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第二十四話【対抗試合】

 次の日から一年生は今まで以上に特訓に励んだ。


 上級生に反抗しなかったカルマとノエルも心のなかではムカついていたようで、全員でより一層強くなるために放課後も外で模擬戦を行ったり、スキルの訓練をしている。

 

 ちなみに一番戦闘能力が高いのはフェイト。

 スキルも身体能力も一年生のなかではトップクラスで、正直四年生にも引けを取らない強さを持っている。


 その次にノエル、アビス、シグマ、カルマ、アリアの順番だ。

 

 ノエルは【賢者】のスキルを持っていることもあり、体力と魔力の両方を駆使して多彩な魔法の使用を得意としている。

 

 次にアビス。

 一切スキルを使えない彼だが、魔法のセンスが高いためそれなりに戦えるのだ。

 

 アビスよりも弱いと判断されているシグマは空間魔法が上手に使えず、また魔法もほとんど使えないため体術のみでの戦い方となっている。


 カルマも同じで、未来予知を使っている間は強いのだがあまり長くはもたないことや、そもそもの身体能力が高くないことがあり、優れているとは言い難い。

 

 そして一番弱いのはアリア。

【歌姫】のスキルによって仲間をサポートするのは得意だが、一人だととにかく弱い。


 クラス対抗の試合は一グループ三人で編成するルールとなっており、このままいけばフェイト、ノエル、アビスの三人が出場することになるだろう。

 

 それでも全員が自主的に特訓しているのは、それぞれが四年生に一泡吹かせたいからだ。

 

 お互いがお互いを高めあっていく。



 とても理想的な関係だった。

 

 

 しかし、強くなり続けているのは一年生だけじゃない。

 

 もちろん倒すべき相手である四年生も常に特訓しているのだ。

 

 最近は放課後の体育室をずっと占拠しており、その本気さがうかがえる。


  ◆ ◇ ◆

 

 そして対抗試合当日。

 

 第一回戦は、

 

 【一年生VS二年生】


 【三年生VS四年生】

 

 で行われる。

 

 そこで勝った学年同士で決勝戦をすることになるのだ。

 

 元々対抗試合とは、自分よりも上の存在がいるということを上級生と戦うことによって実感し、更に強くなろうという気持ちにさせるためのものだ。

 

 つまり普通であれば一年生と四年生が戦うことはない。

 

 だが今年は違った。

 

 同じ年にランクSの【剣聖】と【賢者】が揃っており、始めて一年生が上級生を倒すかもしれないと教師たちの間では囁かれていたりする。

 

 

 体育室にて。

 

「これより、一年生チームVS二年生チームの試合を始める。お互いに死にかかわるような攻撃は禁止。先に相手チームを全滅させるか降参させたほうが勝ちだ。両者はスタート位置に」


 アビスは緊張した様子で白線の前に並ぶ。

 

 左右にフェイトとノエル。

 

 体育館の入り口付近では生徒全員と数名の教師がいて、じっと両チームの様子を見学している。

 

「ふぅ……」

 

 アビスは一度深呼吸をし、正面にいる二年生チームを見つめる。

 

 距離は三十メートルほど。

 

 三人とも男子で、全員茶髪だ。

 特に特徴のない見た目をしている。

 

「アビス、ノエル。あんなモブキャラ、さっさと倒そうぜ」


「ええ、そうね」とノエル。


 アビスも無言で頷いた。

 

「では、両者見合って…………始め!!」


 そんな教師の言葉と同時にフェイトが勢いよく走り出す。

 

 二年生たちは一瞬慌てつつもすぐに魔法を放つが、ノエルによってフェイトの周りに展開された風と水のバリアにかき消されていく。

 

「なっ!?」


「俺の魔法が……」


 動揺した時にはもう遅い。

 

 二人の目の前には水色のオーラを纏ったフェイトがいた。

 

「おらぁぁぁ!!」

 

 木刀を薙ぎ払って一人を吹き飛ばし、もう一人を足払いで転ばせたあとで胴体を叩いた。


 二人とも身体を抑えて動かなくなる。

 

 一方もう一人の相手は、いつの間にかノエルの前にいた。

 

 闇の魔力を纏った木刀を彼女へと振り下ろす。


 しかしそれはノエルの魔力のバリアによって防がれ、同時に横から放たれたアビスの水球が相手の顔面に直撃した。

 

 脳が揺れたらしく、彼は抵抗することなく床へと倒れていく。

 

「そこまで!! 二年生全員が戦闘不能により、勝者一年生チーム!」


「すっげぇ、一年が勝ったぞ」


「やるじゃん」


「今年の一年は強いな。特に突っ込んでいった青髪のあいつ」


 外野からそんな声が聞こえてくる。

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