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第二十五話【決勝戦】

 続いて三年生と四年生のチームが向かい合う。



「これより、三年生チームVS四年生チームの試合を始める。先ほども言ったがお互いに死にかかわるような攻撃は禁止で、先に相手チームを全滅させるか降参させたほうが勝ちだ。両者はスタート位置に」


 そう言われて白線の前に立った四年生チームは、黒髪オールバックのボルグの一人だった。

 

 茶髪イケメンとピンク髪の女子は、後ろでのんびりと座っている。

 

 余裕だと判断しての行動だろう。


 三年生チームはあまりいい顔をしていない。

 

「四年生チーム……それでいいのか?」と教師。


 ボルグは「もちろん」と答えて口端を上げる。


「そうか……。では、両者見合って…………始め!!」



 その瞬間、三年生全員が地面に叩きつけられた。

 

 

【魔眼】の能力で、相手の周囲の重力を操作したようだ。


 範囲の広さが技術の高さを表している。


 明らかに子どもの技量じゃない。

 

「……先生、もう終わりじゃないんですかー?」と微笑みながら茶髪のイケメン。


「あ、ああそうだな。勝者、四年生!!」


 あまりに圧倒的過ぎたせいか、先ほどのような歓声が聞こえない。

 

 全員唖然としており、唯一四年生の担任は当然といった様子で頷いている。

 

「よし、三年生と一年生は交代するように!」


 教師の指示に従って場所の移動を行った。

 

 

 

 

「これだけ早く予選が終わったのは初めてじゃないか? っと、これより、一年生チームVS四年生チームの試合を始めるぞ。両者はスタート位置に」


「ねぇ、ボルグ。俺たちも手伝おうか?」


「誰に言っている。一人で充分に決まってんだろ。というか邪魔したら殺すぞ」


「ははっ、りょーかい。というわけで待っていようか」と横の女子に言う茶髪イケメン。


「私は楽でいいけどねぇ~」


「では両者見合って…………始め!!」


 スタートと同時にボルグの両目に紋章が浮かび上がり、一年生に重力が襲い掛かる。

 

 だが、ノエルとアビスは身体から魔力を放出して打ち消し、フェイトはボルグに近づくことによってギリギリで回避した。

 

 そのまま彼はボルグに斬りかかる。

 

 相手が強者だと判断しているからか、剣筋に容赦の色が見られない。

 

 真っすぐ首元を狙っている。

 

「甘いな」


 ボルグがつぶやいた直後、フェイトはアビスたちの元へと吹き飛ばされた。

 

 それをノエルが風魔法によって受け止める。

 

「フェイト、次は一緒に」とアビス。


「おう!」


 二人は走り出し、左右からボルグに襲い掛かった。

 正面からノエルも攻撃魔法を連射していく。


「一年生ごときが調子に乗ってんじゃねぇ」


 ボルグは魔眼で攻撃魔法を全て打ち消しながら、体術でアビスとフェイトを二人同時に相手する。


 表情からして余裕があるらしい。

 

「噂の剣聖とやらはその程度か? そんなのじゃ宝の持ち腐れだな」


「うるさい! オレは一生懸命努力しているんだ」


「それでか?」


「年齢差があるんだから、力に差があるのは当然──」


「──はんっ、年齢のせいにしている時点でお前はゴミだ。しょうもねぇ」


 フェイトの声を遮ってボルグが言い捨てた。

 

「なっ!?」


「スキルを使えなくても俺様に突っかかってくるこのガキのほうがよっぽど根性あるぜ」


「オレだって、まだ本気じゃねぇ!!」


 更に剣速を上げるフェイト。

 

 同時にアビスは魔法での攻撃も開始する。

 

「ちょこまかと鬱陶しい」


 ボルグが殴りかかったタイミングで、アビスの前に魔力の壁が創り出され、拳を受け止めた。

 

 ノエルの補助だ。

 

「年下のくせにムカつくやつらだな」


 そう愚痴を吐きつつも、ほんの少しだけ嬉しそうな表情のボルグ。

 

 楽しくなってきたようだ。

 

 その後、一年生三人とボルグによる戦いは予想以上に長期戦となった。

 

 勝負の決め手となったのは、ノエルの魔力切れだ。

 

 それによって一気に防御が薄くなり、アビスとフェイトが【魔眼】による影響を受け始める。

 

 それから一分と持たず、一年生は全員戦闘不能となった。

 

 そんな感じで対抗試合は四年生の優勝で幕を下ろしたのだった。






 それから四年生が卒業するまでの一年間、アビスたちは放課後に何度もボルグに挑戦したのだが、結局一度として勝てなかった。

 

 そして施設を出て行くタイミングで、一年生に向けて「昔食堂でも言ったように、俺は弱者に謝る口は持ち合わせてねぇ。もし俺より強くなったなら、その時は土下座でもなんでもしてやるよ」と宣言したのだった。

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