表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/42

第三十三話【スカイダイビング】

 クレセント大陸をあとにして三時間後。

 

 アビスとアニマは無言で眠そうにしている。

 

 もちろんパイロットは起きているが、もう一人の教師はすでに眠っていた。

 

 本来であればアニマも寝ていいはずなのだが、アビスを無事に連れて帰るという使命感のもと、無理やり目を開いていた。

 

 しかし睡魔には抗えないらしく、先ほどからウトウトしている。

 

 それはアビスも同じで、睡魔に耐えつつ、じっと逃げるタイミングを見計らっていた。

 

 彼は海に飛び込むつもりらしい。

 

 パラシュートを装着すればアニマに疑われてしまうため、もちろん生身だ。

 

 普通の人間であれば着地の衝撃で死ぬだろうが、アビスは魔法に自信があった。

 

 ゆえに生き残れる可能性があると考えているのだろう。

 

「アビス……明日も朝から授業があるんだから、なるべく寝とけよ」とアニマ。

 

「あ、うん。まだ眠くないから、眠たくなったら寝るよ」

 

「そうか」

 

 

 

 

 それから一時間が経過した頃。

 

 ウトウトしていたアニマがとうとう眠りに落ちた。

 

 もう一人の教師も寝ている。

 

 今がチャンスだ! と思い、アビスは音を立てないようにゆっくりと立ち上がった。

 

 忍び足で扉へと近づき、ドアノブに手をかけたその瞬間。

 

「……アビス?」


 後ろから声が聞こえた。

 

 ビクンッと身体を震わせつつも後ろを振り向くと、

 


「お前は……本当はフェイトよりも強いんらって……」



 目を閉じたままそんなことをつぶやくアニマ。

 

 寝言だったようだ。

 

 アビスは「ふぅ……」とため息を吐きつつもすぐに気を取り直し、扉を開けるのと同時に飛び降りた。

 


 一気にヘリコプターの内部に強風が押し寄せる。

 


「「なんだ!?」」


 アニマともう一人の教師が急いで起き上がり、

 

「おい、扉を閉めろ!」


 パイロットが後ろを振り返った。

 

 そして全員がアビスの姿がないことに気づく。

 

 すぐに外を見下ろすアニマだが、暗くて視界が悪いせいで見つけることができない。

 

「あいつ、まさか……」

 

  ◆ ◇ ◆

 

 飛び降りたアビスは、真っ暗な空を飛んでいた。

 

 実際には落ちているだけだが、まるで飛行しているかのような浮遊感をおぼえる。

 

 彼は強風を顔面に浴びつつも、目を細めてしっかりと下を見つめる。

 


 星空に照らされた不気味で恐怖心を煽るような黒い海。

 

 

 アビスはそんな海に向かって落下していく。




【過去編】─ 終 ─

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これで完結なんて嫌だ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