14話 守れ、市民とローカルアイドルの絆!
多忙より一ヶ月更新できませんでした、申し訳ありません。
時は数年前に遡る。ミュナンがコリッテラス10に所属していた頃、あるライブ後の握手会に参加した時の話である。
エデアもファンとして列に並び推しとの握手を待っていた。
エデアの順番が回ってきた。ミュナンはツンデレキャラを演じさせられていたため、そっけない態度でエデアと接する。
「あら、また来たのね。懲りないねアンタも…どうせ他の子のオマケ程度で来たのでしょう?」
「そ、そんな訳ないじゃないですか…。俺の推しはミュナンさんただ一人です!」
「ま、口で言うのは安いもんよね。お仕事だから握手はやってあげてるけど、わざわざ時間割いて来る必要なんてないからね。」
「へへ、また来ますよ〜!」
数時間後に握手会も終わり、ミュナンはロッカールームで一人になり悩んでいた。
『あの人、また来ていた…。あんなに熱心に応援してくれているのに、役柄とは言えあんな冷たい態度…もうイヤ。』
「はぁ…。」
彼女は深くため息をつく。
本来の彼女は穏やかな人柄であり、特に優しく接する相手には優しく返す性格である。とてもツンデレとは程遠い性格であった。
しかし、彼女の夢である人気アイドルを目指すとなれば性格を偽ることもまた大事である。
既に人当たりの良いキャラで売るメンバーがこのユニットにいたため丁度、空席であった人気がそれなりなツンデレキャラ枠を担当することになった。
『慣れない事をやってまで、私はアイドルを続けて人気者を目指す必要ってあるの?そもそもこれで人気が出るの?現時点でアイドルとしては有名、でもそれは他の人気な子についていっているから…。私自身はどうなの?』
ミュナンの脳裏には上手く纏まらない多くの葛藤がどよめいていた。
「なーに浮かない顔してんの、握手会に来たファンに好きな人でもいたの?」
人気のないロッカールームでしんみりとしているミュナンに声をかけたのは、肉食系サキュバス女子キャラを売りにしている人気1位のリリーナだった。
リリーナは演技でなく彼女の素もまた、メンバー屈指の男好きである。
多くのアイドルグループでは人気下位が枕営業を任されると噂されるがコリッテラス10では彼女が積極的に請け負う程なのだ。また多くのファンとも肉体関係を持っており、他のメンバーのファンにも手出しするほどでもあった。
目立ちたがりやで男にチヤホヤされる事を好むだけでなく、性的な目で見られる事にも寛容どころか喜ばしく思うほどである。
ミュナンは彼女が聞いた事に呆れながらそっけなく返す。
「そんな訳ないでしょ、あなたじゃないんだから。そもそもアイドルは恋愛禁止よ。」
「あら、ここでは素のあなたでもいいのよ。いつも仮面を被って表に出る事に悩んでる様子だったから気になって声かけたものの、その調子なら大丈夫そうね。ウフフ。」
リリーナはミュナンの悩みを見透かしていた。しかし二人は不仲であり、リリーナはそれを知ったところでどうでも良かった。丁度、声掛けしたらミュナンから冷たい対応をされた腹いせに煽った返しをしてロッカールームから立ち去った。
また一人になったミュナンは部屋の隅にある物陰をただ見つめて、自分の性格とアイドルとしてのキャラ付とのギャップの事を再び考えるのであった…。
それから月日は流れた。ヘムイ団から嫌がらせを受けた悲しみの日々の末、ミュナンのアイドルとして最後になる卒業ライブの日が来た。
ミュナンはマネージャーに最後くらいはありのままの自分を出したいと懇願した。
しかしマネージャーは首を縦に振らず、ミュナンを顔をしかめながら見つめ話した。
「いいか、本当のお前でなくてもファンの中ミュナンという女はツンデレなケットシーのアイドルなんだ。最後くらいは本当の自分を知ってほしい気持ちはわかる。だが、お前を追って応援してきたファンの皆が望んだミュナンは仮の姿の方なんだぞ!」
「そうですよね、ごめんなさい…。卒業だというのに新人みたいな愚問を聞いて失礼しました。」
