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第一回

見るからに廃屋。

二階建てのアパートの壁は、コンクリートでできている。さも当然のように、その壁は落書きと共存していた。

人通りは少なく、こんな真夜中にはまず人は通らない。こんな道では頼りになる街灯は、点滅を繰り返す。


そんな真夜中のアパートの一室。


蛍光灯のジーーーとなる音が、真夏の蝉を彷彿とさせるように鳴り響く。


「後何分?」


低い、それでいて心地よく耳に響く声が、アパートの一室に響く。


「んー、あと1分ちょいー」


それに返事を返す声は、一般男性と比べると少し高め。しかしそれでいて、甲高い印象は全く受けず、どちらかと言うと、落ち着いているようにも聞こえる。


部屋に音楽が流れ始める。

その曲は、夜の静けさに似合わないような明るい曲調でありながら、どこかノスタルジックな思いを彷彿とさせる。


「どうも皆さんこんばんは。不定期。真夜中の3時開演。月と星空のラジオへようこそ。メインで喋る方の月と申します。そして、俺の相方の」


「星って言いまーす。声が高い方が星。低い方が月で覚えてねー」


「自己紹介はここまでとしまして、星さん、記念すべき第一回目のラジオ。話す内容考えてきてくれました?」


「んー、色々迷ったんだけどね。僕の最近思ってることってのを話そうと思うんだよ」


「と、いうと」


「最近の漫画、キャラ死にすぎじゃない?」


「あー、それはあれかい?戦闘ものとかそう言う 」


「そーそー。どっかの友情努力勝利の雑誌とか、それ系ね」


「とは言っても、死んでないやつもかなり多いと思うんだけど」


「まあ、そうなんだけど、最近有名になってるのって割とそのイメージが強くて、あ、僕は別にキャラが死ぬのが反対って訳ではないよ。ただ、伝わるかな? 意味の無い死が多いなぁって」


「意味の無い死か、たしかに、殺す必要あった? 見たいなのは多い気がするね」


「そーそー、そーゆーのよ。キャラが死ぬシーンとかは、かなり感動的になったりするのはもちろんだけど、それってやっぱり、作者がごめん、ここで殺さないとストーリーが、くっ、死んでくれ。みたいな気持ちで殺したキャラだからこそだと思うんだよね」


「なるほどなぁ。確かにそれはあるかもね。でもあれなんじゃない。やっぱり人ってすぐ死んじゃうものだから。ある意味リアルに忠実的な」


「リアルに忠実かぁ。たしかにそれならと思うけど、フィクションだからこそ生きて欲しいよね。そして死ぬ時も、意味のある死を迎えて欲しいよね」


「たしかに、フィクション、漫画だからこその生き様見たいのはわかるな。漫画くらい綺麗事を貫いて欲しいみたいな。星さん的にはそこでしょ?」


「そー。そこよ。やっぱ漫画なら貫いて欲しいよね。今のご時世暗いニュースばっかだから、漫画の中でくらいいいじゃん。みたいな。あ、シリアスな展開が嫌とかではなくてね。こう、伝わるかなあ?」


「わかる。少なくとも俺には伝わってくる。リスナーもわかってくれる人いると思うな」


「だといいけどなぁ。と、僕が今日話したい事は話したかな」


「え、星さんよ。こんな、一緒にゲームしながら話すような内容で終わりかい?」


「月、ごめんな。ここが僕の最上級だよ」


「くっ、仕方ない。任せたのは俺だ。一旦切り替えてこのラジオの説明でもしてこうか」


「お、いいねいいね。ではメインで話す方の月からどうぞ」


「はいはい。丸投げされました月です。まあ、ここまで聞いて頂いた方々には分かると思いますが、不定期で真夜中に、我々が話したいことをダラダラと話す番組となっております」


「夜中の3時だもんねぇ。丑三つ時ってこのくらいかな?」


「正確には、夜中の2時から3時くらいが一般では丑三つ時かな」


「てことはー、お化けも寝静まるような真夜中ってことだね」


「そーそー、そんな時間に起きてる、悪いリスナー達に、なんのためにもならない話を聞かせるってこと。そしてそして、今はまだなんもないこの番組、リスナーの声を少しずつ取り入れていこうと思います。質問からお悩み。こんなコーナーやってなど、お好きに感想お送りください」


「昔のTwitterのつぶやきレベルで適当にどうぞー」


「さすがにそれは困るな。ま、まあ、そのくらいの軽い感じでどうぞってことで」


「まあ、初日だしこのくらいでいいんじゃないかなー。どう? 月」


「そーだね、少し短いけど、まあ、不定期、やる時間もまちまちってことで。〆の挨拶を星さんにお願いしようかな」


「ほいほい。じゃあ、皆様、月と星が同時に輝く不思議な空間。月と星空のラジオをお聞きいただきありがとうございます。またいつか、違う星空の下でお会いしましょう。おやすみなさい」


眠気を誘うような曲が流れ始める。静かな曲。しかし決して暗くはないそんな曲。


やがてその曲も終わりを迎える。そしてその曲が止まった時。月と星と名乗る2人の男は静かにその場を立った。

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