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15話 熱い!灼熱人間ステーキ計画

この作品はフィクションであり、実在の人物、団体、出来事とは一切関係はございません。

 パヨン立憲主義共和国の国会にて、放龍の対策が議論されていた。残念ながら皆の意見が纏まらず迷走している段階であった。


そして国会議員であり十天君であるカナトーンは煽りるように話した。


「あなた達のこの体たらく、一人を相手にだらしないと思いはしませんか?ヘムイ団とやらも全く歯が立ちませんでしたな、プクドさん?」


 プクド、それは共和国十天君の一人だ。釣り目で厳つい顔をした女でヘムイ団と裏で繋がりがある。他の議員はそれを知りつつ黙っていた。ヘムイ団に国民を粛清させれば利益を独り占めできるからだ。


プクドは顔を引きつり青筋を立てながら荒ぶった声で答弁した。


「まだ全滅したわけでもなく、我々の本来の目的を果たす為に人員を割いている次第であります。マスカダはその人員でなかったにせよ、必ずやあの男を倒して見せましょう。その前に、そう仰られる程でしたら我々より先に始末したら如何でしょう?人に文句言えるのであれば勿論実現可能と言うことですよね?」


プクドの答弁に対し笑いながらカナトーンは答えた。


「えぇ、やってみましょう。このカナトーンの右腕、カエンダ=バリンの人間ステーキ計画と同時並行にね。」


二人の会話を聞いてセーバは心の底から呆れてしまい、小声で愚痴をこぼしてしまった。


「二人共よく言うな。方やサイコパスやるやる詐欺師、方や口だけ棚上げババア、どっちもどっちだ下らない。」


その愚痴はセーバの近くにいたカエンダに聞こえていた。会議終了後、カエンダはセーバの元に近寄り言い放った。


「悪いなセーバ、手柄は俺が貰おうではないか。丁度カナトーンから指名があったのでな。十天君の出番はないぜ!」


「フン、お前ごときが手に負えられる相手と思うな。」


自信満々なカエンダに向かいセーバは言い返した。

態度が気に入らなかったのかカエンダは苛立ったかのように声を荒げて言い返した。


「おい、よく言ってくれたな。このカエンダ=バリン、十天君も恐れる灼熱の魔術師ぞ。我が煉獄にかかれば貴様すら手こずったアルミホイルとやらも紙切れ同然!」


 カエンダ=バリン、灼熱魔法の使い手である。彼はの魔法は灼熱地獄の煉獄を放ち、その炎から半径2キロメートルもの範囲は真冬日でも真夏の温度になると言われる程という。


確かにそのような炎に囲まれようものなら、保温性のあるアルミホイルで全身を包んでいては我が身をグリルするだけだ。


「まぁ、今の内に自惚れるがいい。確かに貴様が優勢であるだろう、だが油断だけはするなよ。気楽に勝てる相手なら皇国の奴らに目をつけられた時にはもう死んでいたはずだからな。」


「ははは、手柄を取られる負け惜しみと言うところか?まぁ、見てるがいいさ。この俺の勝どきをな!」


誰しもがカエンダが勝つと予想する中、セーバただ一つ放龍の勝ち筋を見出していた。


しかしカエンダは相変わらずであり、その事に気を止めることもなかった。





 その頃、放龍達は共和国北東部にある小さな町、ツヴァリーフを訪れていた。


ツヴァリーフは複数の集落が並ぶ閑散とした町である。これと言って目立った物はないが隣町のオプサホスが町内にある施設、魔導エナジー発信所が未曾有の事故により有害魔導エナジーを大量に流出させてしまい立ち入り禁止区域に指定された事により近場で安全なツヴァリーフへの移住者が増えた事が話題になっている。

放龍達はそんな町を通り過ぎる程度ではあったが訪れた。


「いや〜、のどかな町並み、豊かな自然、空気がうまい!住むには不便だけど遊びに来るのはいいんだよな田舎って。」


「エデア、なんか楽しそうね。」


 ウキウキなエデアを見つめ、クルオナは呆れ返っていた。


そんな様子に目をくれず黙々と歩く放龍は町が何かざわついている事に気づく。すれ違う人が皆、ヒソヒソ話を放龍達を見ながらしている。


ため息をつき放龍はジメジメした雰囲気を醸し出す町民達を見つめながらぼそっと呟いた。


「余所者がろくに来ない町だ、やはり俺たちの事が気になるのだろうな。通り過ぎるだけなら文句は言わないだろうが所詮はムラだ。出る釘のようなマネしたらタダでは済まないだろう。変な事はできんな。」


