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イルカの町のイルカさん  作者: へもん
鏡花さんの困ったなぁ
1/6

自慢のガラステーブル(ふきふき)

「うおほっ!」



乱雑に敷き詰めてあった、本棚から埃が舞う。

咳き込んだのは短髪の男、怠そうな目を半目にしながら心の中で悪態をつく。


(糞!なんでこんなに汚れてるんだ!)


「はぁ……煙草でも吸お」


一度、事務所の換気扇に移動し電子煙草のスティックを取り出す。

スティックに煙草を差し込み、加熱が終わったところでフィルターに口を付け煙を肺に入れる。

(客もこねーから掃除でもしようと思ったらこれだ……はぁ今日はもう店じまいかな)


煙を吐き出しながら今日の店じまいについて考える。


(いやそれにしても汚い事務所だ)

事務所の真ん中には少し埃の被ったガラスのテーブル、そのテーブルを挟んで年季の入ったソファそして窓側には自分専用の紙の束が何冊も載っている机

どれをとっても事務所を汚く見せている要因の一つである。


今自分のいるキッチンもそうだ、なるべく水回りは綺麗にしたくて週に一度知り合いに頼んで掃除をしてもらっているが三日で水垢まみれ。

(今度、あいつに頼んで全体的に掃除してもらうか)


そんなことを考えていると事務所のドアが開く甲高い音が聞こえた。


「すみません」


少し暗めの女性の声が事務所に響く。

伏し目がちにこちらを伺い、何かに怯えてるかの様な仕草だ。


「いらっしゃい、依頼かな?」


「あの……えと はい、ここはなんでも屋さんでよろしかったでしょうか?」


「そそ、それじゃあ依頼内容を聞くよ」


そう言いながら男は電子煙草の電源を切り、テーブルの埃を服の袖で拭く。

「どうぞ、そっちのソファに座って、ちょっと汚いかもだけど気にしないでね」


「あっはい」

女性が座ったのを確認し、男から話し始める。

「まず自己紹介をしよう。私はここの事務所の主、イルカって言います。歳は秘密で」

少しおどけた様にそして安心させるようにイルカは微笑んだ。


(まぁ男と密室で二人っきり、それなりに緊張するのは当たり前か……うーんでもそれにしても怯えすぎじゃないか、そんな人相悪いか俺)


「はい、私は峯藤鏡花です。歳は21大学生です」

イルカの様子に少し安心したのか、怯えたようなたどたどしいしゃべり方ではなくなりはっきり聞こえた。


(21にしては頬がこけているし隈もひどい所見では25~28かと思ったが思い違いか)

イルカの思った通りで鏡花は21にしては隈も酷いし頬もこけている、そして何よりも気になったのが時折窓の外を怯えたように見ていることだ。


「では、鏡花さんここは先ほどなんでも屋といいましたが、正確には違います。正確には【面倒事請負人】そう私は呼んでいます。」


鏡花は不思議そうな顔をして次の言葉を待つ。

「多分鏡花さんのイメージしている、何でも屋と言うのは屋根の修理をしたり、迷い猫を探すなどの仕事に近いものだと思っているのではないかと」


「ですが、面倒事請負人は違います……って屋根の修理も迷い猫の捜索も頼まれればやりますけどもうちょっと違う」


「面倒事請負人は探偵ができない浮気調査後の別れさせ、危険な橋を渡るかもしれない薬の調査、人生で出会った恩人に会いたいと言われれば世界の果てまで捜索といった、他の探偵やなんなら警察さえ潜り込むのが難しいところに依頼者の面倒事に首を突っ込むのが我が面倒事請負人です」


と一通り説明したところで鏡花の顔を見る。

(なんだこの期待や不安そして安堵の混じった顔は)

そうイルカのいった通り彼女の顔は、色々な感情が入り交じったような顔をしている。

そして彼女が長い沈黙の後ポツリと一言を発する。


「…………いえ、知ってました、いや面倒事請負人と言う言葉は今初めて知ったのですがその他イルカさんがどんな仕事をしているのかは、友人から教えていただきました」


(ほう、友人からと……)

イルカは眉をひそめる。

何故かと言うとイルカは基本的には対外的に言えないような仕事をすることが多い。

イルカ自身言ってるが危険な橋を渡ることもある当の依頼人に至っては人に言えないからこそこの事務所に持ってくるのだ。


前に一度迷い猫の捜索をしたことがある、その猫の飼い主は相当焦っていて目の焦点が合わず汗もダラダラと欠いていた、そこで怪しいとは薄々思っていたが構わず捜索。

結局3時間後、猫は見つかり依頼料を貰いその日は終わった、がその5日後依頼人が捕まったことが報道で明らかになった。


その理由は猫の腹の中に薬を詰めて売買のカモフラージュに使っていたようだ。

この報道がでたときイルカは胸糞が悪くなったが後々冷静になり、もらった依頼料は全て動物愛護団体に寄付をした過去がある。


この例に関しては依頼人が犯罪者であるがここにくる人間は大体、脛に傷のある者が多い。


「わかりました、では改めて聞きます」


「あなたの依頼はなんですか?」


(なんの依頼だ?もうここまで引っ張って聞いてしまったからには犯罪以外だったら請け負ってやる。元カレへの復讐か?揉めたヤクザとの間の取り持ちか?何だって首を突っ込んでやる。)


「たっ……」


「た?」


「たっ……助けて下さい!!ストーカーに追われてるんです!!」


「ストーカーぁ?」



イルカはソファーから転げ落ちた。










頑張ります。

本日22時に2話目を投稿します。

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