わかりきっていた返事ではあるが、やはり言われると辛い。ミュナンはマネージャーから目を背け、耐えられず涙を溢しながらステージへ向かった。
観客席は満員、ファンの中には彼女の卒業を受けいられず泣いている者もいた。活動休止により人気が落ちたとはいえ、ファンは彼女の事を忘れていなかった。活躍していた頃の事を思い出し会場が満員になるほどにファンは殺到したのだ。
「みんな、こんなに集まってくれてありがとう!今日まで応援してくれたファンの皆に本当に申し訳ないのですけど、このミュナンは本日をもって卒業する事になりました…。活動休止したり、色々騒ぎを起こしたり、ファンの皆様を心配させてこの結果になってしまい本当にごめんなさい。ファンの皆に恨まないでなんて言いません。ですけど最後にわがままを言わせてください。私は普通の女の子に戻りますが、私を…このミュナンの事を一生忘れないでください!」
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
涙の卒業ライブを迎えるミュナンを暖かく包むようにファンの歓声が鳴り響く。
その中にはエデアもいた。なんと彼は奇跡的に最前列の席を当て、目の前でミュナンが迎えた最後の晴れ舞台を見届けたのだ。
「あなたは何も悪くありません、なので泣かないでください!」
涙するミュナンを見て、エデアは我慢できずに大声で言った。それも最前列ながら後ろの席までに響くような大声であった。
『あの人、今日も来てくれたんだ…。しかも最前列!?良かった、いつもあの人の笑顔に救われていたから最後に報われたのね。ありがとう!』
そして現在、ミュナンとエデアは奇跡的に再会した。アイドルとファンという関係ではなく、一般人同士として…。
「ごめんなさい、私はもう…普通の女の子として生きているのです。あの時の私はもういないのです、みんなの前に見せた姿は本当の私じゃないんです!」
ミュナンは本当の事をファンの一人にでも伝えたかったのだ。本当は人にキツく当る事を拒んでいたこと、ツンデレキャラはビジネスで演じていた事…それを今、ファンの一人であり顔を覚える程に毎度ライブへ来て応援してきたエデアに伝える事ができたのだ。
エデアはその話を聞いて少し戸惑いつつも、決してその事を拒む様子はなかった。
「あなたが気兼ねなく過ごせるのであれば、それが一番ですよ。僕はあなたが元気に過ごせたら幸いです…。」
「ツンデレ…キャラでしたっけ?下手くそでしたよね、私の演技。」
アイドル時代から完全に変わった事もエデアから素直に受け入れられ、ミュナンは嬉し泣きをしてしまった。泣くのも突然だった為にエデアは困惑してしまう…。
「えっ…とぉ…、あの泣かないでください。今も昔も貴方を推すことを辞めてませんから!」
その頃クルオナは二人のやり取りを苛つきながら退屈そうに眺めていた。
本人には気づかれないように隠れながではあるが、彼女はアガムートやヒャラオホ=ダナンに襲われた時に命がけで守ってくれたエデアに惹かれてしまっている。
そんなクルオナにとってはとても気に食わず、つまらない光景であるだろう。
「あ〜熱いムードですねぇお二人さん、はいはい。」
『てか何、あの女?アイドルだか何だか知らないけど何気取ってんのよ。そもそもアイドルなんてファンを金ヅルとしか思わなくてもらったファンレターを破り捨てるような人らでしょ、もう辞めた癖にまだファンに媚てんの?』
煽るように水を差し、ついでに小声で愚痴まで零してったクルオナ。クルオナ本人は聞こえないように言ったつもりではあったが、ミュナンには小声を聞き取る能力が備わっていた。その愚痴も当然ながら聞き取られていた。
「確かにアイドルにはそのような人が沢山いるわ、でも私はそのようなファンを裏切る真似は一切してないわ。」
「そうかしら?口では何でも言えるもんだわ。ファンの前ではいい子ちゃん演じるのも大変よね。」