クルオナは放龍の囁きに割り込むように小声で言った。


「その言い方は不味いですよ。確かに郷に従うべきではありますが、いきなり人を陰湿なように言うのはよくありません!」


 二人が小声でやり取りしている中、60〜70歳くらいの男が放龍達に近寄りながら話をかけてきた。


「あんたら、どっからきたんにゃ?」


職務質問をする警察のような表情を浮かべ、放龍達が何者なのか調べようとしている様であった。


クルオナは即座にその男に顔をあわせ、とっさにその質問に答えた。


「私達は旅の者です。数日前にスワンパーバーを出まして流れ流れてこの町にやってきました。」


胡散臭く思われないように一同でこの世界を守ろうとしているという言う話はしなかった。当然ながら、そんな話をする人は警戒されても仕方ないものだ。

クルオナは知られても困らない事実だけを述べた。


クルオナの話を聞いた男は硬い表情を急に緩め、口調も明るくしながら返した。


「ありゃまぁ、そんな所からかい!?そらぁえらい長旅だったがにゃ。うちゃ民泊やってにゃあ、是非うちにとまりゃにゃんさい。」


その男は民泊を営んでいるらしく、訛った話し方で放龍達を歓迎した。周りの町民もさっきまで警戒していた様子から一転、にこやかな表情になりヒソヒソ話をやめて聞こえる程の声で町民同士で世間話を始めた…。


『何なのだ、この変貌ぷり。まるで一定層を拒むかのような意図を感じる。これは…また政府か行政が何か企んでいるかもしれない。』


放龍は身元を明かすまでの男をはじめ、町民達の冷たい態度が気になった。何故、詳しく話すまでは腫れ物でも見ていたかのようだった対応をしたのか?彼は裏で何者かが糸を引いているように感じた。


 放龍一行は民泊に辿り着き、クルオナとエデアは旅で疲れきり倒れるように休んでいた。一方、放龍は気になる点を確かめに民泊のオーナーである先程の男に話しかけた。


「教えてくれ、ここ最近この町で変わった事が起きたりしてないか?」


町を訪れた当初の事を聞くとまた警戒されると読み、放龍は単刀直入に町の出来事をオーナーに聞いた。


するとオーナーは音が漏れたら不都合なのか外を見回し、周りの窓や戸を閉め口を開いた。


「それがにゃぁあんた、最近移住者が夜な夜な皮膚がただれた、それはそれはおぞましい姿で町を徘徊しはじめて間に見えた物という物を壊して暴れ始める現象が相次いでんだっちゃ。それも決まってオプサホスからの移住者なんにゃぁ…。あれから町民はオプサホスから来た人を警戒するようになってがにゃ、学校でもオプサホス出身は仲間はずれにされる程で大問題がみゃぁ、行政みゃあ対策急いでんがにゃ〜よ。」


「ほう、そんな事が…。でその現象はいつから起きた?」


「そんまぁ具体的にゃわからにゃんだが、魔導エナジー発信所が事故で有害物質流れ出てから起きた事にゃんや。関連性はしりゃあせんけど。」


「そうか…。一つ聞いていいか?夜、ジョギングに出たいと思っている。いいか?」


「夜はやめときんにゃ、またナレハテがゾンビか知りゃへんがアレが出る。やめなされやめなされ…。」


 その日の晩、日が沈みきり明かりなしでは真面目に外も出歩けない程に暗くなってきた頃に放龍はオーナーの目を盗んでジョギングへ出た。


数少ない街灯と住宅から漏れた灯り、そして空に浮かぶ半月の月光を頼りに前に進む。少し走れば止まってシャドウ、また少し走って止まってシャドウ。これはかつて放龍のいた世界でも毎日していた事だ。こちらの世界でもそれを毎日繰り返していた。この日もジョギングとシャドウをしながら町内を走り回った。


