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6話 魅せろ龍のアッパー 鉄拳VS酔拳

※当作品はフィクションです。実在する人物や団体とは一切関係ございません。また、この作品は作者の思想を表したものではございません。


当作品は動画サイトやSNS等でご自由に朗読できます。ただし当作品のリンク、作品名、作者名の掲示を必要とします。


「ところで、こいつはどうする?」


「あらら、捕虜ができましたね。ですが二等兵一人で動くほどうちは羽振りよくないですよ。」


 シンジェロは警告にきただけであった。エデアのことなど眼中にもなくどうでもよく思っていた。所詮は二等兵である。誰にも敬礼されない身分だ。


「わりぃ、俺死んだわ…。」


エデアは諦めてしまった。しかし、身柄の扱いを訪ねた放龍も無意味に殺すのは好ましく思わなかった。


「フン、ならば返そう。捕虜としていられてもスパイされたら困るからな。」


「あなたほどの腕があれば二等兵なんて余裕でしょう。うちとしても上司が亡くなり変に浮いた奴を扱うのは厄介なんで。」


「そ、そんな…」


そんなこんなで2人はエデアを押し付けあっていた…。




――――――――翌日――――――――――



「で、結局ついてくるんですか?」


「いいだろ、程よい荷物持ちだ。」


「私の時はストーカー疑った癖に…。」


「いや俺は現在進行形で疑われているんですけど…。」


「万が一の対処はこいつだと簡単だ。寝るときは先に寝付かせればいいだけだ。」


「ウヨーの人らは信用できませんけど。」


「みんな酷い…。」


 放龍達はアンカーギーとの戦いの後、神殿のあった樹海を出て近くの街を訪れた。その街にあった旅館で一同は一晩過ごした後にまた出かけた。

街の景色は古代のギリシアかローマか、そのような雰囲気を漂わせていた。


何か住民が集まりざわついている。放龍一行は何事か調べに近寄った。


「タマキン新聞エブリデイ!ビンビ〜ンどうもタマキンです。てへんでいてへんでいてへんでい!今日はウヨー自由主義皇国からとんでもねぇやつが来るって噂よ!」


どうやら新聞配りのバイトか正規雇用か知らんが道化師がいたようだ。その道化師は扇子を落語家のように叩きつけながら新聞の内容を話していた。


「なーにぃー、やっちまったなぁ〜!」


突然、侵略の噂を聞きつけた市民はざわつき始めた。こんな時に冷静にいられる方が難しいものではある。街は一気に不安に包まれた。中には泣き出す子どももいた


「うわあわあをあわあわあわあわあん、ママお腹空いた。」

「たかし、さっきオムライスをサイゼリアで食べたばかりでしょう?」

「まだ足りないもん!それに僕ロイホ派。」

「ふが、そうじゃったかのう?ワシはココス派じゃよ。」

「いえ、お爺さんどちらさんですか?」

「わかってねぇなジョイフルだろ!」

「ジョイフルってなんだよ本田か?漢は黙ってガスト行け!」

「ちょっとなんですか!?」


街中大騒ぎとなった。

タマキン新聞の人は慌ただしい中記事の続きを読んだ。


「皆さん落ち着いてください。侵略する魔術師はね…なんと、世界最大規模の美術館、あのギュルール美術館の禁断の石像を酔った勢いで破壊したネーケゲウェ行動隊長だよ。ひぇ〜こわいね〜!」