ミュナンは挑発に乗ってしまい、クルオナは更に追い打ちをかける。その場には張り詰めた空気が漂いはじめた…。
その時である。
「ズルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!!!!!!!!!!」
放龍は飲んでいたアイスティの氷が溶け始めたので、それを吸っていた。その時、周りに鳴り響くほどの大きな音を立ててしまった。
「すまない、少し退屈だったのでな。丁度、喉も乾いた頃だ。」
「ちょっと放龍さん、喉が乾いたのなら言ってくださいよ。1杯くらいなら追加しても良いので、そんなお行儀が悪い事はやめてくださいよ。」
クルオナは放龍を連れてレジへ向かった。その際にミュナンの方を振り返りながら、腫れ物を見るかのように睨みつけた。
ミュナンもクルオナが自分の事を快く思っていないと察していた。そしてクルオナがエデアに気がある事にも気がついた。自分が逆の立場なら彼女のような事をしたくなるかもしれない、そう思った。
エデアはそんな事も知る由もなく、何故クルオナが怒っていたのかも全くわからなかった。
「なんかあったのか、あいつ。俺は何か気に触るような事したのか?」
エデアはクルオナの気持ちには全く気がついていない。
ミュナンはそれも感じ取ったが、クルオナの立場になり今は気づかれない方が幸せだろうと思った。
そしてミュナンなりに最適解を考えて助言をした。
「旅を共にしているのに、勝手に他の人との話に熱中してしまっては失礼ですよ。後でゆっくり世間話をしてみてはいかが?きっと、誤解も解けますよ。」
「そうかなぁ、いつもお互いこんな事ばかりなのになぁ…。」
「気まぐれで尺に触ったんですよ、きっと。」
状況が飲めないエデアに対し、ミュナンはあやふやな返しをした。
今はまだ、はっきりさせてはいけない。エデア自身がクルオナの気持ちに気づき、彼自身で解決する。その日が来るまでは…。
そう思ったミュナンの精一杯な対応であった。
しばらくして放龍一行が店を出た頃、街では大変なことが起きていた…。
「デカキン新聞エブリデイ!ビンビンハローエブリワン、どうもデカキン新聞です。本日のニュースは新人ローカルアイドルのトュジェリカちゃんが議員連合から『衣装がいやらしすぎる』と自粛要求が出たんだよ。一見ただの異論に見えるけど圧力かけられたらしく、事務所は議員連合と対談することになったんだ。今後が楽しみだね〜、はい買った買った!」
いつもの新聞屋を見かけた、どうやらトュジェリカというアイドルがミュナンと同じような目に遭いつつあるらしい。
トュジェリカの衣装は肩とヘソが露出しており、それが男性の劣情を煽り性犯罪の助長だと議員連合代表のマスカダ=オリバーから難癖をつけられたのだ。
「…ッ!!」
放龍たちと同じタイミングで店を出たミュナンはそれを聞いた途端に走り出して何処へと去った。
クルオナは突如と消えたミュナンに疑問を抱く。
「何あの子?急に走り出して、変な人ね。」
しかし、放龍は察した。ミュナンが何故、慌ててどこかへ向かっていったのか。
それは業界では後輩にあたるトュジェリカに同じ目に遭わせたくなかったからだろう。
ある程度に人気があった頃にヘムイ団に目をつけられたミュナンならいざ知らず、新人が同じ目に遭ってしまうと当人は尚の事悔しい思いをするだろう。
経験者としても同じ思いをするはいてほしくない、ミュナンはそう思ったのかもしれない。
「エデア、クルオナ、ちょっとゲーセンとかで遊んでこい。俺は少し用がある。」
それを言い残し放龍はミュナンが走り去った方角へと向かっていった。
「なぁクルオナ、ゲーセンとは何ぞ?」
「さぁ…、何なのでしょうか?」
残された二人は不思議そうに思っていた。
議員連合からあらぬ指摘を受けたトュジェリカとマネージャーは異議申し立ての為に騒動の元凶たる議員連合のマスカダ=オリバーの事務所へ来ていた。
