知れば良い。
放龍はそう思いエデア、クルオナと共に再び旅に出ることになったのだ。
旅に出た一行をパヨン立憲主義共和国の方角から見つめる複数の黒い影がいた。
「あれが巷を騒がせている召喚獣か、皇国の魔術師が数人やられてるらしいが魔術師の実力が不足していたのではないか?」
「フシアナめ、今のを見てそう思うのか?俺は腕がなるか楽しみで仕方ない程疼いてる、あやつは本物。早く手合わせをしたいものだ。」
「でもでもでもさぁ、一番大変なのはあそこの女の子じゃなーい?8年前の秘密バレちゃうかもよ、ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ?」
「まあ良いではないか、まだこちらの敵になったわけではない。ほっといてもいいだろう。」
そう話し合ってその場から退散した。彼らは一体何者なのか、敵か?味方か?
今後の放龍達への影響はあるか、それはこれからの話であった。
クルオナにとってウヨー自由主義皇国は親の仇!?クルオナは自身の境遇を放龍達に明かす。その頃、パヨン立憲主義共和国内では不審な人物が事件を起こした。
次回、「嘘か?真か?クルオナ、両親の仇」にご期待ください