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10話 立憲の虚言 クルオナ、涙の嫁入り

この作品はフィクションであり実在する人物や団体とは一切関係ごさいません。尚、この作品は作者の思想を表しているわけでもございません。

 クルオナはエデアと共にお墓参りへ向かった。クルオナが墓場で鳴らしたオルゴールにはクルオナの父親が「共和国政府の真の目的は国民の抑圧」という遺言が残されていた。


それを知られたらまずいのか何者かがオルゴールを破壊した。その者は一体…!? 




「クルオナちゃん久しぶり、もう赤ちゃんを作れそうな体だね。ドュフフフフフ!」


クルオナは青ざめた表情でその者を見ていた。それもそのはず、その者は8年前にクルオナの両親を殺した犯人だったのである。


「ど、どうして…あなたは、皇国の者でもう処刑されたはず…。」


「おいおいおいおいおい効果覿面だなぁ!皇国のペーペー兵から防具奪ってあたかも皇国の仕業にしておけばバレねぇって策よ。不運にもこんな形でバレちまったけどよぉ!」


クルオナを見て高笑いしながらその者は自慢げに話す。

これをにはエデアも我慢ならなかった。同期ではないが仲間を殺されている事になる。そして何より、クルオナを笑い者にしている事が許せなかったのだ。


「何者だお前…調子に乗ってるんじゃないぞ!」


「我っちはパヨン立憲主義共和国国会議員にて魔術師のヒャラオホ=ダナンてんだ。いかにも我こそがそこの小娘の両親をブッ殺した張本人だってんだ!」


「そうか、つまりクルオナの親の敵と言うことだな?ならばクルオナに変わって俺が相手になってやる!」


全身を震わせながら怒りに満ちた表情で彼はヒャラオホを睨み、そして戦闘体制に入ろうとした。が…


「待て待て待てよん、我っちは貴様らを殺しに来たんじゃないんだってばよ。クルオナちゃんを我っちのお嫁さんにしろってんだ。さすれば非礼も見逃すよん小僧、さもないとあんたら死ぬよん!」


ヒャラオホは交渉すると言い出した。それもクルオナを嫁にしろというトンデモ条件だった。そうしたらエデア達には手を出さないと言う内容である。彼自身は50代、14歳のクルオナとはあまりにも年の差がある。


当然こんな条件にエデアが乗り気になるわけがなく、憎悪と怒りで我を忘れそうなほどになりながら怒鳴りつけた。


「ふざけるな、そんなおぞましい条件を受け入れるわけないだろ。お前は何を言っているのかわかっているのか?犯罪行為だぞ!」


「おいおいおいよーい、そんな法律何度でも変えれるんだでよっと。14歳との結婚で逮捕は不当、当然性行為もねっ。50代と14歳が結婚なりセックスなりしても何も問題ねぇんてんだ!」


「問題はあるだろ。妊娠、出産の時における身体への負担は成人にですら重い。10代には尚の事だ。そして安産もしにくい事くらい保険の教科書に書いてなかったか?そんな事も考えきれない程なのか?義務教育からやり直せ!」


しかし完全に常識の外にいる彼にはエデアの言葉は響かない…。クルオナを我が物にする事だけを考えている。魔術師は常に国民を搾取することだけを考えているとはいえ、これは流石に度が過ぎたものだった。