「今回のトュジェリカに対する自粛要請に関し、あなた方は大いに勘違いしていると思われます。我々はスタッフも所属タレントも全て女性であり、すべて女性目線で可愛さを表現したものであります。それを『男目線の性的なデザインかつ性犯罪の助長に繋がる』と言うのは大変心外であり、名誉毀損で訴訟することも考えております。どうかマスカダ議員との対談を!」
マネージャーが事務所前の門で問いただした。
すると中から変なおばさんが出てきた。そのおばさんこそマスカダ=オリバーである。
「うるさいメス共だ名誉男性が、私の意志に従わないと言うか?活動に支障出るのか知らんがお前らの事など知らん。私が気に入らなければ気に入らないだけなんだよ!」
マスカダは手を広げ、トュジェリカとマネージャーの二人に手のひらを向けた。
「くたばれメテオライトアタック!」
マスカダがそう叫んだとき、手のひらに球形のエネルギー体が現れ、トュジェリカら二人のもとへ向かい放たれた。
その時、物陰の中から素早く動く者がその時球体を引き裂いた。
その者の正体はミュナンだった。
ミュナンはケット・シーのアイドルとして活動していたが、実は戦闘能力も備わっていたのだ。戦闘体勢に入るとネコの耳の形をしたエネルギー体が頭部に、ツメののような光の刃が両手に五つ、尾骨の部分から尻尾のような光のムチが現れる。その姿はまさにネコの力を使う戦士である。
「逃げて、あなた達の夢は絶対に壊させない。もう二度と私のような思いをする人を出したりしない!」
ミュナンは、トュジェリカにされた事が自分の受けた仕打ちと重なったのだ。例え自分自身の手を汚すような事になっても新人のトュジェリカにはあの辛さを味合わせたくなかったのだ。
「フン、誰かと思えばあの時の女ね。そんなに誹謗中傷されたのが嫌だったか?ニートになったのはそんな事に耐えられず辞めたあんたの自己責任だろうがい。」
「覚えてくれて光栄ね、でもアンタのその無責任な行いは絶対に許さない!」
二人は激しく睨み合う。今にも殴り合いが始まりそうな雰囲気であった。
「待てぃ!」
殺伐とした中、何処からか声がした。快晴の空、太陽に照らされ煌めくアルミホイルを纏ってそいつはやってきた。
天を轟かすような殺気、大地を揺さぶるような勇ましさ、誰が呼んだか放龍が姿を現したのだ。
「ミュナン、無謀な真似はやめろ。お前が勝てずに命を落としてしまってはその意気込みは無意味になる…。後の事はこの俺に全てを委ねて二人を連れて逃げろ。」
「あなたには関係ないわ、帰って!」
放龍の忠告を聞かないミュナンに対し放龍は畳み掛けるように反論した。
「確かに俺には関係ない話だ。だがお前が傷ついて悲しむ者がいる事を忘れたか?仮にお前が勝ったとして、その者はお前の手が血で汚れる事をなんとも思わないとでも思っているのか?アイドルを辞めたらファンの事は関係ないと言うのであればもう返す事はない、俺もここを去ろう。」
放龍のその一言はミュナンに自身が復讐に我を忘れていた事を気づかせた。ミュナンは放龍の説得を受け入れたのだ。
「わかったわ、後はあなたに任せる。だから絶対負けるんじゃないよ。」
ミュナンはトュジェリカ達を連れて安全な場所へ避難した。
いよいよ放龍とマスカダの一騎打ちが始まる。その前にマスカダは放龍の揚げ足を取ろうかと屁理屈をごねだした。
「あんた、私は女よ!女に暴力する気?最低ね、弱者に優しくできないの?」
放龍の良心に訴えかけようとしたマスカダだが、放龍がせせら笑いながら冷静に言葉を返した。
「フン、俺は有害な人間と判断したら女だろうが老人だろうが容赦はしない。それに貴様は議員という立場で市民に圧力をかけ、反論したら力でねじ伏せようとした。それが弱者のする事か?十分に強者だろ。」
それにはぐうの音も出ないマスカダ、怒りを顕にし強力な魔法を唱え始めた。
「生意気なこと言うんじゃないぞ小僧。喰らえ、メテオダストフォーメーション!」
メテオダストフォーメーション、それはメテオライトアタックを同時に出現させ一斉に放ち敵を粉砕する恐ろしい魔術だ。これを食らってはインドゾウも気絶してしまう…。放龍危うし!
