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5話 立ち上がれ少年よ 打ち破れ地獄の酔拳

※当作品はフィクションです。実在の個人、団体とは一切の関係はございません。また、作者の思想を描いた作品ということはありません。


当作品はご自由に朗読配信をすることを許可します。ただし、この作品のリンクまたは名前と作者を載せる必要があります。

 アンカーギー師団長は放龍との死闘の末破れ絶命した。シンジェロから小馬鹿にされた事により一人で放龍に挑んだため親衛隊や彼の元に所属する部隊は放置されていた。

当然黙って見過ごすわけもなく…


「仇討ちだ!」

「弔い合戦じゃい!」

「このままでは師団長の名が泣くぞ!」


親衛隊、雑兵共々一斉に放龍に飛びかかった。放龍は一人一人をかわし強めのストレートを決める。ある者には横腹、ある者には胸ぐら、ある者には顔面…


「ぎえぴいいいいいいいいい!!!!!!!!」

「うにょおおおおおおおおおおおおおおーん!!!!!」

「うおおおおとおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


雑兵が悲鳴をあげて倒れる中、休む隙を与えず飛びかかる師団長の親衛隊。彼らは雑兵よりは腕が立つ。一筋縄ではいかなかった。


「いくぞおおおおおおおおお!」

「くらええええええええええ!」


親衛隊は二人がかりで放龍の両腕を塞いだ。そして一人の親衛隊がサイキックセイバーを突き立てた。


「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


しかし、アルミホイルで包まれた放龍の体に刃が立つわけもなく剣は折れる。親衛隊は成すすべもなく、ただわめくだけであった。


「た、助けてくれえええてバケモンだぁぁぉどだ!!!!」


放龍は親衛隊二人を振り払った。彼の前には複数の親衛隊が一筋の線に接するように並んでいた。

そう、今がチャンスである。今ここでアンカーギー師団長を撃破したあの技「魔断拳」を使うときである。

放龍は深呼吸し精神を落ち着けてその構えをした。


「行くぞ、伝説の秘拳…"魔断拳"!」


スクリューのように激しく回転しドリルのように敵陣営をこじ開け突き進むその拳の前に親衛隊達は吹き飛ばされた。


「やな感じぃぉぃぃおぃぃぃぃぃ!!!!!」

「ばいばいきいいいいいいいいん!!!!!」

「はひふへほおおおおおおおおおおい!!!!」


残った一人はがむしゃらになり殴りかかるもかつてボクシング世界チャンピオンにKO勝ちした技の前では雑魚も同然であった。


「見えた、行くぞ飛龍昇アッパー!!」


飛龍昇アッパーとは拳を天に昇り、天を翔る龍を描くように突き上げ相手を吹き飛ばすアッパーだ。この技により放龍はボクシング世界チャンピオンをKOさせ晴れて次期世界チャンピオンというところまで来たのだ。

そう、5G思考盗聴をする腐りきった連中から煙たがられさえしなければチャンピオンになる決め手となるはずだった技だ。無念を晴らすかの如く、親衛隊を天まで弾き飛ばした。


「あじゃぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


そのまま地面に叩きつけられた親衛隊は当然の事ながら生命を保つ事はできず息絶えた。これで兵隊は全滅したかに思えた…。


「放龍さん、あれ…」


クルオナが指さした方向には4人の兵士が立っていた。その内の3人はC班の生き残った兵士だった。


「幾度にも渡り奴を許すな!」


そう言い飛びかかる3人も結局、放龍に敵わず散った。

残るは一人だ…。しかし彼は微動だにしない。放龍も視線を視線を動かさなかった。


 しかし放龍は深いため息をついてその場を去ろうとする。クルオナは疑問に思い呼び止めた。


「待ってください、放っておいて良いのですか?」


「見てわからぬか?あやつにはもう戦う気力はない。」


クルオナは兵士を見ると、彼の全身が震え汗ダラダラになっており今にも逃げ出しそうになっていた事に気づいた。完全に怯えきりとても戦える様子ではなかった。


「このくらいでビビりですか?ザコですね〜。」


「黙れ、お前は今のを見て本気でそれが言えるのか?」


クルオナが煽るも兵士言う事は正しい。魔法攻撃が主流の部隊にとって魔法攻撃が通じない相手はバケモノ以外なんでもない。ささぼーも驚きのバケモンだ!


