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第二十二話【いじめ】

 彼らの姿が見えなくなって数秒後、

 

「おいアビス。大丈夫か?」


「だから言っただろ」


 シグマとフェイトが駆け寄ってきた。

 少し遅れてノエルもやってくる。

 

「あんた、無茶するわね。平気なの?」


「…………うん」


 アビスは表情を歪ませつつも、ゆっくりと立ち上がった。


 周囲を見渡すと、生徒たちから集められていた視線が徐々に元通りになっていく。

 

「にしてもお前、さっき何されてたんだ?」とフェイト。


「いや、わからない」


「あんたたち、まさか知らないの? 四年生のボルグ=ハーディは【魔眼】のスキル持ちで、いろいろと反則級の能力を持っているわ。さっきアビスに使っていたのは、重力操作と金縛り、あとは空気自体を操作して首を絞めたんだと思う」


「なんだそれ。魔眼ってそんなにすげぇのか?」


 フェイトの質問に、ノエルは首を左右に振って即答。

 

「あんたとあたしの【剣聖】【賢者】よりもランクは下。つまり使い手の問題ね」


「……マジかよ」


「それよりもアリア。アビスに言うことがあるんじゃないの?」


 そんなノエルの言葉に、

 

「あ……えっと、ごめんなさい! わ、わたしのせいで」


「いや、いいよ。俺がムカついて勝手にやったことだし」と首をさすりながらアビス。


「…………本当に、ごめんなさい」


 アリアが頭を下げたあと、少しだけ沈黙が続いた。


 先ほどの事件のせいか、食堂全体が静かで何も聞こえない。


 一番最初に口を開いたのはフェイト。


「アビスってさ、意外とすげぇんだな」


「えっ?」


「オレもムカついてたけど、相手が強いとわかっているせいで動けなかった。……こんなすごいスキルを持っているのに、なんの意味もねぇ。なのにスキルを使えないアビスは勇敢に立ち向かってさ……」


「おれもだ」とシグマ。


「それを言うならあたしも動けなかったわよ。あいつの力を知っているから余計に、ね」


 それからノエルは机の上に常備されている布巾で床を拭きながら、

 

「なんにせよ、今後ボルグが何かを仕掛けてこないといいけど」


「安心しろ。今度変な真似してきやがったら……オ、オレも一緒に戦ってやるよ。ははっ」と引きつった笑みで言うフェイト。


 とてもではないが、頼りになりそうな気がしなかった。


  ◆ ◇ ◆

 

 翌日。

 

 食堂でアビスがフェイトたちと昼飯を食べていると、わざとボルグがぶつかってきた。

 

 幸い手に持っていたパンが床に落ちるだけで済んだため、特に何かを言い返すことなく流した。

 

  ◆ ◇ ◆

 

 更に翌日。


 アビスが鳥の手羽先を食べていた際、急に胸を抑えて苦しみ始めた。

 

 心臓が締めつけられるような痛みに思わず床に倒れるアビスだったが、証拠がないため犯人をボルグだと決めつけることができない。

 

 教師たちが食べ終えていなくなったタイミングを狙ったり、身体を傷つけたりしてこないのは、証拠を残さないためだろう。

 

 戦闘能力が高いだけでなく、頭も回るようだ。

 

 ちなみに昼飯を食べている他の生徒は、ボルグが怖いらしく誰もアビスを助けようとしない。

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