クルオナは瞳孔を丸くして零れそうなほど涙を浮かべていた。おぞましさのあまり頭が真っ白であった。顔には大粒の汗がたらしている。


エデアはそんな彼女の様子を見てもはや我慢の限界であった。そして、今この時とばかりサイキックセイバーを抜刀した。


「お前だけは絶対に許さない。行くぞ…抜刀、サイキックセイバーッ!!」


エデアはヒャラオホに向かってその一太刀を振り下ろす、そのために飛びかかろうと足を踏み込んだ…


 が、その時であった。一筋の光がエデアの目の前を走り大地を切り裂いた。たった一切りで地面には深い溝ができる程に凄まじいものであった。


エデアは肝を冷やし一気に冷静になった。衝動的に光の根源と思われる方向にサッと視線を向けた。


そこには一人の魔術師が浮揚魔法を使い宙に立っていた。ゆっくりと地面に降り立ちエデアに近寄った。その者の正体は…


「あ、アンタは…最強の剣豪、セーバ=ラマージ。なんでこんな所に…?」


セーバ=ラマージ…そう、パヨン立憲主義共和国十天君の中でも最強と言われる剣士だ。何故カッツォダーヤに止められた彼がこんなところにいるのだろうか…。


「知ってるなら自己紹介はいらないな。要件を言おう。俺はお前らが敵意を見せるまでは監視という形で済ませていたが、今ここで抜刀した事はつまり『敵意を剥き出しにした』と言うことではないか?」


「おい!あんなのを見ても尚、大人しくしろと言うのか?あんたは女の子を平気で傷つけようとしてる奴を見てなんとも思わないのか、戦士としての誇りもないのか?」


エデアの問にも聞きもせずセーバは近寄りサイキックセイバーをエデアの首に近づけた。


「ほう、怖気づいて姿勢を崩したが威勢だけは残ってるようだな。どうだ、俺と手合わせするか?丁度、腕ならししたかったところだ。」


「クッ…。」


アガムートの配下数名を全滅させたエデアであっても所詮は二等兵、2カ国の中でも最強と言われるセーバには遠く及ばない。甲子園未出場の公立高校と大阪桐蔭高校くらいの差はあるのだ。


「おらおらおらららららら!!!!!セーバ様にビビったか小僧ッッッッッッッッ!!!!!!所詮お前じゃセーバ様には叶わないよーってだ。さっさとクルオナちゃんをよこせ!クルオナちゃんをペロペロしたいんだをクルオナのちっぱいちゅぱちゅぱ〜!!」


「俺もすぐ調子に乗るあのロリコン野郎を斬り捨てたいが、そうは問屋がおろさない。どうする小僧、そこの小娘をこの変態に渡して一人で生き延びるか?それとも俺と斬りあって小娘ごと死ぬか?ニつに一つだ。」


感情を顔に出さず威圧的な雰囲気で尋問をするセーバ。このまま黙っていたらクルオナごと切り捨てられるだろう。それはエデアもわかっていた。


しかし、エデアの答えは決まっていた。迷うことも黙ることもなく彼は答えた。


「俺は少女を見殺しにしてまで生きられる程クズじゃないんでね…。クルオナ、どこまで持つかはわからない。だがここは俺が引き受ける…だから急いで逃げろ!」


エデアはクルオナの方を見る事なく大声で逃げるように勧告した。彼は死んでもクルオナを守るきであったのだ。


 しかし、クルオナから返された言葉は一同を驚愕とさせる発言であった。


「エデア、およしなさい。」


エデアは彼女の言葉に耳を疑い、衝動的に振り返ってしまった。


「エデア、あなたがセーバ様に敵う訳がありません。あなたが挑んだところで犬死するだけです。私がヒャラオホ様に嫁げば、あなたや放龍さんは無傷で済むのですから…。」


「正気かクルオナ?お前があいつの元に行ったらもう二度と自由なんて与えられないぞ。一生、あいつに弄ばれ続けるかもしれないんだぞ…。」


「あなたの心遣いに感謝致します。ですが、私は…あなたが傷つく事が嫌なのです。アガムートが攻めてきた時も、あなたは命をかけて守ってくれました。今度は、私がお返しする番です。守られてばかりでは、私も辛いのです…。」


クルオナは目元から大粒の涙をこぼしていた。垂れた涙が眩しいほどに光っていた。


エデアは当然ながらクルオナが本気でこれを言っているわけではない事を察した。

こんな醜い50代のおっさんから受けたアプローチを素直に受け止める少女がどこにいようか?ましてや両親を殺しているのだ。催眠洗脳系エロ漫画でない限りありえない。


ただ、クルオナがそのような素直に受け止める事もあるはずのない理不尽な要求を承諾したのは己の弱さにある。彼はその否定する事が不可能な自分自身の落ち度も考えとても悔しくてたまらなかった。悔しさのあまり頭が真っ白になりただ呆然と立ちすくむだけであった。