ちなみに、この世界でも街灯は存在する。送電や発電の方法は異なるがこの世界にも電気は存在し市民にも配送されている。

街の風景は古代のギリシャに近しいが街灯もあれば民家でや施設も電気が使える、放龍がいた世界の人らからしては変わった光景が見られるのだ。


 そろそろ一周する。特に目立った事はなかった、そう思われた…。


「ガシャァン!!」


民家の近くで何かが壊れるような物音がした。音の下方角から慌てて40歳くらいの男性が何かに追われているかのように走ってきた。


「助けてくれぇぇぇ!!!!おらしにだくねぇだぁぉぉぉ!!!!」


まるで殺人鬼かクマか、何か恐ろしい者に追われているようだった。その男は放龍の元に辿り着いた時、すぐさま放龍の背中に隠れた。理もなく放龍にすがる程、どうやらとてつもなく危険なようだ…。


「何があったのだ?落ち着いて状況を話してみろ。」


放龍は昼にオーナーが言っていたあの存在の話を思い出し、どうやら不運にもそいつとでくわしてしまったのかと思った。しかし決めつけで判断してはならない、確かめるためにその男に状況説明を諭した。


男は極寒の地ににでもいるかのように激しく全身を震わせ、慌てながら口を開いた。


「ででででで出たんだゃ、あれだにゃ、ゾンビだがや…!」


「ゾンビ!?つまり、オーナーが昼に言っていたあれか?」


「どどととりあえずここは危険みゃ一緒んどっきゃいきんしゃれ!!」


放龍は確信した、昼に言われた物がとうとう現れたのだと。放龍は男を逃して一人、そのナレハテの顔を拝見する事にした。


「お前は逃げろ、俺は様子を見に行く。こんな事があるなど、きっと政府か行政か秘密結社か何かが噛んでいる。証拠を掴んで真相を暴いてみせる。」


「兄ちゃん、やめときゃろ…。あんた一人にゃどんこならん。オプサホスは呪われてんぎゃにゃ、そんなやましいもんない。あったところで命が大事ゃにゃ。」


男が止めるのも無視し、放龍は一人でゾンビのもとまで向かおうとした。その時、放龍は他に誰かいる事を察した。


「そこの民家の物陰、他に誰かいるのだろう。隠れてないで出てこい、一般人なら危険な禍々しい物から逃げたらどうだ?もとい、そんな必要はなさそうな臭いをしているがな。」


放龍は自身が怪しいと思った方角へ向き、話しかけた。その頃にゾンビは放龍の元へ近づいていた。しかし放龍はノールックで左ストレートをゾンビの顔面に決めて見事にダウンさせた。


