1話 プロ追放!?そして転移
※当作品はフィクションです。実在する個人や団体とは一切関係ございません。
「速報です。只今、八百長により有見放龍のプロボクサー資格の剥奪が決定致しました。」
その報道は世間を騒がせた。
スランプだったプロボクサー、有見放龍が世界的有名プロボクサーにKO勝ちをした事から端を発した…。
当初は「放龍復活か!?」「放龍大金星!!」と朗報のように語られた。
しかし放龍の事をよく思わない協会の者達がこの番狂わせを利用し八百長の疑いをかけたのだ。
悲しいことに世間はそれを鵜呑みにした。最初は健闘を讃えたメディアも手のひら返し三昧だった。
普段はボクシングの報道をあまりしない報道番組の司会である子どもの頃から芸能界にいる飲酒轢き逃げ運転の前科持った奴は
「過去のたまたま取れた栄光にすがりついて身の丈程の結果が続いたのが気に入らずこんなくだらない事をしたんだろうね。ほらこのボクサー、元チャンピオンから教えられた子でしょ?そりゃあ変なプライドもあったでしょうね。」とお茶の間の前に向かって無責任に言い放った。
芸能、スポーツには力を入れる報道番組の司会、お笑い芸人でゴリラみたいな顔したタラコ唇の相方である金髪のオッサンは
「世界的ボクサーを相手するなら、そりゃ勝ちたいですよ。金使ってでもね。でも実力で勝ってからこそ本物でしょう?ウチらだって敵いもしないほどオモロい先輩芸人よりどうやって笑いを取るか毎日寝ずに打ち合わせてましたよ。放龍は努力が足らんかったとちゃいます?」と述べた。
大阪で主に活動するエセ関西弁を話す島根出身のサトイモみたいな顔したギョロ目も
「いやー、彼のした事は恥ずかしいですよ。国辱者ですよ!せっかく世界的なボクサーと一戦交えたのに八百長なんて…。他の日本人ボクサーの活動に影響しないといいんですけどね。」
と言ってスタジオにあるモニターを盛大に叩いた。
少し前はデブさを売りにグルメ番組出てた人と活動してた今は昼間の茶番報道番組の司会を務めるチンドン屋は
「いやぁ本戦は感動しましたよぉ…でもまさかこんなことになろうとはね。本人も言い分ありそうですけどもね。追放されてまだ文句言うのかですよ…」と延々と話す。
YouTubeで活動する変な囲いがたくさんいる物申す系自称プロレスラーはこう言った。
「八百長すると言うことは勝てないと認めてることだ。ならば最初から投了する方がカッコいいぞ。八百長はカッコ悪い。恥を知れ放龍!!」
世間も彼らに感化され放龍は相手に八百長をし、偽りの勝利をした姑息なボクサーとして白い目で彼を見た。もうボクサーとして活動するのは難しいだろう。
しかし、放龍本人からしてみれば非常に腑に落ちない結果なのだ。なぜなら彼は八百長なんてしていない。コーチもそんな話を持ちかけていない。勝てたのも対戦相手の試合をひたすら見続け、彼の弱点をつける特訓をしたからだ。
当然、放龍は反論を続けた。放龍はボクシング協会に名誉毀損とプロ剥奪の撤回を求め訴訟する事にした。そして東京都港区に拠点を置く弁護士が協力すると名乗り出た。
だが、その弁護士はみんなが断るような仕事ばかり請け負い費用だけもらい負け続けるというインチキ弁護士のようだ。以前に千葉県在住の男性が30万円持ち逃げされたという噂もある。他の弁護士を断られこの怪しい弁護士のみが頼みの綱だった放龍にはつらすぎる話だった。
理不尽な現実に大粒の涙を流しながら彼は故郷である愛知県岩倉市に帰ることにした。
プロデビューのために上京する時以来、久々に降り立った岩倉駅。駅前にはマスクをつけた怪しいおじさんが立っていた。
「集団ストーカーについてのビラはいりませんか?集団ストーカーはあなたを監視しております。電車は集団ストーカーに見張られており女は痴漢、男は痴漢冤罪にアイマス。警察や消防もグルでーす。昔から床屋は酸っぱいと言われておりまーす。」
放龍は彼からビラをもらい、集団ストーカーについて調べてみることにした…。
ビラに書いていた情報とインターネットで調べた情報を照らしあわし彼は真実に辿り着いた。
「集団ストーカー…秘密結社…マイクロチップ…マインドコントロール…思考盗聴…5G…!?」
そう。協会は政府や大企業、裏社会勢力と深い結びつきのある秘密結社の手先であった。秘密結社は放龍が勝った事を気に入らなかったのだろう。だから5Gをばら撒き真っ赤な嘘を国民に信じ込ませ放龍を鼻つまみ者にして追い込んだのだ。
放龍は許せなかった。彼はこのような事態に自分を追い込んだ秘密結社と戦い曝け出す事を決心した。そして、それに必要な物を購入するために近所のカネスエに向かった。
福岡県に住むいい男を自称した肩にフケを貯めているオッサンからツイッターでアルミホイルは5Gによる思考盗聴や健康被害から見を守る事を聞いた放龍は近隣にあるスーパーやディスカウントストアにある100円で長さ20mのアルミホイルを合計2000個20万円で買い占めた。プロボクサーとして実績がある彼にとってはまだ許容のできる値段だった。
もっとも、師匠のメンツを潰しボクサーとしてのプライドを捨てる手段を取ることになりかねない場面になっても協会と戦うことにした彼にとっては安い必要経費に過ぎなかったのだろう。
2000個のアルミホイルを持ち帰りながら歩いていた放龍。しかし突然視界が歪み始めた。周りのものがボヤけ、恐ろしいほどにグネグネして見えた。まるで覚せい剤を投与したした人の視界であった。
「く、しまった。買ったのはいいが頭にアルミホイル巻いていない今だと5Gに対して無防備だ。図られた…俺が協会と秘密結社に楯突くことが思考盗聴からバレたんだ。思考を弄って俺を薬物乱用患者に仕立て上げるつもりだな。頭が割れる程痛い…ぐおおおおおお!」
激しい頭痛、めまい、視界の歪みに飲み込まれ放龍は意識を失った。
「気が付きましたか?」
「誰だお前は、ここは何処だ?」
「ここはあなたのいた世界とは別の世界、俗に言う異世界です。」
意識を取り戻し目が覚めた放龍の前に立っていたのは10代半程の少女だった。
クルオナと名乗る少女は放龍にここは異世界と話し出す。異世界とは何なのか、彼女の話は嘘か真か?迫る兵隊、危うし放龍
次回 纏え、アルミの装甲
ご期待下さい