「よーそろよーそろよーそろよーそろよほほほーい!これってもう、婚約成立ってやつだよねー!FOOOOOOOO!!!!!!!これから毎日クルオナちゃんと一緒だね。毎日クルオナちゃんのちっぱいちゅぱちゅぱしながら髪の毛スハスハしてプリップリなお尻ペチペチするをいやークルオナちゃんだけ生き残しておいて良かったよ、こうやって運命の出会いできてさ。男の子だったら殺してたよ、両親ごとね!」


「それだから貴方はあの時、私だけを残してお父さんとお母さんと3ヶ月の弟を…?」


「あはははーんはーんはーん、クルオナちゃんが覚えているのは誤算だったけどねー!!でもいいじゃん、君は生きてる。僕ちん命の恩人ジャーン?」


 そう、パヨン立憲主義共和国政府は国民粛清平均化計画を見抜き批判したクルオナの両親からマスコミへのリークを恐れたため一家虐殺を企てていた。


その任務を任せられたヒャラオホはあろうことかクルオナに欲情してしまったため彼の一存でクルオナだけ残し他の家族は皆殺してしまったのであった。まだ生後3ヶ月だった赤ん坊の弟までもだ。


記憶を紛らわせウヨーに彼女の恨みを向けさせるため皇国の二等兵を殺害し防具を奪ったのもクルオナが我が物とする時の弊害を減らすためでもあった。


 クルオナは激しく憤る感情をエデアの命を守るために押さえ込み、ただ黙ってヒャラオホのもとに寄り添うように近づいた。


エデアの隣を過ぎ去る前に、彼女は小さな声で細々と喋った…。


「さようならエデア、ごめんなさい…。」


そう言い残し彼女はヒャラオホのもとへ行き、お姫様抱っこされながら無理矢理作り笑いをした。


「これって俗に言う寝取りってやつー!?おほーいやったじゃん!やっぱり僕ちんはツイてるー!!女の子寝取ちゃったー♪」


「あの者はそもそもお付き合いもしておりません。私が想うのはあなただけですよ。」


ヒャラオホはエデアに煽動しながら転送魔法によってクルオナを連れてどこかへ去った。


 エデアは膝から崩れ落ちるようにしゃがみ込む。自分がもっと強ければ、クルオナをこんな目に合わせなかった。自己嫌悪に陥り両手を地面につけながらうずくまっていた。


「くそぅ…、くっそぉおおおぉおおおおっ!!!!!!!!!」


彼は思わず雄叫びを上げた。両手で地面を何度も殴りつけた。


「フン、もはや生きてても抜け殻同然だな。生きててももはや辛いだけだろう。今楽にしてやろう。小娘は無駄に理不尽な目に遭ったかわいそうなやつになるがな。」


セーバはそんなエデアを見て虚しく思ったのか、約束を破り斬り捨てようとした。強固たるサイキックセイバーが抜刀される。一筋の閃光がエデアを狙った…。


 その時、何者かが乱入してエデアを突き飛ばし閃光を受け止めた。


放龍だ、放龍がエデアを庇いセーバの攻撃を受け止めた。トレーニングを終えた放龍はクルオナ達が墓参りに行くことは聞かされていたが、二人が帰ってこない事を不審に思い墓地まで駆けつけたのだ。


「クルオナ達が墓参り行ってから、やたらくせぇ臭がするから来てみたら、案の定くせぇ奴がいたもんだな。」


「貴様、皇国の魔術師を三人も倒したという召喚獣じゃないか。ほう、この俺を愚弄するとは相応の覚悟ができているという事だな?」


「死ぬのが怖くてプロボクサーになる奴なんかいるかよ情弱。」


放龍とセーバ、二人は尖った目つきで睨み合っていた。その場は激しく殺意に満ちたオーラが広がっていた。


「行くぞ、サイキックセイバー乱舞斬り!」


先に仕掛けたのはセーバだった。サイキックセイバー乱舞斬りとは両手のサイキックセイバーを不規則に動かし、あらゆる角度から刃で敵を斬りつける恐ろしい技だ。油断をしていると気づかぬ内に身体がバラバラにされてしまう。


