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第十四話【授業】

「……なぁなぁ。アビスはどんなスキルを持っているんだ? ここにきたってことは、強い能力を持っているんだろ?」とフェイト。


「えっと……ごめん。わからない」


「あー、まだ先生に教えてもらってないのか?」


「うん」


 アニマはチョークを置いて黒板を指さしながら、

 

「じゃあこの問題が解けるやつは手を挙げ──」


「──なぁ先生! アビスのスキルってどんな能力なんだ?」


 フェイトが声を遮って質問した。

 

「お前、俺の授業の邪魔すんじゃねぇ!」


「別に仲間になるんだし教えてくれてもいいだろ? 本人もまだ知らないらしいし」


「そりゃー、教えてないからな」


「なら今教えてくれ。気になって仕方ねぇよ」


「あ、私も興味があります!」と黒髪ショートボブの女子。

「チッ、まあ待て。今日の体育の授業でまとめて説明してやるから。それよりもこの引き算ができたやつはいるか?」


「二十です」


 眼鏡をかけた緑髪の男子が、手を挙げながら答えた。

 

「おぉ、正解だ。さすがクラス一の秀才は計算が早いな」


「そういえばオレ……アビスとどこかで会ったような気がするんだよなぁ……。気のせいかな?」とフェイト。


 実はこの二人、スキルの授与式が行われた神殿で出会っているのだが、お互いにここへ運ばれるタイミングで記憶を消されているため、おぼえているはずがなかった。

 

 しかしフェイトはなんとなく懐かしさのようなものを感じたようだ。

 

 ちなみに彼は神殿で【剣聖】のスキルを授かった当日に連れ去られているため、あの大破壊(カタストロフィー)に巻き込まれなかった。

 

 逆にアビスはピンときていないらしく首を傾げて、

 

「う~ん。気のせいだと思うけど」


「だよなぁ」


「お前ら二人、うるせぇぞ! さっさと次の問題をノートに書いて解け」とアニマ。


「あ、すみません」


「悪い悪い」


 二人は急いでノートに向き合い、黒板にチョークで書かれてある問題を鉛筆で書き写していく。

 

 辺境の村で生まれたために学校へ通ったことがなかったアビスだが、今まで両親や村人に農作物を売る際の計算方法などを教わっていたからだろう。

 

 わりとサクサク解くことができていた。


 だがフェイトはわからないようで、

 

「なぁ、オレのスキルってどんなのだと思う?」


「ここにいる子はみんなすごい能力を持っているんだよね?」


「そうだぞ」


「じゃあ…………【風魔法】とか?」


 すごい能力を探してなぜか真っ先に思いついたスキル名を口にした。

 

「ははっ、そんなしょぼいのじゃないって。俺のスキルは【剣聖】なんだぜ? すげぇだろ!!」


「えっ……それ、聞いたことある。めちゃくちゃすごいやつなんだよね?」


「もちろんだ。なんせAランクのスキルだからな!」


「お前らそろそろ殺すぞ!?」


 ドスの利いたアニマの声が聞こえてきた瞬間、二人は慌ててノートに視線を戻す。

 

 それから数秒後、目を合わせて嬉しそうに微笑んだ。

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