第十七話【昼食】
四時間目が終わった後、アビスたちは昼食を食べるために一階の食堂へと移動した。
長い長方形の机がいくつも並んでおり、もうすでに上級生や他の先生たちは食事を取っている。
遅れたのは体操服から着替えるのに時間を使ったからだ。
どうやらどこで食べてもいいらしく、みんなそれぞれ好きなグループになっている。
ニ、三人ほど一人で食べている者もいるが、基本的には三、四人グループで食べているようだ。
アビスは先生の指示通りお皿に好きな料理を乗せ、机に移動。
特に相談をすることもなく暗黙の了解のような感じで、男女分かれて座った。
アビスの横に青髪のフェイト。
正面に金髪ツンツンヘアーのシグマと、緑髪眼鏡のカルマ。
カルマはサンドイッチを口に含むなり、さっそく本を読み始めた。
どうやら同級生と話す気がないらしい。
シグマとフェイトは一心不乱に肉へとかぶりつき、競い合うように食べ進めていく。
そんな二人の様子を呆れたように見つめながらも、アビスはまずパンを食べ始めた。
「「おかわり」」
一分と経たないうちに二人は立ち上がり、再び料理を取りに行く。
それからもシグマとフェイトの爆食いはしばらく続き、先にシグマがダウンした。
フェイトはまだ食べられるらしく、お皿を持って歩き出す。
とそこで、
「はぁ……。あいつがくるまではおれよりも食べられるやつなんて存在しないと思っていたんだけどな……」
シグマがしんどそうな表情でつぶやいた。
アビスは話しかけるいいきっかけを見つけたとばかりに口を開き、
「でも、シグマくんもよく食べるね」
「ん? ああ、だろ? 大食いだけは自信があるからな。けど、あいつがやってきたせいで一年生の大食い王の座を譲ることになっちまった。そのうえスキルも超一流って、完璧超人かよ」
「うん。フェイトくんのスキル、すごかった……」
「他にも勉強ではカルマに勝てないし、魔法ではノエルに及ばない……。はぁ、おれは何が得意なんだろうなぁ」
「は、はは……」
自嘲気味につぶやくシグマにどう返したらいいかわからず、笑って誤魔化すアビス。
「そういえばお前、アビスって言ったよな?」
「うん」
「同じ一年生だし、おれのことはこれからシグマって呼び捨てでいいから。よろしくな」
「わかったシグマ。よろしく」
そう言ったあと、しんどそうにお腹を触っている彼に続ける。
「で、シグマはいつ頃拾われてここにきたの?」
「えっと……二ヶ月くらい前かな?」
「へぇ」
「一番古いのは半年前に入ったノエルで、そのあとに順番でカルマ、アリア、おれ、フェイト、そしてアビスだ」
「そっか」
「何か聞きたいことがあったら答えるけど、質問とかある?」
「う~ん。今のところないかな……。また疑問に思ったらお願いするよ」
「おう」
◆ ◇ ◆
昼食後、五時間目と六時間目の授業を行っていくが、フェイトはお腹いっぱいでしんどいのだろう。
ずっと机に伏せて眠っていた。
先生のアニマが頭を叩いたりしていたのだが、十回くらいやっても起きなかったため諦めたようだ。
それから授業内容についてだが、転入してきたアビスに合わせているらしく、簡単なところから復習している。
それでもアニマの教え方が雑なせいで、結局自分で教科書を見ながら勉強する羽目になったのだが。
そのことをわかっているカルマは最初からずっと自主勉をしていた。




