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17話 振り切れ、反転カウンターストレート!

年末年始、忙しくて投稿できませんでした。申し訳ございません。

 ツヴァリーフの民宿を後にしてオプサホスを目指した放龍達はカエンダの刺客が隠れる荒廃した道路を抜けてオプサホス市街に辿り着き騒動の主犯であるカエンダ=バリンと対面した。カエンダは放龍を見るや殺意を顕にして襲いかかるのであった。


「おのれぇ!!!!!!燃焼煉獄陣ねんしょうれんごくじん


 カエンダは先手で煉獄魔法の一つ、燃焼煉獄陣を唱えた。

燃焼煉獄陣は広い範囲に火炎を魔法で起し敵を覆う。そして炎に周りを囲まれた敵は熱に侵され、やがて死に至らしめる凶悪な魔法である。


 放龍は周辺を炎に囲まれた。本人に引火こそしてなかったもののこれは放龍にとって大ピンチなのである。


 放龍は今、焼き芋と同じ状態である。焼き芋は芋にアルミホイルを巻くが、それはただ芋に不純物が入らないよう保護するだけでなく、アルミホイル自身の保温効果を活かし効率よく芋を温めるために使われている。


つまり、アルミホイルで体を覆われた放龍にとっては周囲を炎で囲まれる事はさらに熱による身体への影響を増加させるリスクがあるのだ…。


『やむを得ない、流石にこれでは体が持たん…。』


 ここで放龍は一か八か、賭けに出る。思考盗聴される危険性に身を晒すも、体に巻いてあるアルミホイルをすべて剥ぎ取った。そしてそのアルミホイルを丸めてカエンダの顔に投げつけた。


「あぁぁっつつっつ!!!!!!!!」


炎を操るカエンダも、自身は熱に強いわけではなかった。熱を帯びた金属の塊には流石に耐えきれなかった…。カエンダは大声を上げ僅かながらよろけた。


 しかし放龍はその隙をつくことはなかった。何メートルか離れ自身は炎に包まれている。それでは当然の事ながらパンチが届くわけがない。いくら世界チャンピオンに勝ったことのあるプロボクサーとはいえ、そんな状況で相手にパンチをぶつけるのは無理である。


アルミホイルをなくした放龍はいつ思考盗聴をされてもおかしくない…絶体絶命の危機である。だが、そんな時こそ冷静になり周りを見渡せるのが世界チャンピオンに匹敵するボクサーなのだ。放龍は僅かながら勝機を見つけ出した…!



「放龍、追い込まれたな…。」


 その様子を遠くで見ていた者がいた。セーバとその相方と言われるノーデスだ。ノーデスは十天君ではないが実力は確かで国が分裂する前にはアベルが務める前に総統の役職についていた。


ノーデスはセーバの顔を見てにこやかな表情を浮かべつつセーバに聞いた。


「その表情、放龍に勝ち目があると見てるな。」


相方とまで言われるノーデスにはセーバの考えている事くらい顔を見るだけでもわかるのだ。


「あぁ、多くの者はこの場面だけ見てカエンダの勝ちだと見受けるだろう。しかしカエンダには致命的な弱点がある。それは物事を冷静に見る事が苦手なところだ。優勢な時に油断をし、そして感情的になりやすい性格。あれこそがあやつの弱点なのだ。放龍がそこに気づけたら僅かではあるが勝ち目はある。見たところ、放龍は既にそこに気づいている様だ…。」




 そう、放龍はセーバの言った弱点に気づいていた。ツヴァリーフでの一戦にて放龍はカエンダが冷静さに欠ける性格という事を見抜いていたのだ。


放龍はカエンダの弱点を突くためにまずは周りを見回した。地面を覆い尽くすほどに広まった瓦礫の中、未だにそびえ立つ2階建ての建物があった。成功確率は極めて低いが放龍が炎に囲まれたこの状況を打開するにはその1%もない成功率の賭けに出るしかない。


 そうと決まれば放龍はクルオナの方を尖った目つきで見つめた。

クルオナも放龍の意図を読み取り軽く頷く。


「何をそっぽ向いている?」


「今クルオナにこの炎を消してもらおうと思ってな、お前の火がどのくらい熱かろうともクルオナには敵わないのだ。」


カエンダも放龍の不審な動きに気が付かないわけがなかった。しかしながらその内容はまだ理解していなかった。


「小娘、そんな事できるのか?」


「ええ、できるわアンタなんかの火すぐに消せるわよ!」


クルオナに侮られたと思ったカエンダは憤り次なる攻撃魔法を仕掛けてきた。


「そうか、ならばその炎が消される前に受けてみるがいい。爆散火炎弾ばくさんかえんだん!!」


爆散火炎弾ばくさんかえんだんとは、起爆性の物質を魔法を使い発生させ炎を取り込むことにより爆発を起こすとてつもない魔法である。


放龍の目の前で爆散火炎弾による爆発が起こる。当然ながら放龍は吹き飛ばされてしまった。彼の活躍もここまでか…?


「フハハハハハ、口程にもない。所詮、異世界のチャンピオンとやらもここまでよ。」


勝利を確信し高笑いをするカエンダ。目の前には黒煙の柱が空までそびえ立っていた。カエンダの言うとおり放龍は消し炭になってしまったのか?そう思われた次の瞬間…





「甘いぞカエンダ、そういうところだ。」


遠くから眺めるセーバが口ずさむ。その光景はカエンダ本人に限らずセーバの隣で抗争を見ていたノーデスすら驚愕させた。





 なんと、放龍は生きていた。そしてダウンしていたのはカエンダの方だった…。


「優勢な時こそ、敵のカウンターを注意しなければならない。これはリングに立つ者の定め、それを忘れきっていた事がお前の弱点であり敗因だ。」


信じられない事に、爆発に飲み込まれ吹き飛ばされてしまった放龍だがそれも放龍の作戦だった。


火炎魔法の得意なカエンダには当然爆破系の攻撃魔法があるだろうと予測し、それを誘発させてまだ壊れることもなかった2階建ての建物へ吹き飛ばされる。壁にうまく両足をつけて屈伸をするかの様に反転しカウンターストレートを狙うのだ。


煙や残った炎ををかき分け凄まじい勢いでカエンダに飛びかかりカエンダの顔面にストレートを一発ぶちかました!


