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第七話【遺跡】

 二人は家をあとにし、森のなかを走り抜けていく。


 身体能力が高い少年にも負けず、イデアはものすごい速度で先行している。


 自然に囲まれて生活しているだけあり、運動能力が一般人のレベルではない。

 




 走り始めて数分が経過した頃。


 居住区の方角から、巨大な爆発音が聞こえてきた。

 

「──っ!?」


 イデアは一度立ち止まって後ろを向く。

 

「攻撃……されてる?」と少年。


「交戦しているのかも。村長が爆発系統のスキルを持ってるから……」


 交戦しているということは、やはり相手は悪意を持ってこの島に上陸したのだろう。


「……」


「とにかく私たちは言われた通り逃げないと」


 イデアは再び走り出した。

 

「……」


 少年は、後ろとイデアを交互に見て少しだけ悩みつつも、彼女のあとを追う。

 

  ◆ ◇ ◆

 

 やがて二人は遺跡に到着した。


 なかへ入るなり、彼女は息を整えていく。

 かなり疲れているようだ。


 対する少年の呼吸は乱れていない。

 

「はぁ……はぁ……。ここまでくれば、すぐには見つからないと思うけど、時間の問題だと思う」


 少年は無言で頷いた。


「でも大丈夫だよ。きっと島のみんなが追い返してくれるから。……みんなを信じよう」


「……うん」


 イデアは壁にもたれかかるようにして座った。


 対する少年は落ち着かないらしく、うろちょろしている。




 そのまま五分が経過し、

 

「……ん?」


 少年が部屋の角でふと歩みを止め、間抜けな声を上げた。

 

「どうしたの?」とイデア。


 彼は振り返り、

 

「この床の角に小さく【1】って彫られているんだけど」


「えっ……」


 ある程度体力が回復していた彼女は、立ち上がって少年の元へと向かう。


 それから彼が指さしている場所を見ると、確かにただの傷跡ではなく【1】という数字が表示されていた。

 

 床が汚れていたり文字が小さいため、ここに数字があるとあらかじめ教えられていない限り見つけることは不可能だろう。


「……まさか、他の角にもあるのかな?」


 イデアが首を傾げて言った。


「ちょっと見てみよう」


「私はあっちを探してみるね」


 二人はそれぞれ別の壁沿いを歩いていく。


「あった! こっちは【3】だ」


 先にたどり着いた少年が彼女のほうを向いて言った。

 続くようにしてイデアも、


「私のほうは【4】みたい」


「ということは……」


 彼は走ってもうひとつの角へと移動。


 床に視線を落として、納得したように頷く。

 

「やっぱり【2】があった」


「なんの数字だろうね?」


 彼の元へと近づきながら、イデアが尋ねた。

 

「さぁ? ずっと島に住んでいるイデアに心当たりは?」


「う〜ん、わからな……あっ! 地下への隠し扉?」

 

「……なるほど。この数字が鍵になっている可能性があるってことか」


「けど、数字がわかったからと言って、解けるわけじゃないよね? そもそも関係ないかもしれないし」


「うん。見た感じスイッチのようなものはなかった」


「やっぱりおばあちゃんたちに聞かないとわからないかも」


「でも教えてくれないんだよね?」


「うん。無理だと思う」


「そっか」


 その後、再び沈黙が流れる。



 気を紛らわそうとはしているものの、二人とも島のみんなが心配で仕方ないのだ。



 村長は若い者を逃がしているといったが、他のみんなは今どこにいるのだろうか。


 本当に敵を追い返すことはできているのだろうか。

 


 そんな疑問が頭に浮かんでくる。




 それから一分後。


 とうとう我慢できなくなったらしく、少年は入り口のほうに向かって歩き出した。

 

「ちょっと、どこに行くの?」


「やっぱりみんなの様子を見てくる」


「だめだよ。村長やおばあちゃんの言う通りにしないと」


「大丈夫。確認したらすぐに帰ってくるから」


「待って──」


 彼はイデアの返答を聞かないまま遺跡をあとにした。

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