「ほう、俺の存在に気づくだけでなくゾンビを仕留めるとは中々やるな。だが私の人間ステーキ計画を知った者は生かすわけにはいかない。そこの町民と共に死ぬがいい。」


放龍からの問いかけに、その者は答えた。その後、真っ赤に燃える紅蓮の炎の塊が突如と暗闇に浮かびだした。その者は纏いし炎を散らすように振り払い現れた。


「貴様、何者だ?」


放龍は早急にアルミホイルを腕に巻き、その者を睨みつけた。炎の中から現れた男は堂々と放龍と目を合わせ、自信満々と己の事を語りだした。


「我が名はカエンダ=バリン、パヨン立憲主義共和国の魔術師なり。我が業火を受ける者は、例え十天君だろうともひとたまりもないぞ。死ね、有見放龍ッ!!」


「ほう、俺の名を知るものか。ならばさっさとケリをつけよう、貴様に語ることはない。」


互いに縄張りを守る雄獅子が如く、鋭い目つきで激しく睨み合う二人。


先に仕掛けたのは放龍だった。放龍は左手から素早いジャブを何連続も繰り出す。


カエンダは一つ一つ華麗に避けて間合いを取った。そして出会い頭に着火魔法を唱える。その途端、放龍の左腕に巻かれたアルミホイルが発火した。


放龍は一瞬の出来事に思わず目を疑ってしまった…。


「何ッ!?」


「フハハハハハ、見たか?これが共和国最強とも言われた火炎魔法使いの実力よ。恐れ入ったか?降伏してこの件を黙ると誓うなら見逃してやる。」


 しかし、我らが放龍はこんな事で怯むわけがない。ましてや降伏なんてする訳がないのだ。彼は左アームのホイルを取り外し、拳を再び握りしめファイティングポーズを取った。


「フン、死が怖くてプロボクサーなどやってられるか。貴様の炎など恐れるに足りず。アルミホイルはただ電磁波から見を守るため、貴様など素手で十分だ!」



 二人が戦っている中、騒々しく思えた多くの町民が様子を見に集まってきた。俗に言う「野次馬」だ。


カエンダは情報漏えいを恐れ、集まってきた野次馬に苛立ち放龍と対峙する事より町民の駆除を優先することにした。


「寄るな愚民共、夜は寝ろとママに教わらなかったのか?」


カエンダのかざす左手から火炎放射が放たれた。カエンダは火炎魔法の達人、無詠唱でも町民くらいであれば焼き払う程の魔法は唱えられるのだ。


「育ちの悪い子は消し炭だイヤッホーイ!」


意気揚々なカエンダだったが、放龍が町民が焼かれた事に何も反応がない事に気づく。流石に違和感を抱いたのか放龍が何故、町民を焼かれた事に何も言わなかったのか訊ねた。


「お前、目の前で人が焼かれた事を何とも思わないのか。それとも突然の出来事が過ぎて言葉を失ったか?」


放龍がアクションのない事を慌てながら訊いてくるカエンダに対し、放龍は何一つ表情を崩すことなく言い返した。


「…お前には本当に町民が焼き払われたように見えるのか?」


その言葉を聞き町民の方向を振り返ると、そこには誰一人焼かれた様子はなかった。ただ一人、魔力防壁を貼りながら町民を火炎放射から守った一人の少女の姿があった。


「魔術師カエンダ議員、町民を焼き払う事が政を担うあなたがやるべき事とお思いですか?」


 彼女はそう、クルオナだ。攻撃魔法がないために戦闘要因にするには心許ないものの、放龍を呼んだ召喚魔法、窮地のエデアを救った回復魔法、そして無詠唱でもカエンダの火炎放射を防ぎきれる魔法の壁を貼れる防御魔法を唱えられる。召喚術師とヒーラー、そしてアシストもできる新米魔術師にしてはとてつもない程にエリートなのだ。


「そう、この天!才!エリート魔法少女のクルオナちゃんが町の人たちを全力で守り抜くんだから!」


「エリートだ?貴様この野郎!」


隠蔽のための焼却が上手くいかなかった事に腹を立てたカエンダ、再び火炎魔法を唱えようとした。その時である!


「スライサーメラン!」


スライサーメランとは魔力エネルギーで構成され武器として使われる剣、サイキックセイバーの応用形となる魔法生成武器である。ブーメラン状に魔力エネルギーを個体化して相手に投げつけるのだ。


それを唱えたのはかつては皇国の尖兵として戦っていたエデアである。放龍や町民の危機にクルオナと共に駆けつけたのだ!


「おいおい、北島三郎は貴様この野郎なんて言わねーぞ。」


エデアの攻撃はカエンダの顔をかする。かすり傷からは僅かではあるが血がたれていた。


一連の流れに耐えきれず、とうとうカエンダは激怒した。


「貴様ら、ふざけるのも大概にしろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


だが、憤るカエンダの横から放龍の左ジャブが入る。


「ぐほぉっ!!」


「いい加減にしろカエンダ=バリン、貴様の相手はこの俺ただ一人のはずだ。貴様が町民にちょっかい出すからこうなったのだ!今からでも仕切り直せる。さぁどうするカエンダ?」


「知るか、俺はもうすべてがどうでも良くなった。仮は必ず返してやる。」


放龍からの問いかけに、諸々の事があって苛立ちのあまり戦意喪失したカエンダは捨て台詞を残して北部のオプサホス方面へと向かい去っていった。


『オプサホス、やはり連中が噛んでいたか…。カエンダの炎は厄介だ、何か対策を練らねば。』


カエンダとの決着を早急につけなければならない、しかし火炎魔法を攻略しなくては勝ち筋はない。放龍は例え一人であっても危険区域に立ち入り決死の闘いをする運命にあるということを悟った。そして、その運命に立ち向かう事を誓ったのだ…。





「天!才!エリート魔法少女…ブフォッw」


「ちょっと、何笑ってんのよエデアァァ!!」

カエンダ=バリンを倒すために危険区域と指定されたオプサホスに乗り込む放龍一行。しかしそこにはカエンダの罠が仕掛けられていた。その先にある、オプサホスに隠された事実とは?


次回、16話「追求!オプサホス発信所事故の真相」にご期待下さい

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