「ぐぁぉぁぁぁぁぁぁぁぉぉぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


この勢いで飛んできたストレートは計り知れない威力であり顔で受けてしまっては頭蓋骨に亀裂が走ってしまう。

カエンダが耐えられるわけがなかったのだ…。


彼の慢心さによる隙を突き一連の流れを見事に成功させた放龍の見事な逆転劇である。


 しかし放龍も疲弊しきり、その場に座り込んだ。クルオナ達も放龍の元へ駆け寄る。


「放龍さん、大丈夫ですか?」


「しっかりしてくれ兄貴…。」


「あぁ、心配させてすまない。手強い相手だった、もう少しで俺がくたばっている所だった…。」


 一同の元へノーデスが拍手をしながら近寄る。隣にはセーバもいた。


「ブラボー!素晴らしい闘いだった、敵ながらあっぱれとだ。」


「カエンダの弱みをよくぞ見抜いた。流石というべきだ放龍。」


歓声を送るノーデスの隣でセーバは普段と変わらぬ様子でクルオナに水筒を渡した。


「安心しろ、毒はない。勝者への報酬だ、治癒魔法で回復させたらそれを飲ませてくれ。」


「あ、ありがとうございます…。」


 クルオナ達はセーバ達が漁夫の利を企んで放龍にとどめを刺すかと警戒したものの、そのような姑息な真似を嫌うセーバがそんな事をするわけなかった。


『放龍、次会う時にはお互い容赦なくやり合おう。その時までに俺は更に強くなる…。これからも幾度も魔術師と争う事になるだろうが絶対に負けてはならん、いいな。』


セーバは心の中で呟く、彼は誇りを持って放龍と対峙し勝利を掴む。その時が来ることを心より待っているのだ。


「あ、そうだ報酬はもう一つある。放龍ではなくサポートをしてくれたエデア、君にだ。」


「え、俺?」


 エデアはノーデスからそう言われて渡された封筒を開く。送り主はウヨー自由主義皇国の幹部、コズミック=シンジェロ参謀だった。エデアが捕虜になる事を見流したあのシンジェロである。


「参謀が今更俺に何の用と言うんだ…何!?」


エデアは思わず目を丸くする。そこには恐ろしいことが書いてあったのだ。


【エデアよ、近い内に世界を旅したお前の両親が帰ってくる。それをたった今、タガキィ大佐が結成した召喚獣討伐隊が始末する事が決定した。結構日は一週間後だ。家族を守りたくは放龍を連れて急いで実家に向かうことだな。】


エデアの全身が震える…家族を殺すという脅迫文が祖国の政府から送られては当然の反応である。


「兄貴…。」


放龍の方を今にも泣きそうな顔をしてチラッと見つめるエデア。


放龍は息苦しい中、目を閉じ首を下に向けながらながら答えた。


「わかっているさ…。」



 エデアの様子を見ながら背を向けて、去り際にセーバは一つ言い残しながら何処へと向かった。


「ここから南西の方角にあるセムデイルへ向かえ。そこからさらに西へ向かえば国境はある。検査は商人に頼んで荷物に紛れ込むなりして通り抜けるといい。」


ノーデスもセーバの後を追う、彼もまた一つ言い残した。


「ここから先は放龍一人では過酷なものとなる。エデア、君も魔術師と対等に闘える力を身につけることだ。今のままではただの足手まといだ。お嬢ちゃんもいつまでも守ってもらう非力なお姫様では心許ない。皆してボクくらいには強くなるのだ。」




 エデアは手紙を見つめながら握りしめた。例えどんな苦境に立たされても決して挫けず戦い抜く事を、そして更に強くなり自分一人でも闘えるように強くなる事を誓った。


「非力なお姫様だなんて、失礼しちゃうわね。」


クルオナもまた、守られてばかりではいけないと言う気持ちが沸き起こる。


そして放龍はこれからの戦いが激化する事に覚悟を決めて自身も更に我が身を磨き上げこの世を乱す魔術師と戦い抜く事を誓った。


行け放龍!負けるな放龍!龍の拳を奮い立たせ、アルミホイルを身に纏い、異世界のリングで邪悪な魔術師共をダウンさせ勝利のゴングを響かせろ!






 その頃、ウヨー自由主義皇国国会では…。


「数々の面々が揃いましたねタガキィ大佐。」


「あぁ、見給え参謀殿!国内の寄りすぐりの魔術師達を用意したよ。」


「素晴らしい限りです大佐。召喚獣は今頃こちらへ向かっておりますでしょう。つまりこちらへ来ることが目的ということになります。共和国もみすみす見逃すマネはしないでしょう、面白くなりますねぇ…。」

コズミック=シンジェロからの手紙により急いで皇国にあるエデアの実家へと向う放龍一行、しかし路中の都市セムデイルに放龍を待ち受けていた共和国の魔術師グーンブック=パインドラが行く手を阻む!パインドラは放龍と戦う中で突然と姿を変えた!?


次回「恐怖、妖獣魔術師の怪」にご期待下さい

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