第二十八話【秘密】
アビス、フェイト、シグマの三人は扉のすぐそばに近づいていく。
「さすがにこれは開けないほうがいいだろ。誰かいるだろうし」
アビスの言葉に二人は頷いた。
「どうする、帰るか?」とシグマ。
「けど……アリアのことが気になるな」
そう言ってフェイトは扉に耳を近づける。
それを真似するように二人も近づいたその時、
『これを……歌声が更に……される。………………、さ、目を閉じて』
なかからそんな声が聞こえてきた。
「歌声? 何してんだ?」
シグマがつぶやいた十秒後、
『きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!』
普段の物静かな彼女からは想像もできないような叫び声に、三人はビクンッと身体を震わせて後ずさる。
「今の声……アリア?」とアビス。
『アリア……頑張ったね。これで終わりだよ』
「おい、聞こえたか?」
フェイトの問いかけに、アビスが頷く。
「ああ。何かはわからないけど、終わったって」
「ということは……こっちに戻ってくるんじゃないか?」
「そうだ! フェイト、シグマ。急いで帰るぞ」
「「おう」」
三人は立ち入り禁止の地下通路をあとにし、それぞれ寮の個室に戻った。
アビスとシグマはもちろん、普段はお調子者のフェイトですら、布団のなかで震えてすぐに眠ることができなかった。
◆ ◇ ◆
その翌日。
教室にはちゃんとアリアの姿があった。
パッと見変わった様子はない。
アビスたち三人は教室の後ろに集まって小声で会話を始める。
「なぁ、結局昨日の……なんだったんだろうな?」とフェイト。
「さぁ? 見た感じ普通だけど」
「何もなかった……のかな?」
「でもあの叫び声は普通じゃなかったって」
「本人に直接聞いてみるか?」
「やめとけ。そこから俺たちが地下に立ち入ったことがバレるかもしれねぇだろ」
「……だな」
「なんにせよ、この施設にはやはり何かが秘密がある……」
「ああ」
◆ ◇ ◆
それから二週間後。
アリアがこの施設からいなくなった。
担任であるアニマは外の学校へ転校すると言っていたが、四年生のみんなは信じなかった。
最近のアリアの様子がどこかおかしいことに、ノエルとカルマも気づいていたのだ。
もちろんアニマの前では全員普段通りにしていたが。