「せっかく助かった命だ、大事にしな。」


そう言い残すと放龍は改めて黙って去ろうとした時、兵士は大声で言った。


「待ちやがれ、このまま帰ると俺は村八分だ。みんな死んだのに一人だけノコノコと帰りやがってとはみ出し物にされる…だからせめて貴様の首を…。俺だけならいい、だが家族は…。」


「ならば尚の事生きて帰って家族にしてやれることはあるだろう。」


「何も知らないてめぇが指図するなぁぁぁぁ!」


覚悟がついたのか兵士は刃を立てて放龍に斬りかかる。


「やむを得ないな…。」


放龍が拳を構え突き出そうとしたその時、何者かがその兵士の手首を握り止めた。年は同じくらいの少年兵だった。


「やめろ、あいつが言うとおり今は命を大切にするんだ。家族に迷惑をかけまいと奨学金免除のため兵隊に志願するほど家族想いのお前ならわかるだろ、取り残されるくらいならはぐれ者にされても一緒にいたいと思える。それが家族というものだってな。」


 ウヨー自由主義皇国ではいろんな子どもや若い世代が望んだ教育を受けられるために志願すれば奨学金を渡しより高等な教育を受けられる制度がある。ただしその奨学金は返済が必要な借金である。ウヨーでは借金返済がうまくいかない層もいることが社会問題となっていた。


そこで一部役職に入れば返済免除という制度を導入した。その役職の中には皇国軍もあったのだ。兵役は徴兵制ではなく志願制にしてあるが不本意にも兵隊に志願させる制度なのである。つまり事実上の徴兵制度なのだ。


先の少年兵はその制度で志願したのだ。まさに政府に踊らされた哀れな少年なのだ。


「でも、一人で帰るなんて…。」


「心配するな、俺から嫌がらせされたとかなんとか誤魔化してでも逃げろ。政府や国より一番大事なのが何かお前にはわからないのか?」


その言葉を聞くと若き兵士は刀を収め後ろを振り返り帰ろうとした。しかし気まずいのかかなり小股であった。


「早く逃げろ、さもないと共倒れだ。ここは俺一人で何とかする!」


それを聞くと彼は走って去った。

大口を叩いた残った方の少年兵は突如と語りだした。


「ふ、かすり傷だったがやられたフリして隙をつこうとしたがさっきの奴がチンタラしてたもんで待ちくたびれちまった。ここはこのエデア二等兵様が相手だぜ!」


「二等兵に様つけるかよバーカ」


「何を!?俺は学費関係ないけど生活のために兵役ついてんやぞ!」


「アルバイトですか?」


「アホ死ね!」


エデアとクルオナは突如と口喧嘩を始めた。

その時、放龍は何者かに気づきエデアを羽交い締めにした。


「止まれ、こいつがどうなってもいいのか?シンジェロよ。」


「私にお気づきとは流石ですね。物陰から私を見つけ出すのは大変です。つまり大変なことをしたということになります。」


物陰から飛び出してきたのはシンジェロ参謀だった。


「ご安心ください、私は何かをしに来たのではございません。ただうちの政府は新たな刺客を用意してます。あなたを倒すためにね…。」


 そう、この時にもことが進んでいたのだ。ここからは一連の流れに並行して起きたウヨー皇国の議会の話である。


総統たる者、その名もアベル=シンドーが直々に顔を出した。

アベル=シンドーはウヨー自由主義皇国から絶大な人気を誇るこの国の総統である。パヨンの民からは独裁主義と批判され親の敵の如く憎まれている。パヨンに住む国外出身小説家も「アベル逮捕」という書籍を出版しパヨン内の小説コンクールの一つ、イクタママ賞を受賞した程だ。しかしウヨーの民からは国民に過干渉せず自由を保証した偉大なる総統として扱われている。


 アベル総統はニケェ元帥やタローア僧正を集め召喚獣こと有見放龍を撃退すべく特殊部隊を編成することが決めた。そのときに白羽の矢を立てられたのは遥か西の国、腐乱臭王国にあるギュリューリュ博物館にある石像を酔拳で叩き壊したと言われるネーケゲウェ行動隊長であった。


 ネーケゲウェ行動隊長は呼び出しを受け、議会に顔出した時ベロンベロンに酔った姿で現れた。

「あんのぉ〜、ほんじつわぁ〜いかほどのよ〜じでお呼び出しを〜?」


異臭漂わせフラフラなネーケゲウェを見て、その態度の悪さにニケェ元帥は激怒した。


「馬鹿にしてるのか、議会に来るときに酒飲むバカタレおるか!?」


対してタローア僧正は満面の笑みを浮かべニケェ元帥を見つめながら言った。


「まぁいいじゃねえか?見せてもらおうぜ、そのギュリューリュ禁断の石像を叩き壊したその酔拳とやらをさ。」


僧正の要望にアベルはうなずきながら答えた。


「よかろう、いでよ雑兵共!」


すると、議会に数人の兵士が集まった。そしてサイキックセイバーをかざしネーケゲウェに斬りかかった。


「あ〜らよっと!」


なんと、ネーケゲウェは一人ひとりを蹴り飛ばし華麗な技で雑兵をなぎ倒した…。


そう、放龍にとって強敵になる事は間違いない。宿命の対決が迫る、負けるな放龍!戦え、我らの放龍!

「酔拳の達人ネーケゲウェの攻撃に放龍は防ぎ切る手段はない。決死の覚悟で拳を突き立てる必要があった。熱き男の拳が火花を散らしぶつかり合う。決めろ、必殺飛昇龍アッパー!」


次回、「魅せろ龍のアッパー 鉄拳VS酔拳」にご期待ください

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