「おい、あの行動隊長がこっちに来るんかよ?そりゃやばいな!」

「避難フィルターに駆け込まなきゃ!」


「そう、この新聞にはきちんとした避難方法や安い緊急事態専用グッズのし入れ情報などオトクな情報満載、号外だよ!買った買った!!」


「うおおおおおおおこおおのおおおおおここおおおのおお!!!!!!」


 どさくさに紛れて放龍達も新聞を買った。一同はネーケゲウェとやらは自分たちを狙っているのだと薄々感づいていた。無論、その通りではあるのだが。


「ネーケゲウェは毎晩お酒を呑んでいる飲んだくれで有名ですよ。そのときに何かしらのパワーが発揮されて自分でも収まらない程パワーが溢れ出るそうですよ。」


「『酔拳の達人、召喚獣を狙う。』ねぇ…。明らかに俺の事を殺しにくるつもりだな。」


二人が話している中、割り込むようにクルオナは激しい口調で物申した。


「放龍さん、何呑気に新聞読んでるんですか?こいつがいると居場所バレバレですよ。さっさとこいつを始末しましょうよ!」


「待てクルオナ、こいつを殺しても同じだ。奴らは我々の居場所を的確に突き止めてくる。アンカーギーとの一戦の内にマイクロチップを埋め込まれているかもしれん。シンジェロも姿を現す時は的確に我々の前に来ただろ?つまりはこいつを亡きものにしても無駄な殺生に過ぎん。」


いなす様に放龍は反論した後、彼はクルオナに違う質問を返した。


「それよりさっきのたかしという小僧、サイゼリアと言っていたな?何故ここにサイゼリアがある?貴様こそ何か企んでるのではないか?やはり、貴様らは集団ストーカーではないのか?」


「何言ってるんですか、あなたの言いたい物はサイゼリ"ヤ"ではございませんか?さっきのはサイゼリ"ア"ですよ。つまりここは本当に異世界ですよ。」


「そうか…、すまん。」


「あのぉ、二人とも何の話しているのですか?」





 その晩の話であった。ネーケゲウェは立憲主義国に向けて出撃していた。出撃前に気合入れようと麦酒を一瓶ラッパ呑みし、ベロンベロンに酔っていた。飲んだくれは馬車に揺られて周りに警護の歩兵を30人程連れて国境を目指していた。