放龍を囲むように四方から巨大な魔法エナジーの詰まった砲弾が襲ってくる。凄まじい爆音を立てて放龍に命中し大爆発が起きた。
「あはははははは!口ほどにもないね。さっきあのガキに向かってカッコつけたこと言ってこれだよ。やはり、我々ヘムイ団に勝る者はなし!」
そう、マスカダ=オリバーはヘムイ団の一員であった。それも幹部級である。その地位でかつ地方行政にも絡んだ危険な魔術師であった。ミュナンを潰したのもトュジェリカに対する言いがかりもマスカダの嫉妬による物だった。マスカダはモテる女を憎み反体制男女分断テロ組織であるヘムイ団に入隊したのだ。
マスカダは完全に勝ったつもりになっていた。
しかし勝ち誇るマスカダの前で、爆破した場所に何者かが立っていた。決して立ちすくむわけではなく、何事もなかったのように一人の男が仁王立ちしていたのだ。
「煙たいと思ったがこの程度か?高校生ボクサーのジャブの方がまだ痛みがある、貴様の攻撃は軽い。ただの電磁波攻撃に過ぎん。前の世界から鍛え抜いた体とアルミホイルの前では意味を持たん。」
なんと、放龍は無傷だった。メテオダストフォーメーションの威力を食らっても数多のボクサーに殴られまくった放龍の前では軽いものだったのだ。ましてや頭、胴体、腕、膝下を包むアルミホイルにも守られ、放龍の前では園児に叩かれた程度のダメージで済んだのだ。
「お前バケモンか!」
マスカダはたまげて立ちすくんでしまった…。
そして、放龍のカウンターが始まる。
「次は俺から行かせてもらおう、雷鳴百連打!」
雷鳴百連打、それは受けた者は雷に撃たれるが如く全身を痺れさせる程にジャブをぶつけ、その途中あるいは締めに強力な右ストレートを食らわせる。
受け身になれば、あたかも龍の逆鱗にふれ稲妻を落とされたかのように見えるのであろう。
マスカダは躱す間もなくジャブを99発受け留めの右ストレート、それも魔力の防壁さえ砕くとされるとてつもなく重い一撃"魔断拳"を食らわされた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!無念ッ………。」
マスカダはその断末魔を残し爆散した。
トュジェリカ達を安全な所へ避難させたミュナンは放龍とマスカダの一戦の行方を知るためにこの場に戻ってきた。そこには勝ち誇る様子も見せず、ただ黙って立っていた放龍がいた。
放龍はミュナンの視線に気づきふと振り返る。
ミュナンはその様子を見て言ったのだ。
「約束通り勝ったのね…。」
放龍とミュナンはエデア達の元に帰りついた。クルオナは放龍に叱りつけるように問い詰めた。
「急にどこ行ってたんですか?てか、かすり傷ありますけどまた誰かとドンパチしたのですか?その時はちゃんと私を連れて行って下さいよ!」
「悪い、少しじゃじゃ馬を落ち着かせようと思ってな。」
「なんですかそれは?」
エデアはこの会話をぶった切るように問いかけた。
「ミュナンさん急に飛んでいってどうしたんですか、もう心配で心配で…。」
「ごめんなさい、放龍さんに止められなかったらあなたを悲しませる事になってたかも。」
そうして放龍一行はスワンパーバーを旅立つためにミュナンと別れる事になった。当然ながらエデアは寂しげではあった…。
「さようならミュナンさん、また何処かで会えたら幸いです!」
「泣きすぎですよ、絶対に何処かで会えますから落ち着いて下さい。あと放龍さんもお世話になりました。」
「…あぁ。」
こうして放龍一行は旅に出た。しかしヘムイ団はまだこの世にいるのだ。再び恐ろしい毒牙を大衆に向ける事があるだろう。また敵は他にもいる。果たして放龍はそれらを裏で支配する者を突き止める事はできるのか?
唸れ、龍の拳!巻け、アルミホイル!世界を魔術師の好きにさせぬ為に、勝利のゴングを打ち鳴らせ放龍!
人間を焼き払い、意志なきゾンビ兵を量産する計画「人間ステーキ計画」の役目を担うカエンダ=バリンが放龍を襲う。彼の灼熱魔法にはアルミホイルも役に立たない。どうする放龍?
次回、「熱い!灼熱人間ステーキ計画」にご期待下さい。