しかし、放龍はボクシングで鍛えた動体視力により全ての攻撃を交わして一気に間合いを詰めた。そして、そこから繰り出されるのは…


「次はこちらから行くぞ、魔断拳!!」


魔断拳、この国の神話より受け継がれし究極の技。放龍から繰り出される魔断拳はあらゆる魔力防壁も粉砕してしまう。そしてその拳はセーバのサイキックセイバーを片方、叩き折った。


「何ッ…!?」


突然の出来事に気を取れたセーバに対し一切の容赦もなく放龍は次なる技を打ち出す…


「喰らえ、飛昇龍アッパー!!」


飛昇龍アッパー、皇国の魔術師ネーケゲウェに追い詰められた時も一発で逆転したあの技をここでも使うのだ。激しい水流を遡り、険しい瀧をよじ登り、そして広き天を翔ける龍が如し拳がセーバを襲う。


だがセーバは何事もなかったかのように飛んで避けた。間合いが開いた所で戦闘態勢をやめ話し始めた。


「放龍とやら、この俺の刃を砕きバリアを張らせたのはいつ以来のことか。貴様の実力は見込んだ通り本物だ。だが、決着をつけるのは今でない。これを受け取れ。」


セーバは放龍に何かを投げた。放龍はそれを受け取って確認したところベータマイナスというラブホテルの名刺だった。


「貴様、これは何だ?」


「あのキモペド野郎が今日あの小娘を連れて寄るであろうラブホテルだ。場所も書いてある。」


「何故それを俺に教える?」


「俺はあくまでキモペド野郎の作戦に抵抗されたら斬り捨てるよう監視刷る役目で呼ばれただけだ。あとは知らん。それに、こちらに人質がいるとお前も戦いにくいだろう。そんな奴を倒してもつまらないから、先にその件を終わらせてこい。決着はその後だ、楽しみに待ってるぞ。」


そう言い残してセーバは去った。


 その後、一人でしゃがみ込み泣いているエデアに放龍は声をかけた。放龍とてエデアが己の無力さに潰されてしまい立ち直れなくなるのではと心配であった。


「エデア、すまない。俺がもう少し早く来ていればお前を泣かす事にはならなかったかもしれない。許してくれとは言わない。だがもう泣くのはやめろ、その涙は本当にクルオナが助からなかった時にとっておけ。」


涙を拭い、放龍の方を見つめエデアは聞いた。


「じゃあ…つまり、クルオナを救い出せる策があると言うのだな兄貴!」


「あぁ、あいつが言った事に偽りがなければここにクルオナがいるという事になる。罠かもしれないが行ってみる価値はある。俺もクルオナが勝手にどっか行かれては困るからな、絶対に連れ戻すぞ。」


希望を僅かながら取り戻したエデアは勢いよく立ち上がり、目には輝かしい光を取り戻しながら言った。


「あぁ。兄貴、一緒に行こう!でも、セーバの奴がいないかな?」


「あの様子ならいなさそうだが、警戒した方がいい。もしいたら俺があいつを止めよう。その時は、お前がクルオナを助けるんだぞ。」


「わかってるさ兄貴、絶対にクルオナを連れ戻す!」


沈みゆく夕陽に照らされながら二人はクルオナを連れ戻す事を胸に誓ったのであった。

連れ去られたクルオナはヒャラオホから絶えないセクハラを受け、助けが来ることをただ待つだけであった。放龍とエデアは怒りを爆発させ敵陣へと向う。負けるな放龍、囚われたクルオナを救い出せ!


次回、「新たな革命、立憲政府の真相を暴け!」にご期待ください。

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