「止まれ、止まれええええい!」


一行は急に止まるよう伝えた先導役の声を聞きざわざわとし始めた。


「何事だ!」


「あれを見ろ!」


他の警護も集まった。先導役の指差す先には月光を背景に黒い影が一人ポツンと立っていた。


「何者だ?我々を行動隊長の一行と知ってての行いか?」


「俺はその行動隊長に用があるのだ。行動隊長とやらも俺に用があって国境越えようとしてるのだろう?」


「貴様、まさか!?」


その影の正体は放龍だった。放龍は市民を巻き込ませまいと街から離れ自らネーケゲウェを向い討ちに来たのだ。


「おのれこしゃくな、行くぞ衝撃波!」

「ショック魔法!」

「ソニックブーム!!」

「プラズマショット!」


護衛に呼ばれた兵隊たちは一斉に魔法攻撃を仕掛けた。しかし放龍には全く通じなかった。


「フン、貴様らの攻撃はどうやらアルミホイルに身を包まれた我には効かないようだ。雑魚に用はない。そこをどけ、退かぬなら討つぞ。」


「ふざけるな、調子に乗ったことをほざけるのも今のうちだ!」


 その頃、ネーケゲウェは馬車の中でうたた寝をしていた。流石に酔いが酷すぎた。なんせ出かける前の麦酒とは別に焼酎を馬車の中で呑んでいた。これは流石にダウンする。

彼はふと目を覚ました。馬車が止まっている事に気づき外を見回す。


「なんだぁ………もうついたのか…………?ちゃんと呼べよおぉぉ!」


フラフラ千鳥足で外に出ると彼は目を疑う事となる。

なんと護衛が全員倒れているではないか。


「なあに?………寝てるのか?俺も酒〜混ぜろよ。目的地ついてーのにモリアがヒック!」


「目的地に着かずともこちらから出向けば都合が良かろう?」


 その声は馬車の上から聞こえた。放龍だ。彼は護衛を全滅しネーケゲウェが目を覚ます時を待っていたのだ。


「おおおおまえわ、召喚獣っ!!あんの〜…。」


慌てふためくネーケゲウェ、しかし即座に気を落ち着かせて戦闘態勢に構えた。


「あんのぉ…いま…おま…いよぉおおおおおとおおっふぉぁっちゃぁぁぁぁあ、!!!!!!!」


彼は素早い貫手ぬきてを突きつけた。

放龍も交わしてストレートをかます。その拳は相手の左胸に命中した。

しかしびくともしなかった。放龍自身、拳が通じなかった事は察しがついた。


「伊達に鍛えてはないな。お前は今まで相手してきた奴らの中でも強い方。」


「それはそうさ、この俺は皇国屈指の拳法通と呼ばれていたんだ。今まで見てきた魔術師と同一視されちゃ困るね。」


「だが俺が知ってるプロボクサーにはお前に負けるほど軟弱な奴は一人もいない、この勝負はもらったぞ。」


「なあにをほざけこんやつぁたー!!」


両者の一騎打ちが始まる、お互いに攻撃の体制を構えた。そしてその一撃に全てをかけた。


「秘孔貫通回し突きぃぉぃぃぃぃ!!!!!」


「行くぞ、魔断拳ッッッッ!!!!!!!!」


同時に必殺技が放たれた。勝るのはネーケゲウェの貫手か、それとも放龍の拳か、わずかな隙も油断も許さない死闘が今、決着つこうとしていた!


と思われた。ネーケゲウェは急に手を開き放龍のパンチを受け止めた。


「おっといけねーな、これをまともに食らっちゃお陀仏だぜ。危険な技をまともに受けるほど俺は馬鹿じゃねえんだ。」


「ほう、刺客として厳選されただけはあるようだな。」


両者は均衡を保ち静止する。しかしネーケゲウェは素早く回し蹴りを決めた。放龍を勢いよく突き飛ばし近場に生えていた木にぶつけ倒れ込ませた。その間、実に2秒…。


「おい、プロボクサーかなんだか知らないがお前がいた世界では俺より強い奴らばかりなんだろ?見せてみろよ、その修羅界のような環境で鍛えた体をさぁ?まさかもうくたばったとか言うんじゃないだろうな?」


ネーケゲウェはうつ伏せの放龍に近寄り何度も踵落としをした。その時の放龍には目立った反応がない、息継ぎはしているようだがもはや虫の息であった。

そして反応はなくなりだした。放龍は完全に息絶えてしまったのか…。


 そう思われたが放龍は急に動きだした。固く握った拳を地面から天にめがけ突き上げ、油断したネーケゲウェの顎を叩き割った。

飛昇龍アッパーだ、それは大瀑布を昇った鯉が巨大な勇ましき龍に姿を変える。その過程を一瞬の間に描ききるような激しく、勢いのある技だ。


拳はネーケゲウェを近くの急流河川に吹き飛ばした。その後、彼は不幸にも特に流れの激しい滝壺に落ちてしまうのであった。


「ぐぼぼぼぼ、この河深い!助けて…アベル総統、ニケェ元帥、タローア僧正、コズミック=シンジェロ…みさえ!俺はまだ、死にたくない。この河、深いから深い…。ぐぼぼぼぼ!」


 流石のネーケゲウェも酔ったまま滝壺に落ちてしまってはひとたまりもない。もがけどもがけど、彼は地上に戻ることはなかった…。



 ネーケゲウェを退いて一人、放龍は歩いて帰ろうとする。

しかし、この戦闘で負った怪我は決して軽いものではなかった。何箇所か骨折しており直立できないほどフラフラになっていたのだ。


「放龍さん!」

「アニキッ!」


クルオナ、エデアの二人の声が聞こえたとき、放龍は崩れる様に倒れてしまったのだ…。

戦いにより負傷した放龍を救うべく、クルオナは回復魔法を唱える。しかしその頃、放龍の負傷を知った皇国は新たなし客を送りつけた。急げクルオナ、立ち上がれ放龍、僕らの未来を救えるのは君たちだけだ!


次回「祈れクルオナ、アガムートの卑怯な罠」にご期待ください。

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